第1回山のトイレを考えるフォーラムの報告

(2000年8月)
フォーラムのプログラム      フォーラムのスナップ写真
平成12年8月29日(火)18時30分より 札幌市教育文化会館 参加者:156名

記録:札幌中央勤労者山岳会 山口 晶代   アンケート集計結果はこちらです


1.  開会宣言 18:30 道央地区勤労者山岳連盟 鎌塚 敬子

2.  開会挨拶      山のトイレを考える会事務局 岩村 和彦

 ここ最近ごみの問題については、登山者のマナーの向上が著しく明らかに捨てられたゴミは無くなった。しかし、残念なことに通常のゴミは持ち帰る登山者もトイレのゴミはそのまま置いていく。まずは現状を知ってもらいたい。
紙の問題はこれ以上放置できない状態となっている。それと合わせてし尿の問題、水質汚染の懸念も深刻な問題になっていく。自分達でできることをひとつひとつやっていこうと会を立ち上げた。そして、これに興味のある方、賛同してくれる方の意見を聞こうということでフォーラムを企画した。

3. 北海道の山のトイレの現状報告

1)黒岳、銀泉台におけるトイレの取り組み状況について

                       北海道森林管理局旭川分局石狩・層雲峡森林事務所 穂積 玲子
                                    (代読)北海道大学大学院農学研究科 鄭 佳昇
○森林事務所における仕事

 石狩、層雲峡森林事務所における管轄地域は、黒岳、銀泉台、高原温泉である。赴任してから、特に黒岳石室のトイレと銀泉台登山口のトイレの汚さが気になり、実践できるトイレ対策を森林パトロール員、及び黒岳石室のアルバイトの人達の協力を得て実行中である。森林パトロール員の仕事は、登山道の整備、ロープ張りや水切り、ゴミ拾いや、登山者に急病人が出た場合の搬出や連絡、学校登山などの案内、森林パトロール事務所における受付、避難小屋の維持などである。

○黒岳石室のトイレでの対策

 黒岳石室のトイレに散布しているのはウジの繁殖を押さえ、糞を分解し、アンモニア臭を消す微生物剤のSK菌である。1Lのボトルは2万円。即効性があり、大体3日?4日に1度の割合で散布し、アンモニア臭が消える。SK菌は初め10倍に薄めて散布し、菌が回ってきたら20倍に薄めて散布する。5℃以上で菌が繁殖するが、黒岳石室の周辺は、気温が平均15℃くらいでなかなか菌が回らず、恒常的に臭いが消えている状態にはなっていない。
外側の鉄板も太陽の熱に暖められることでよくハエがとまっているので、SK菌をまくことにした。2LのSK菌は一ヶ月もった。ウジを孵化させず、同時に微生物の働きを促進させるため、消臭効果もある茶の実粉末脱臭剤も使用している。1kgは1,100円である。黒岳では9日に1度3つの便そうに200gづつをいれ、銀泉台では週に1度、全体で200gを入れている。
ティッシュペーパーの分別が糞の分解を促進するのに効果がある。たまったし尿をシーズンの終わりに穴に埋めているが、去年くみ取った糞尿量はドラム缶3個弱くらいで、その量を少しでも減らそうと思い、ボックスを作って登山者に使用済みのペーパーを分けてもらうことにした。利用者に説明しているが、なかなか徹底されていない。
以上の結果、ハエの数は減少していると思われるが、20℃以上になるとハエが大量に発生している アンモニア臭は緩和されている。また、床にウジの発生はしなくなった。

○銀泉台登山口のトイレでの対策

 銀泉台登山口のトイレは周囲が木に囲まれ、常に日陰なので黒岳の石室のトイレと違って環境的にハエが出にくい。昨年からたまっていた便そう内の水をすべて汲み取り、各便そうに400gづつ茶の実粉末を入れたところ、徐々にハエが減り、現在ではほとんどハエがいなくなった。ただ、最近涼しくなっているので、その影響もあるかもしれない。
登山道入り口に建てた看板は、コマクサ平にある大きな岩の裏などのティッシュのかすを減らすことを呼びかけたいと思って作った。

