第11回山のトイレを考えるフォーラムの報告

(2010年3月)

(写真撮影:山のトイレを考える会 西田弘氏。スナップ写真も同様)
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フォーラム資料集の購入要領(送料込みで600円)
平成22年3月6日(土)14時00分~17時00分
北海道大学学術交流会館「1階第一会議室」    参加者:47名

テーマ:「改めて北海道の山トイレ事情の今」


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01.表紙

02.目次

03.巻 頭 言:第11回フォーラム開催にあたって 岩村和彦(山のトイレを考える会 代表)

04.2009年 山のトイレを考える会 活動報告

05.2009年 山のトイレデー活動報告・概要・感想

06.山のトイレを考える会ニュースレター NO.10 2010.1.19

07.2009年大雪山系~十勝連峰のトイレ・山小屋・野営指定地の状況 黒澤大助(山のトイレを考える会)

08.知床の山で携帯トイレを使っていただくために 滝澤大徳(知床山考舎)

09.利尻山における携帯トイレ普及活動の進展と課題 岡田伸也(環境省稚内自然保護管事務所)

10.2009年度 幌尻岳の山岳トイレ問題とその対策 高橋健(日高山脈ファンクラブ) 

11.大雪山国立公園の保護と活用-トイレだけが問題ではない- 今村朋信(えぞ山岳会会員)

12.はるかな山をいつまでも~大雪山におけるアクセスの変化と野営地におけるインパクトの研究
  愛甲哲也(北海道大学大学院) 

13.平成21年度清掃登山 美瑛富士避難小屋の報告 菅原修三(北海道山岳連盟)

14.羅臼岳登山における携帯トイレ利用促進の取組結果 知床国立公園利用適正化検討会議 

15.2009年度 利尻山山岳年報 佐藤雅彦(山のトイレを考える会利尻支部) 

16.環境省の環境技術実証事業における山岳トイレWGの活動状況 森武昭(神奈川工科大学)

17.飯豊連峰における山岳トイレの現状と課題 井上邦彦(NPO法人飯豊朝日を愛する会)

18.丹沢大山地域における山岳公衆トイレの維持管理について 井田忠夫(神奈川県自然環境保全センター)

19.屋久島の山岳トイレの現状2010 小原比呂志(屋久島野外活動総合センター) 

20.平成20年度・平成21年度山岳トイレ技術セミナー参加報告書 仲俣善雄(山のトイレを考える会)

21.自然保護運動の裏方として 樋口みな子(北海道高山植物盗掘防止ネットワーク委員会)

22.2009本州の山岳トイレ状況と北海道への展望 小枝正人(山のトイレを考える会)

23.トムラウシ山遭難 岩城史枝(岳人 編集部) 

24.平成21年第3回北海道議会予算特別委員会第2分科会会議録(抜粋)

25.(前回)第10回山のトイレを考えるフォーラム議事抄録  (山のトイレを考える会)

26.平成21年度 黒岳バイオトイレの運用状況について 小室一也(北海道上川支庁環境生活課)

27.編集後記 小枝正人(山のトイレを考える会)

1.開会挨拶 司会 小枝正人

2.代表挨拶 岩村和彦

 私は前から山のトイレは何とかしないと思いつづけていたが、2000年に初代代表横須賀の講演会があり聞きにいきまして、それで有志5,6名が会を立ち上げた。その年に札幌市教育文化会館で第1回フォーラムが開催された。
 果して北海道の山が私たちの活動で、どのくらいよくなったのだろうか。それぞれ皆さんの判断があろうかと思います。全然進んでいないのではないかと言われれば返す言葉がありませんけど、私から見ると相当マナーの面は向上してきたのは事実かなと思います。 誰でも休憩する地点は同じで、ちょっと横に入ると見たくもないティッシュが残地されているのが見受けられます。その点では我々の活動が認知されていない、基本的マナーの部分がまだ完全に定着していないと認識しています。
 いずれにしてもこの会を立ち上げてから、いろいろな活動をしてきています。全員が専担でやっている訳でなく、それぞれ仕事を持ちながら活動していますので、皆さんから見ると、やる事が遅いと感じることがあるかも知れません。その点の批判は甘んじて受けたいと思いますけど、多少、その辺の所をお汲みいただけたらと思います。
 今回のテーマを「改めて北海道の山トイレ事情の今」としました。北海道にある山小屋のトイレ環境、トイレ事情はどうなっているのか、みんなで意見交換して一緒に考えたいと思います。
 これに先立ちまして、総会を開催させていただきました。活動報告、会計報告等、承認いただきましたことをご報告させていただきます。

