占冠村 赤岩青巌峡へのトイレ設置報告
~ヒヤリング紹介~
~第2回山のトイレフォーラム(2001.2.3)から~

 北海道勇払郡占冠村の村立自然公園内にある「赤岩青巌峡」は、北海道を代表するロッククライミングエリアである。この赤岩青巌峡にて、関係者の要望努力と地元・占冠村の先進的な対応により、トイレ設置が実現したとの話しを聞いた。
 この問題を北海道勤労者山岳連盟の登山研究集会の分科会で発表された「グループ・ド・ロシェ」田中昭人さんの報告文を基に、その概要内容を報告する。

1. 1994年当時の状況
 ロッククライマーのメッカとして知られるようになっていた赤岩青巌峡の'94年当時は、心ない人による様々な問題点も顕在化していた時期であった。それは「ルート開拓の為に木の切り倒し」「岩への支点残置」「ゴミの放置」「トイレが有っても野となれ」といった具合で、村の方々から不審者扱いで見られ、村から見れば百害あって一利無しの怪しげな人達のようを呈していた。

2. 1994年からの活動他
 心ある人達が、これではいけない!と考え改善の行動に移していった。
 「毎年6月第一週に清掃活動を実施」「村役場に出向いて趣旨説明実行」「岩の支点整備による美観保護を行った」「怪しげな一団からの脱皮をはかり」「トイレを催す時は村のトイレを使わせて頂くようにする」等の努力をすることによって、徐々に村からも一応の評価を得ることが出来るようになった。

3. 2000年6月占冠村へ「赤岩青巌峡へトイレ設置」の請願を提出
 道央地区勤労者山岳連盟より占冠村・原村長 宛に「赤岩青巌峡トイレ設置のお願い」の書類(5月25日付)を提出した。 趣旨は、赤岩青巌峡がロッククランミングにおいて日本有数の高難度ルートを持ち全国より数多くの登山者を迎入れていること。近年、登山者の入山増加や鵡川でのカヌー、ラフティング愛好者の増加、山菜取りの方々等々により排泄等の問題が顕著になってきた状況である旨説明した。そのうえで、村立公園でもあり環境問題からも早急なトイレ設置をお願いするものであった。

4. 占冠村役場の暖かい対応(先進的な自治体の対応例)
 富良野・佐藤司法書士、村役場・青木主事のバックアップのもと、中村教育長、堤産業課長の後押しを受け、なにより原淳二村長の御理解とリーダーシップにより試行的にトイレ設置が次のような条件にて実現したのです。北海道フリークライミングネットワークの協力もありました。
  設置場所;旧リクリエーションの森。
    ・トイレは試行的に2000年9月~10月の2ヶ月間設置する。
    ・クライマー専用としてクライマーが自主的に清掃管理する(他者の利用の問題は内包しているが)
    ・ 結果を踏まえて来年より本格的実施に移る。
トイレ設置実現により、北海道道央地区勤労者山岳連盟・尾谷会長名にて御礼状を村役場に持参しました。トイレの外観等(素敵です)は、ロシェのホームページを参照下さい。
 

5. 赤岩青巌峡のトイレに表示されている注意内容 紹介


赤岩青巌峡にて岩登りをされます皆様へ

 このトイレは占冠村のご好意により試行的に設置されたトイレですので、ご自分の汚物の清掃は勿論ですが、気が付かれましたら奉仕の精神にて清掃の方を何卒お願い致します。(清掃用具備えつけております)
 それと、このトイレは循環式トイレに付き技術上の問題でティッシュペーパーは勿論のこと、トイレットペーパーの便槽内への投棄もなるべくご遠慮頂ければ幸いです。お手数ですが、ペーパー類は各自にてお持ち帰り下さいます様、宜しくお願いします。
 何卒皆様方のご協力を頂きまして占冠村のご好意によりますこのトイレを、きれいに使用されまして末永くこの地にてクライミングできますことを切に願う次第です。

 このように、赤岩青巌峡は、何とか今現在は、他のエリア(本州での他の岩場)よりは幸せである。
 本州の他の岩場では、環境面の対応の遅れにより登攀禁止となっている岩場もある。クライマーも山と向き合い自然を破壊することなく、地道な活動を続けていく必要があると考える。

6. 占冠村の意向

 占冠村では、「自然体感 占冠」のキャッチフレーズのもと、自然に恵まれた素晴らしい環境を持つ村を、多くの皆さんに知って頂き 、利用してもらえる事を望んでいるとのこと。その一環として環境面の充実を図っている。(自主管理要請)  また、占冠村では訪れた方々が、飲料や食料等少しでも村からの調達を願い、村の購買力、経済へ寄与して頂ければ有りがたいと考えているとの事です。

《以上 H13年1月28日ヒアリング作成  文責;山のトイレを考える会・会員:小枝正人》