2011夕張岳ヒュッテトイレの現状
~手造り高床式トイレを2シーズン運用して~


                      報告:ユウパリコザクラの会 河村 健 (2012年2月17日作成)


              
1.概要

 築40数年の夕張岳ヒュッテは、国道452号(*1)から白銀橋で夕張川を渡り約14Km先で標高650mの位置にあります。ヒュッテの手前約6~700m地点が駐車場でその先は1車線の急坂とカーブの連続でバキューム車は上がって行けません。
 当会はこのヒュッテの管理を2008(平成20)年からボランティアで受託しました。国道から約5Km地点の林道ゲートが6月下旬に開放されると、会員が交代でヒュッテに常駐して、花の名山を訪れる宿泊者をお迎えします。
 40年余りを経た貯留式便層(約500L2基)は満タン状態だったので、新たなトイレを計画し、大便をバクテリア処理するタンクの交換ができる高床式便所棟(固液分離型便座1個、男子小便器1個、+発電機室)を翌年9月に建てました。
 他に駐車場入口左股橋手前に工事現場等の仮設型簡易トイレが従来から設置されています。冷や水コースを往復する日帰り登山者はヒュッテ前を通過することが無いので、もっぱらこのトイレを使うことになります。
 (*1)シューパロダム建設に関連して付け替えられた国道(昨年12月から供用)の富士見橋から入る。

築40数年の夕張岳ヒュッテ
2009年に建てた高床式トイレ(手造り)


2.便層・便器等とその現状

形式・方式
現  状
旧貯留式便槽
(コンクリート製)
(約500L 2基)

排泄物は2基とも床近くまで溜まっていたので2009(平成21)年に使用を停止した。尿水分は蒸発と底部から土中へ自然浸透して、糞は表面が乾燥したパン生地のような柔らかい固形物だった。
昨年諸々の物が混在した貯留物を糞まみれになって排出し、左股橋手前の仮保管槽へ会員が移送した。
この夕張市が管理していた時代の排泄物は、後日バキューム車で撤収した。
空になった便層を掘り出したら2基とも底が無かった。その後会員がハンマーを振るって破壊し、産廃として下界へ搬出した。

固液分離型便器
(大便=バクテリア処理)

会員がベニヤ板と鉄板で製作して2009年秋から使用。
便器直下が500Lローリータンク蓋開口部で、便が落下して貯留。ちり紙は別の箱に入れてもらい後日焼却する。排便直後の大便の丸見え対策とバクテリアの活動促進のため、使用者は排便後にバクテリア(*2)を混ぜてある木屑を摘んで便層へ落とす。翌日朝にはバナナ的な形状は殆ど無くなり、タンク内に黄土色の寒天か豆腐が広がっている様な状態になっている。 悪臭など殆ど無いに等しい。
高価なバクテリア製剤を使い切ってからは、バクテリアの活性と脱臭効果の実績があるという米の籾殻に切り替えたが効果は同じようです。
タンクが一杯になったら予備のタンクと取替える。一杯になって引出したタンク内の糞は、更にバクテリアの分解が進むと最終的には綺麗に無くなってしまう予定です。実質2シーズンを経過(*3)して黄土色ジェル状の量はタンク深の1/4分以下ほどなので交換の時期はまだ先のこととなる。

固液分離型便器(小便)
及び男子小便器

便器の下部から塩ビ配管で200Lドラム缶へ貯留。一杯になったら20L缶に小分けして左股橋地点保管槽へ移送し仮保管する。2シーズンで約20缶(400L)を移送した。

左股橋 簡易トイレ
工事現場等仮設型

ヒュッテ手前約850m地点の左股橋手前に、工事現場等仮設型の汲み取り式簡易トイレが2基設置されている(市設置)。
1基は便槽にヒビが入ったので昨年廃止撤収した。これも貯留物を会員が飛沫を浴びながら仮保管槽へ移した。

左股橋仮保管槽
鉄製約600L箱 1基及びし尿貯留用500L槽 1基満タンになればバキューム車を依頼する。

(*2)バクテリア製剤 ダイナクリーンSSA (米国エンバイロンメンタル ダイナミックス社) 5ポンド(約2.7kg)2万円
(*3)登山宿泊者の他行事関係者や管理等で年間400人程がトイレを利用しています。

小便器(左)と固液分離便器
固液分離便器とトイレ紙回収箱(右)

固液分離便器を上から写す
掘り出した旧便槽(コンクリート製)

左股橋仮設トイレ(左)とバキューム運搬のため仮保管槽へ排泄物を移し替える

3.今後の課題・計画

 固液分離型便器の高さ45cmは女性には高いようなので40cm弱に改修する。
 大便用便器が1個なので最盛期の朝には行列になることがあるから、その対策を検討しなければならない。

4.その他(ヒュッテ建替計画の現状)

 一人1口千円を1万人というヒュッテ建替キャンペーンは2011年12月末現在約370万円。昨年7月に地元業者で基礎工事を竣工しました。
 次に土台は、廃校した小学校の解体材を貰い受けて会員皆で運搬し、加工して据付けを開始したのですが、12号台風余波の大雨でヒュッテ前の橋が流されたり、林道が崩壊したりで工事は中断しました。今年中に何とか土台、壁の施工をし、秋には屋根をかけたいと思っています。資金に目処がつけば一部を専門業者に請け負ってもらおうと考えています。
 資金難の中の工事ですが、皆様のご協力を仰ぎ、自然保護及び自然教育の拠点として、また登山者の生命を守る避難小屋として新しいヒュッテを完成させたいと思っています。

新夕張岳ヒュッテの基礎
会員による土台加工作業

会員による土台組立作業
こんなヒュッテができたらいいなあ