3.2009活動報告 仲俣善雄 

 内容は第11回フォーラム資料集2~4ページを参照願います

4.各山域の山トイレ情報報告

(4-1)大雪・十勝  黒澤大助氏(山のトイレを考える会)

〔質疑応答〕

(山のエコー:上)
白雲、忠別、上ホロ小屋のボットントイレは臭いが少ない。それに比較しヒサゴ小屋は臭いが凄い。何が違うのでしょうか。

(黒澤)
素人目にはよく分からないが換気の違いかなと思う。

(愛甲)
私の推測ですけど、周りの水の関係かも知れない。ヒサゴのトイレは沼の畔に建っているので、地下水位の影響や、便槽の構造そのものかもしれません。分からないですけど。

(4-2)知床羅臼岳  滝澤大徳氏(知床山考舎)

〔質疑応答〕

(横須賀)
知床の普及啓発とか維持管理とかの役割分担が環境省、北海道、斜里町とかとなっていて、民間人が入っていない。やはり民間が入らないと一般登山者の利用の感覚だとか、このようにすればもっと啓発できるとかのアイデアが盛り込まれないと思うのですけど、民間人を入れるような方向性はあるのでしょか。

(滝澤)
まさに私が言いたかったのはそこです。本当にちょっと間違うと、ちぐはぐな押し付け的な方法になってしまうのではないか。実際に町内で携帯トイレの販売をお願いされた所は、なんでこんな物を売らなければならないのか、自分達が今まで扱ったことのないもの、使い方も知らないので、相当反発がありました。これに関しては、さきほどの役割分担での仕事ですが、どうしても顔をあわせるのが私なものですから、私にガンガンくるうわけです。いやいやそうではないんだよ。携帯トイレとはこういうもので、こう使う、回収ボックスはこういうものだとか説明しなければならない。押し付け的なものにならないようにするためにも、いろいろ細かい部分を吸い上げて欲しいなぁと。
 それで行政だけでやっている集まりを、次年度にでも何か協議会的な組織を作りたいとの意向がある。ただ、協議会になると偉い人だけの集まりになってしまうのですね。そうなると実行力が無いので、協議会でなくて、もうちょっと連絡だとか連携だとか、し易いものに出来ないのと言うことをこの前話してきた。ただ、なかなか行政というのは、1項目、1項目ずつやっていきたいと言う部分があって協議会にならざるを得ないのかなと言っていました。実際、知床は会議が多過ぎるんです。世界遺産になってから、もの凄い数の会議があって、殆ど同じメンバーの顔ぶれで、会議の名前だけ違うというのが沢山ある。組織を作ったらそれに我々も出させていただきたいと考えています。

(参加者)
携帯トイレが放置されていた例はありますか。

(滝澤)
あります。私も一個回収したことがある。殆どないがゼロではない。

(4-3)利尻山    岡田伸也氏(環境省・利尻アクティブレンジャー)

〔質疑応答〕

(仲俣)
携帯トイレの回収率が60%前後と高いのですけど、女性は大便と小便、男性は小便は外で大便が主になるのですか

(岡田)
やはり女性は大便も小便も利用され、回収率が高い。男性はアンケートでも小便は使わない人が多かった。

(山のエコー:上)
若い人が登山に戻ってきている。問題は若い人は地図を持たない、自分がどこにいるか分からず遭難に繋がる。トイレの使い方、排泄の仕方を全く考えていない人ばかりが増えてきている可能性がある。