○高原温泉のトイレでの対策

 高原温泉にも、分別用のボックスをおいたが、こちらまでは結局回りきれずそのままの状態である。なお最終的な結果は、2月に行われる旭川分局の研究発表会の中で発表する予定である。


2)トムラウシ山南沼の周辺の実態

                                                山のトイレを考える会 代表 横須賀 邦子
 山岳ガイドをしていて一番ひどい状況なのは、トムラウシ南沼。テントでないと泊まれない。山小屋は無くトイレも無い。そして百名山で集中が起こっている。
テント場分岐には三川台への道、テント場への道、大岩へ向かうトイレ道がある。トイレへの道の脇にティッシュ。昨年度のものもかなり形になって残っている。さらに進んでいくと道があちこちに分かれはじめ、草の中にはティッシュの花があちこちに咲いている。コの字型になっている大岩は三川台からの道からも、トムラウシからの道からも見えないので、安心して座れる場所である。草の上にした方が他の人の物を踏まないので、いたる所に便とティッシュが散乱している。
 大岩から下がるときれいな草地があり、そこにもトイレのあとがある。ゴジラ岩方面にきれいな花畑があり、わざわざそこまでいって用を足している。
テント場の上流部にも大きな岩があるが、ここは登山道の横で隠れることができないので、トイレあとは少ないが、自分の便を隠すために石をわざわざ沼から運んでここに置いている。
 この周囲にもティッシュがあり、ここの沢はテント場につながっている水場である。

<忠別岳の実態>

 水場とトイレがそれほど接近していないし、ここの雪渓が急なので入って用を足す人は少ない。管理人がいないのでトイレの便器はきたないが、ゴミは落ちていなくてきれいな状態。
トイレの裏は待ちきれない人の物が点々と散乱している。トイレ道もできており、その脇にはティッシュがメチャクチャに散乱。(ティッシュ)1~2年ぐらい経つと乾燥するが、一年ぐらいはグチャグチャだ。トイレから5mほど下がると水場、トイレと水を取りに来る場所の距離は8mほど。ここの水は取らない方がいい。
最も登山者が多くなる時期が一番問題だと感じる。本当に混んでいる時期は7月20日から30日の10日間。その頃に南沼で数えた最高は'98年に67張のテントであった。67張のテントはテント場で収容しきれず、やはりあふれて川近くまで張っていた。

 南沼テント場上流の雪渓部にパークボランティアの人が立入禁止の札を立てるが、8月10日頃には強風で飛んでいた。やはり、立札等書いていた物がないと知らないで立入る方が非常に多く、雪渓上流部周りはティッシュだらけであった。どこの山からもゴミは減りつつあるが、トイレの紙は減っていない。 紙を持ち帰っている人とそうでない人の差は激しい。
 それからくい止めたいトイレ道の拡大についてであるが、高山植物はかなり踏み荒らされている。トイレ周辺の道は蜘蛛の巣状に広がっている。登山靴で何回も踏みつけられ、そこがえぐられている。どちらが登山道か見分けがつかないほどはっきりした道の拡大になっている。

 トイレは必要なものであるが、景観を壊すものである。しかし、これだけ入山する人が多くなっているその時期、何らかの対策が必要である。私は、ピーク時に一時的に1ヶ月でもいいからキャンプ場と称されている所には簡易トイレを設置し、シーズンが終わったら取り外してほしいと思う。
携帯トイレの普及についてどれぐらいの理解を得られるだろうか。自分自身携帯トイレを使ったのは3年前。4、5年前から知ってはいても抵抗があった。しかし、一回使ってみると簡単だった。ただ、日帰りは持ち帰りが可能でも、テント泊となると長い日数分、背負って持ち帰るということはつらくて困難。きちんと入山日数分持ち帰るとか、密封容器に入れて臭いがもれないように持ち帰るという声も頂いている。その反対にとてもそんなことはできないという声も頂いている。これは慎重に取り組まなければならないという思いを強くしている。

(つづく)

DUM  フォーラムINDEXへ