3)野営地のトイレと踏み分け道
北海道大学大学院農学研究科 愛甲 哲也 ー山岳トイレ整備ガイド掲載の北海道による調査よりー 7つの自然公園、18の避難小屋、休憩地点で紙やし尿の散乱が見られる。北海道の山の問題の特徴を本州の事例と比較してみると、山小屋、野営地のほとんどが行政の管理の場所となっていること。登山口にも林道の終点となっている所が多く、トイレのない場所が多い。それから、山小屋、野営地、登山口に管理者が常駐している場所が少ない。多くの登山者をひきつける原始的な山がある。その調査の中で各市町村から報告された問題点と対応状況について。
問題点 ・避難小屋にトイレがなくて周辺に紙が散乱している。
対応状況 ・避難小屋を山小屋の代わりにしないよう呼びかける。 その他トイレの設置を含めて、山岳地における公園利用のあり方全体を検討する必要があるとの意見も出ており、同感である。トイレの問題もひどいものだが、広く考えていかなくてはならないと思う。 大雪山の状況について ・旭岳ニセ金庫岩 旭岳は高い植生がなく、身を隠す場所がない為、ニセ金庫岩の裏がトイレになっている。身を隠す場所がいくつかあり、ティッシュが散乱している。ティッシュの状況は半分溶けた形で岩に貼り付いて残っているものがある。これは土に触れていないと分解しずらく、岩に貼り付いた物はずっと白く残っている。 ・裏旭テントサイト 1mぐらいの高さの岩があり、そこがよくトイレに使われるが、別の小さな岩かげにも用を足している跡があった。しゃがむとお尻しかかくれないような岩だが、せっぱ詰まると色々な所で用を足してしまうということで、足下の植物が目には入らないのではないか。 ・南沼テントサイト
テントサイトの間から外側に向けて何本もの道が延びている。そしてその端は必ずティッシュが散乱していて、トイレに使われている。テントサイトの中にも植物は生えており、踏みつけられている。表土がはがれ植物が育ちにくくなっているが、他の野営地でも同じ状況である。頻繁にトイレとして使われている場所の土は黒くなり、ティッシュが散乱していて、周りの植物も剥げている。 ・美瑛富士野営地 避難小屋・野営地はあるがトイレはない。野営地の周りは道がのびていてトイレになっている。美瑛富士野営地の場合、かなり大きな裸地が発生している。 林野庁が5年おきに空撮した写真を比較
1971年 テントサイト少ししかない。
南沼テントサイトは77年には3つしかなかったが、その後裸地が大きくなり、新しいサイトもでき、それが繋がったり、道も延びている。美瑛富士の場合、サイトの位置は大きく変わっていないが、裸地の周りに新しい裸地ができ、外側に向かって道が複雑に延びている。 アンケート調査では、トイレ問題は不快感も高く対策の必要性も高い。対策としては、トイレを作ってほしい。トイレをきれいにしてほしいという意見が多く、自分で持ち帰りをしようという人はまだ少ない。今後のし尿処理への態度と排泄後の処置は、性別により違いがみられるが、登山経験によっても認識に違いがみられた。 今年3月日本トイレ協会主催の全国山岳トイレの改善事例報告する会が行われた。 <トイレ問題の取り組みとして>
①現場で処理
①②は営業している小屋、行政の側が行う対策。現場の処理としては浄化層を作って、シーズン後に処理する方法やバイオトイレなどがある。汚泥の搬出はヘリコプターによる方法が知られているが、便層ごとカセット式に吊り下げられるようにしたものや、携帯トイレを登山者に使ってもらい、それをヘリコプターで降ろしている山小屋もある。 登山者によるし尿の持ち帰りは、携帯トイレの持ち帰りであるが、北海道では行政利尻、大雪山で行っている。勤労者山岳連盟などで実験的な取り組みを色々としている。行政が携帯トイレの持ち帰りに積極的に動くというのは北海道が初めて。 ・トイレ問題の対処として
1. 管理者、研究者は現状を正しく把握し、それに対する情報を提供すること。
山のトイレを考える会 代表 横須賀 邦子・サニタクリーン(ポリマー)…かなりの水(2回分)を吸い取る。ザックの中に入れるとやぶれたことがあるので今はやめている。 ・スケットル(粉末状のもの) ・エコポット(ポリマー)…ジッパー付きビニール袋 ・水筒用の袋を使用すると、ザックの横につけられる。 ・水に溶けるティッシュは野山で使うべきではなく、都会で使うべきだと考える。残さないというのが大事なこと。たとえ溶けるものであっても置いてきていい訳がない。ゴミの持ち帰りと同様、トイレットペーパーは全て持ち帰る。これは誰にでもできる。 ・黒岳の石室横にトイレ用テント設置。(今年の8月より)中に便座があり、携帯トイレの袋をひっかけて用を足したら自分で持ち帰るというもの。 ・フォーラムの中で一番大事なことは、ここにいる方々の意見を率直に伺って、これからの進路を探っていこうということ。
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