(岩手大学農学部:柴崎)
屋久島について研究している。島の特有性が紹介されて、利尻島の事例が羨ましく思えたのですが、屋久島のコミュニティは閉鎖的な感じがしてなかなか自由に意見が言えない現状がある。利尻島は自由にものが言える雰囲気なのだろか。携帯トイレも反発があったと思うが、自分の仕事に組み入れており前向き。どういう話し合いが行われ合意したのか。
 屋久島も去年から携帯トイレを導入しているのですが、協議会は非公開。ガイド部会とか観光協会とかで簡単に紹介されるけど、具体的にどうやって携帯トイレを普及していったらよいかという根本的な議論をガイドさんとか宿泊業者さんとか意見を言っても反映されない仕組みで島全体として盛り上がらない。

(岡田)
私は島に行ったのは2008年。携帯トイレの取組みは2000年からで、私の認識が甘いところがある。苦労した所を知らない。

(愛甲)
よく分からないが5年の無料配布期間で課題を克服したからでないか。

(利尻富士町:住吉)
導入当時の詳しい話は前任から聞いた話しか知らないのですけど、6年目の携帯トイレ有料化にはあまり抵抗がなかった。利尻の観光客はH15をピークに右肩下がりだが登山者1万人前後はあまり変わっていない。宿泊業者さんが登山者を大切にしてきた、意識の高さがあったのかも知れない。

(横須賀)
私は山のトイレを考える会の会員でもありガイドですが、利尻島にはガイドが居なかった。なぜなら登山時季が7月8月と短期間で食べていけない。だから定住できない。けれども屋久島は1年中ガイドができる。それでたくさんのガイドが屋久島に流入した。そうするとライバル意識とか客の取り合いになって、なかなか自分達が外の人と連携していいことをしょうと言う気持ちに結びつかない。まして、自分達の利益になるものでないとやっていかない。
 利尻は携帯トイレ1個あたり85円の利益があると言うのが宿泊業者さんの協力に繋がった。屋久島は利尻より比較にならないほど登山者が多い。泊まるところがなくトイレには2時間並ぶ。トイレの溢れ方がメチャクチャですから早く携帯トイレを導入しないと解決できないのではないかと思っていた。利尻島はお客さんからの反響が凄く大きかった。私が携帯トイレを使ってくださいと言う前にお客さんが東京から買ってきていて、利尻は携帯トイレを持たないと登れないのだよと言われた。以前はいくら言っても反応がなかった。この噂を流したのは誰なのかなぁと。

(4-4)日高幌尻岳  稲垣悦夫氏(幌尻山荘管理人)

〔質疑応答〕

(仲俣)
そば殻を使っているのですけど、年1回取り替えているのですか

(稲垣)
菌床がダメになったので3年間で何回も取り替えている

(仲俣)
掻き出しは簡単にできるのか

(稲垣)
簡単でない。上の方の点検孔からしかない

(仲俣)
管理人さんがするのか

(稲垣)
業者さんにやって貰っている

(岩村)
管理人さんから見て、幌尻山荘バイオトイレは処理能力が全く足りなかった。80人~100人はOKと言いながら、稲垣さんの想定だと1日2kg、僅か10人。メーカーの悪口を言う訳でないが、80~100人がウンコしたとしてもとてもじゃないが足りないと言うことですか。

(稲垣)
選定した時、それで決定したと思う。毎年三者協議(業者、山荘、役場)をしているが、現場の方が困っていると言ってもどうしょうもないと言うことです。

5.デスカッション

 (コーディネーター) 山のトイレを考える会   愛甲哲也

(日本山岳会:長谷川)
 いつも思っているのですけど、山のトイレを考える会が一生懸命頑張っているのですけど、行政の方へのインパクト、圧力のかけ方が足りないと感じている。山岳会もみんなで役場に押しかけるとか。少し過激な活動をしてもいいぐらい深刻な問題。特に幌尻山荘は行政は何を考えて作ったのか、しかもまだ使おうとしている。なぜ改善しないのか、我々疑問を感じる。山トイレ会でこれだけ討議をしている訳ですから、その結果を幌尻山荘の管理人さんだけに負担をかけないで、我々も圧力をかけては駄目でしょうか。

