幌尻岳トイレ諸々奮戦記
(update:2001.9.11)

日高山脈最高峰「幌尻岳」(2052m)の幌尻山荘は平取山岳会やその他多くの有志のみなさんの努力により維持管理されています。トイレは山荘の中と屋外に簡易トイレ2基があり、清掃も行き届き、私たちが安心してトイレを利用することができます。下記はメールで投稿されたものですが、いろいろな山の問題点が凝縮され、私たちに重い課題を投げかけています。


(報告)日高山脈ファンクラブ会員 高橋 健

H13年8/11~14まで幌尻山荘に管理作業手伝いのため入山していましたので報告します。 まず同行した方を疑っている訳ではないのですが、山荘滞在中8/11~12にかけて、山荘で雨具(ノースフェイスの黄色ゴア)を紛失しました。寝る前に頭上に起き、起きたらなくなっていたもので。 必需品なので実は今日同一品を購入したのですが。心当たりある方はご一報願います。

8/11  特に山荘の手伝いはなく、Sさん・Kさんにお手伝いしていただき、山荘周辺の水質調査を行う。また登山者にアンケート調査に協力してくれるようお願いする。夕方、MさんとNさんも登ってくる。なお、山荘周辺の環境調査を北大大学院の学生さんが取り組みはじめましたので、その結果に期待しましょう!!

8/12 Sさん・Kさん・Mさん・Nさんは早朝頂上へ。私はというと、山荘を 管理している平取山岳会の会員の方と二人で山荘の裏に1m四方の穴を掘る。何の穴 かというと、山荘のトイレは地下浸透式(1m四方の木組)なのだが、処理能力を超 える供給のため、満杯寸前ということで、排泄物を埋立て処理する事になったのだ。 最初掘ろうとしたところからは、2年前に埋めた排泄物が出てきてビックリ。隣に穴 を掘る。便曹には地層ならぬ「便層」が出来あがっていた。一番下は水分が抜けきっ た信楽焼の粘土のような層、中間は水分を多く含んだ層、上部はやはり軽いからか テッシュが積み重なっている。「便層」には多くの解けない物質「生理用品・テッ シュなどの袋・そのたゴミ」が遺物のように混じりこみ、汲み上げの邪魔になった。 汲み上げは柄杓で行ったが、あまりの硬さにクワやトビなどでかき回しての作業と なった。ウンコの汲み取りは生涯初めての経験であった。「臭い!」さらに、アブに 刺されても手(もちろんゴム手をしている)がウンコまみれなので追い払う事も出来 ず刺されまくりなのは辛かった。
この処理方法がいいとは思わない。環境にいいはずはない。

山荘に行く手段は渡渉を繰り返す方法しかなく、ヘリコプターに荷揚げを頼めば1回 数百万はかかるという。受益者負担と言えば、山荘の使用料は1泊1,000円だが回収率 は3分の1にも満たない。さらにテント宿泊者は山荘のトイレや水を使うのに払わない人が多い。
また山荘が、森林管理署から平取町に売却され、さらにその借地料を平取町が森林管 理署に払い、実質的な管理を町が山岳会に委託している。山荘の管理も水道やトイレ の設置、小屋開きから小屋閉めまで山岳会の会員が担っている。

15年前まではお盆でも登ってくる人は1桁の日もあったという。それが10年ほど前か ら増え始め100名山ブームによって爆発的に増えたと言う。今回も8/11.12は山荘は満 杯。約50人、外のテントも含めれば60人が滞在し水を使いウンコをする(ウンコ は半分として30人)。15年前と山荘の設備は変わってないとすれば、便曹はオー バーユース(基準が話題になっていますが)なのでしょう。一山岳会に出来る事と言 えば、現地処理しかない。
でも他の処理法を考える必要があります。山荘は国定公園区域にあります。しかしな がら管理者である北海道や支庁は何の施策も考えも持っていません。以前日高支庁に 問い合わせたところ、道は大雪山で手一杯。日高山脈にトイレをつくる気はないとい われました。支庁がやっている事と言えば、「携帯トイレ」の呼びかけだけ。携帯ト イレを普及させるならば販売(個人的には無料配布はダメだと思う)、回収、処理ま でを一貫して取り組まなければ意味がない。

私としては、登山口,小屋に汲み取り式またはバイオトイレの設置を、その他では携 帯トイレの普及を目指すべきと思う。そのためには登山口への回収箱の設置、麓自治 体での処理が望ましい。日高山脈のように十勝・日高複数の自治体にまたがっている ところでは、一山岳会や一自治体が出来るものではない。国定公園はただ指定するだ けか。管理者である北海道は何をすべきなのか。
そんなことを快晴のなか汲み取りをしながら考えた。

8/13  先日下山中に転んで足をケガした高年の女性のサポートとして取水ダムまで 行く。渡渉中に流されて亡くなった人がいたが、私からすれば起こるべくして起きた 事故という感じだ。登山者の7割がたが「百名山」がらみ。わき目も振らず頂上へピ -クハンターだ。それはいいが、登山技術や体力、意識が明らかにない者が来てい る。この女性もヘリでおろすか協議した結果、サポートして降ろしたが、当の本人は 病院に行く気がない。どこの温泉に行こうか仲間と話している。まー麓まで降ろした から私にはもう関係ないのだが。何か変だ。
さらにどうやって入ったか判らないが、札幌のツアー会社と思われるワゴン車が取水 ダムまで入ってくる。また山荘まで戻る。

8/14  小屋開きのときに山荘の屋外にトイレを一棟建てたが、数が少ないと言う事 で、その隣に穴を掘りトイレをもう一棟建てる。このトイレは昨シーズンの雪で壊れていたものを今回垂木で応急処置をして何とか建てた。ついでにトイレ掃除もした。使い放しの状態。的をはずし てもそのまんま。たまに管理の山岳会員が登ってくるとはいえ、ほとんど無人の山荘。誰が掃除するんでしょう。汚い→使いたくない→その辺にしちゃえの悪循環。山荘の階段下にバケツとブラシが置いてあります。行かれる方はどうぞお使いくださ い。
水道も小屋開きのときに付け替えているが、そのときは管が足りず代用していたの で、事前に山岳会の会員が20mの水道管を荷揚げし、今回その配管も行った。 本来は15日までいる予定だったが小屋の作業が終わった言う事で山岳会の会員の下 山に合わせて下山した。
取水ダムの地点まで前日とは違う札幌のツアー会社2社のワゴン車2台が入っている のを確認する。私は今回、小屋の管理作業手伝いと言う事で山岳会の車に便乗させてもらったが、ツ アー会社や地元のタクシーがかなり頻繁にダムまでやってきているようである。入れ ないのは個人客だけ?これも変だ。

さらに今回、下山時に確認したのだが、ゲートの鍵が壊されていた。ゲートの奥に車 を入れないのは、林道脇に大きな崩落個所があるからだ。山岳会の会員は一昨年8日 間山荘に足止めされ、車は2ヶ月間に渡ってダムに置き去りにされた。林道が崩落し たからだ。今年も7月中旬に小規模の崩落が起きている。
ツアー会社はもちろんの事、地元や山岳会であっても荷揚げする事もない車がむやみ に入るべきではない。禁を破ってまでツアーをしなければいけないのですか。それが 北海道のアウトドア振興の進む道ですか?