(岩手大:柴崎)
 屋久島もバイオトイレを導入して、うまく稼動しているのは1/3、繁忙期には全部ストップ。現場レベルでは分かっているが、なかなか報道されないので屋久島ではいろいろな企業が入って、いいことをやってくれているんだなぁ、と外の人は大体思ってしまう。
 現場の声を計画段階から、いろいろな人の意見を聞いて作るかどうかが重要。事業が出来たり、具体的な問題が発生した段階で様々な協議会が作られているのが現状。問題が起こる前にこの山をどう管理するのか話し合いの場を充分持たなければならない。バイオトイレは非常に高価なので一度作ってしまっては、駄目でしたとは言いずらい。

(愛甲)
 滝澤さんからもあったように協議会が行政だけになってしまう。使う人の声、管理人の声が反映されていない。幌尻も予算のからみがあって行政の方が短期間で作ってしまう。結果、うまくいっていない。利尻はどうなのでしょか。

(環境省北海道事務所:藤森課長)
 今日はプライベートで来ている。私はH20秋札幌に来てあまり詳しいことは分からないのですけど、利尻山登山道の荒れ方が酷いので、緊急対処的に修復整備しなければならないと走りだした。登山道整備だけでは、なかなか持続的な利用は難しいのではないか、そんな観点から利尻山の利用のあり方について、地域の山をよく知っている方を交えて議論し答えを出していただこうと、H20~H21年の2ヵ年に亘って検討会を行った。その時に島の人たち、登山をする人、私達のように公園を管理する者が議論した。ソフトハード両方あわせて進めていく必要があると思っている。

(環境省稚内自然保護管理事務所:千田)
 利尻は携帯トイレ、利尻ルールなど取組的は先進的。宿泊業者に説明会を開いて普及啓発を行っている。その母体となっているのが協議会。単なる事業説明とかグリーンワーカー事業の受け皿になっていただけで、なかなか利尻をトータルに一体的に考えて対策を話し合う場、体制があまり確立されていなかった。登山道の崩壊も行政の責任と言われるけど、行政だけで守られるわけでなく、地域の力がないと登山道も守れない。
 協働型の維持管理体制を作るために、どういったことができるのか、山のエキスパート、地元の人の意見を聞きながら、ハードよりソフト(お金をかけないでできること)が一番効果的で持続的な対策になると考えている。環境省が検討会を立ち上げた。その後は協議会事務局に移し地元が主体になって考えていく枠組みにしていけばと思っている。

(横須賀)
 行政で分かっている方がキーマンになっていただけると、いろいろな人が関わりあい、現場の意見が吸い上げられる。それが改善に結びついたり、社会啓発、普及事業に結びつく。偉い方の会議だと現場の声を生かす人が参加できない。どうしても事業を遂行する人たちが沢山いらして実際の問題点がどこにあるのか分かっている現場の人が意見を言う機会がない。何か決まれば現場の人がそれに従って動いていく訳ですけど、その意義や方向性を理解しないと全く協力できない。一般登山者も協力できない所に置かれている。だから現場の人を必ず会議に入れて欲しい。けれども現場の人を会議に入れるためには、山岳会、NPOとか夏期シーズンは山に登っている。ガイドは稼ぎ時。その様な時期を極力外して欲しい。行政の方々は山のトイレ会があると分かっているのですから、何かあった時にお互いに情報共有しましょうよ。行政から声をかけてくれないと協力も難しい。行政はもっと門戸を開いて欲しい。

(長谷川)
 行政機関、担当者が専門家と言うのは極めて少ない。しかも小さい役場でさえ隣りの人の仕事に協力しない閉鎖的な所がある。このような会は最高レベルの人が集まってきている訳ですから、この問題を単なる担当者にだけにお願いするのではなく、組織として行動してはどうかと考えています。これだけの人が英知を絞って、申し入れをして、きちっとした対応を整えていかないと、地元にだけ我々登山者がおんぶに抱っこしてしまう。
 美瑛富士の問題も今だに解決されないのも、美瑛町という小さな町で処理しきれないでいると思う。しかし我々が意見を出したり、いろいろな組織、団体からの意見を纏めて提案型の係わり方を考えて進めていってはどうかと思う。もう11回もフォーラムをやってきていますので、行動する山のトイレを考える会になっていただきたい。

(愛甲)
 昨年の6月に仲俣さんと美瑛町役場に行って、役場の担当者と話をした。すぐにどうこうする話にはならなかったのですが、携帯トイレでもいいのではないか、登山口に仮設トイレを置けないかなどを話した。
 旭川中部森林管理署にも行った。登山口の入林者名簿が代表者の名前と住所を書くだけになっていたので、表大雪のように人数、登山ルートのほかに美瑛富士避難小屋に泊まるかも記入できる様式に変更を依頼、了承してもらった。利尻はみなさんの顔が見えて話がしやすい。大雪は関係者が多すぎて集めるだけでも大変。会議をするのに日程調整だけで大変。

(環境省上川自然保護管理事務所:谷垣)
 大雪は範囲も広く、自然保護官事務所も3箇所でやっている。関係市町村も多い。ルートも複雑。それぞれの問題を把握して、どう対策をするか細分化してしまって大変というのが現状。今年度から大雪山のトイレ実態調査、登山道の調査を考えている。今後、どういう体制で、どうゆう人達が関わって、どうゆうふうに集めて、維持管理をしていけばいいのか、どこにどのような物が必要か、誰が何をするのかを検討していきたい。いろいろな課題が山積している中で、今さらそんなところから検討するのかと思われるかも知れませんけど、連絡会議みたいなものから検討していきたいと思っています。

(愛甲)
 最近の美瑛富士の状況と山岳会として長年管理に携わってきた内藤さん願いします。

(美瑛富山岳会:内藤)
 2004年に美瑛富士清掃登山をしていただいて、その後署名をしていただいて順調に進んでいるなという感じはしていたのですが、設置した後のトイレの管理を美瑛町と山岳会の方で可能か打診があった。今も私達は管理をしない訳でないですが、山岳会も未来永劫毎週管理に行けるかと言われれば位置的なものもあるし、ちょっと厳しい、美瑛町も厳しいという回答をしている。
 この夏に意見交換と言うことで愛甲さんと仲俣さんが来てくれたのですが、地元からトイレを建てて欲しいという要望が上がってきていないことがある。確かにトイレを建設して欲しいというのは地元の登山する人間はみんな思っていましたが、現実的には要望を上げていませんね。ですから長谷川さんから言われたように、地元の美瑛町は自然環境の保全とか山に対して認識が薄いのではないかと言うイメージがあるかと思いますが、環境省の方も来ていますので、一つルールについてお聞きしたい。
 一昨年十勝岳避難小屋が壊れたものですから、森林管理署が資材を提供して、美瑛町が建築の工事代を負担して建てた。結局は後の管理とかあって林野庁の財産。もともとは北海道営林局で建てたものですから、国の財産になった。国の財産に対して、地元がお金を出したり、その後の補修をすることになると、地方財政法というのがあって法律違反になる。そうするとトイレを国が建てたものを地元が管理するということであれば、地元に移管するということですか。山岳会では10年くらいは何とか維持管理はできるかも知れませんが、その後は補償できませんので、今はできませんとの回答にします。町の方は将来的に貯留式みたいな形になって、仲俣さんのトイレ案では10年は持つだろうとの事でしたけど、10年経った時に町が屎尿のヘリ搬出をしなければならないとの認識がある。

(環境省北海道事務所:藤森)
 一般論としましては、国の施設の維持管理を地域の団体に一部お願いする方法は環境省としてはある。管理の一部の運営委託として可能である。町の方ではどのような管理の仕方を想定されているか把握していませんけど、それなりのやり方はあると思う。特にトイレ設置だけに済まなく、日常的な維持管理がとか、し尿処理そのもの、仕組みがちゃんとなっていないと、どこかトラブルが起こる。今年度、登山利用に関わるトイレ、基礎的な調査を実施する予定です。現状把握、課題は何なのか、大雪国立公園の登山利用にどういう所がどんな形で関わっているのかが分かるようにして、できれば関係する所に共有化しながら、課題と解決方法について話あっていけるようなことを念頭に置いている。

(愛甲)
 建てるのは簡単でもその後の維持管理は難かしいと言うのは何回もフォーラムで話をしてきた。十勝は壊れて新しく避難小屋を造ったのですが、忠別、ヒサゴもここ数年、建物が劣化してきている。これらの建物は大体30年位経っている。新聞報道にありましたけど羊蹄山避難小屋も老朽化、来年度補修します。地域、町、山岳会の意見を聞いてどう連携をとるか話がでていますので、誰か現状の話をしていただけますか。

(後志支庁環境生活課:柏崎)
 羊蹄小屋について明言できることは今無いのですが、新聞報道のとおり来年度補強工事をする予定。環境省さん?の方で早めに検討していただくとの基本的なことは決まっている。ただ、その時期とかどういう規模、どのくらいの予算でとは決まっていない。

(道自然環境課:土屋)
 このフォーラムには去年も参加していますし、前任もずっと参加してきています。先ほどから行政への批判も少し頂いているようですけど、こういう所から情報を得て、できるだけ改善に取り組んで行こうと思っている。羊蹄山避難小屋は昨年の11月に現状調査をして老朽化の酷い所を把握して、新年度明けてから補強をしょうと支庁と相談しながらやっている。簡単に行ける場所ではないので、ヘリで資材を運んで、立地条件も劣悪で経費も相当かかります。登山の最盛期であることとを考慮して、地元の人と協議して、できるだけスムーズな工事ができるよう進めている。

(小林)
 私はサハラ砂漠のニジェールとかマリとかの国で水の安全とトイレをどうするか関わっている。特にメンテをどうするか、その費用をどうするか。ドナーの国から援助され国有財産となったものをどう維持管理するのか、住民組織としてどうそれを作って金をどう捻出するのか等、フランス語圏アフリカの国の官僚と議論していますので、大変興味深く聞かせていただいた。
 今の最後の課題について私は道庁は大変お金が厳しいので、それは道の仕事だと言ってもおそらく10年はかかると思います。地方自治法が改善されまして、公設の施設もなるべく民活で運営する。札幌の体育館でも指定管理者制度で民間の組織で維持管理してもらっている。したがって山のトイレを公設公営か公設民営か民設民営でいくのか、そろそろ考えなくてはいけない。
 今回聞かせていただいて私が二つ気づいた点があります。これだけ自然と山を良く知っている方がなぜトイレの問題をあんなに技術依存の装置に100%処理できると思い込んでいるのかと不思議に思った。実はウンコは体内で消化吸収、分解しやすいものを全部吸収したあげくの非常に安定した有機物がウンコとなって出るわけです。これはバクテリアにとって大変分解しにくいものですね。まず対応できないのです。どういうものをた食べていうかによってウンコは違う。このごろは食事の洋風化で下水処理場の微生物は変わった対応をせざるを得なくなってきている。なぜ都会でちゃんとウンコしても川が汚れないように処理できているのか、その不思議にも皆さん、よく気をつけていただきたいと思います。分解が非常に難しい。その上オーバーロード、量の変化が大きい。普段はえさが来ない時期がずーとあって、来たと思ったらわ~っと来る。これにはまず対応ができない。北海道では50℃以上の温度にすることによって回虫とバクテリアを全部殺すと。それでオカクズにまみれたものを畑に使えるようにすると言うのを装置の基準にしているために、あれだけ気温が低いところで発電機やなんだかんだとセットしているわけです。水力発電機が壊れた、風力発電機が壊れた、壊れるのが当たり前でしょう。それなのになぜ機械物を買って付けようとするのか大変不思議と思っていました。
 それで非常に安定有機物であるウンコはやっぱり背負って降りてくる方々によって守られていることが分かりましたが、利尻で非常にうまくいっているケースを見習って、どうやったらそれ以外の地域でも利尻の様なことを実現できるのか一番大事な点と思いました。
 もう一つは利尻で一袋80何円だから、継続性のために利益が出ることが必要だと。あれを全て処理しているのは利尻町です。利尻町は町民がコンスタントに使う水のほかに、夏になると観光客や登山者が来てデカイ施設が必要なわけです。水道の方は火災が重なると困るのでキャパがありますけど下水道、し尿処理場は6月末から大変えらい事になるわけですね。その観光客が来ることによって増える費用は利尻町が負担しています。みなさんはこれを当然と思っていると思いますが、これも原因者負担ということからしますと、ウンコを出した人が処理費まで負担すべきと思います。
 日本に根付いていないのがキャリアキャパシティという環境容量という概念であると思います。日本ではどこでも装備なしで歩けて、どこにでも行けるから人数制限というものが無い。スイスアルプスでは、外へ出たら凍え死ぬからともかくロープェイで登った人間は展望台から出るなと限定されます。日本でも上高地ですが数が決まっている所がありますね。私は数日前にエジプトから帰ってきたのですけど、ピラミッドに入る人数を300人、ツタンカーメンに入る人を300人に制限しています。理由は吐く息の炭酸ガスで石灰石が劣化するという訳です。300人に制限してワイロをやって闇で出る切符も100枚と制限しています(笑)制限して遺跡を守る。
 利尻島は東京ではみんな携帯トイレを持っていかないと登れないそうだよ。そのトイレは1日300枚限りと限定する。日本では限定しないという前提で手稲のスキー場も渋滞すれば、何時間たってもスキー場に辿りつけないからニセコに分散するんだと言う。非常に無責任な体制にあるわけですね。誰にでも何処の山にでも行けると言うのは非常にいいことですけど、それを放置しておいては自然が守れないという状態になった時、やはり何らかの人数制限、キャリングキャパシティ、アメリカはこれも色々な町でやっています。これ以上人口が増えると弁護士が足りないとか、下水処理場が足りないとか、電力が足りないとか、上限を決めています。環境と共存して長持ちさせる上での制限についても議論すべきでないかと思います。

(愛甲)
 お話の中でもっと民を使えとの事をおっしゃったと思いますが、確かに幌尻の話にしても黒岳のトイレの話にしても、導入する時に検討されているのですが、なかなか外から意見を出したりするタイミングがずれていたり、うまくいっていない。民間の企業の方にもできれば、そう言うことにも参加してもらえれば。
 最近そう言うこともかなり進んできて、一つのいい例だと思いますが、我々が配っているマナー袋、あれは(株)ムッシュさんの売上の一部を使って、無償で当会のイメージを入れていただいて配布しているのですが、そういう貢献をしていただいて、それが環境改善にもつながるし、それで山に登る人が楽しく登れれば、ムッシュさんの売上も上がるとなれば理想かなと思うのですけど、実際に売上に結びついているかどうか、ムッシュの西村さんどうでしょうか。

(ムッシュ:西村)
 大阪で登山ウェアを製造していますが、税収が下がっているので、地方行政もお金がないので大変なのですけど、僕たちがもっと頑張って税金を納めなければならないのは分かるのですけど、なかなか厳しいですね。これがマナー袋です。ムッシュの名前を入れています。これを山で無料で配布すると税法上でもなかなか難しい事があり、いろいろ苦しみながらやっています。
 民間企業として利益を出してこういうことをさせていただきたいとの強い思いはあるのですけど、問題は二つあります。一つを日本の民族性みたいなのがあって、いいことを大きな声で大袈裟にやると、どこからかスタンドプレィだ、偽善だと言われる。特にネット社会だと変に批判されてしまう怖さを持っています。いいことはこそっとやらなくてはいけないとの感覚が日本にはあるなぁと個人的に感じます。
 もう一つは民間企業は僕みたいな零細企業は厳しいですから、毎年安定した収益がとれないと言うことで、ちゃんとした数が作れないという二つの問題がある。ですが、皆様の活発な議論を聞かせていただき、我々も何とか頑張って沢山商品を売って、少しでも皆様のお役に立てる、山が綺麗になって、山にたくさんのお客様が安心して来ていただける環境を作ることに少しでも協力させていただきたいと思います。

(愛甲)
 未組織の登山者にどうやってメッセージを伝えるかという課題がある。以前は山岳会とか通していけばメッセージが伝わっていったのだけど、最近は若い人が増えているのではないか。そういった人たちにメッセージを伝える時に企業との関わりも重要という感じもしますが、この辺で滝澤さんみたいなガイドをしている方は実感としてどうなんですか。お客様の層が変わった、若い人が増えたというのはあるんですか。

(滝澤)
 先週、23歳の女子大生3名のガイドをしましたが、昨年はいなかったのにまた景気が回復してきたのかなと思います。今回、宿泊施設をやっていて純粋にガイドとは言えない人がアンケート調査をした時の話ですが、お客様の中に携帯トイレを持って帰る人がいるそうなんです。ただ、中には持って帰ってきても分からない人もいる。どうもやっぱりコソコソと隠すと。やっぱりトイレだからと。
 これもっとファッショナブルにかっこよく、いいことをしているのだぞと、もっと見せて歩けるような商品にカバーとか色とかを作ったらどうなのかと言う提案がありました。私なんか携帯トイレスタート時に防水バックに入れザックに入れているのですが、こんなのにだってメッセージを入れる、今出ていますサニタリーバックはザックの横に付けるものがありますね。こんなのにも携帯トイレのメッセージを入れて「携帯トイレ使っている、やるじゃん」と思わせるような仕組みもあっていいのかなと思いました。
 若い人達、未組織の部分でいうと確かに増えていると思います。羅臼岳の登山者数が減っていますのは百名山ブームのツアー登山も減ってきて、だんだん個人の中高年グループ、団塊の世代が減ってきた。
また、若い人も中高年もみんなインターネットを見ています。中高年の登山者は同じルートを辿って、同じ店に寄って、同じものを食べて、同じ宿に泊まります。木下小屋で夜、3日3晩、別な人が全く同じ言葉を聞かされるんですね。インターネットをうまく使うのが必要かな。若い世代にはファッショナブルに、アウトドア系の雑誌でもファッション誌みたいな山雑誌が2冊出ている。「荷物が重たくなるが気持ちは軽し」というキャッチフレーズでもいいかなと。ムッシュさんではそういうお洒落なマナー袋を作りませんか。一般の女性雑誌でもウオーキングとかハイキングの特集が組まれ始められていて、その辺をうまく使うという話ですよね。

(岡田)
 利尻ルール、ローインパクトで登るためのルール。この情報をインターネットだけでなく、雑誌とかパンフレットの改定の際に役場の観光課の方に連絡が入るんですね。その時は必ず改定する時はその情報を載せてくださいと言い、どんどん新しくなる毎に増殖してくることになる。利尻ルールの認知率が70%と高い。あと、あり方検討会の議事録なども流している。これから、利用者数のデータ、登山計画表の分析、登山カウンターの分析、なども流す予定です。

(愛甲)
 混雑予報も出していますよね。あれは何時からでしたか。狙いは。

(岡田)  スイスイカレンダーというのを去年から出している。混雑予定カレンダーですね。混雑というのは毎年決まっている。間接的なニーズコントロール、不快なことを避けることを狙いとしています。

(愛甲)
 間接的なコントロールの例ですけど、先ほど小林先生がキャリングキャパシティの考え方、直接的に人数制限をするというのが山の話をしていると出てくるのですけど、屋久島でもそういう議論をしていますよね。

(柴崎)
 屋久島はエコツーリズム推進法に基づいて全体構想を作っていて、それをもとにたたき台としては1日430名位縄文杉ルートを上限として規制をかけようという話になっています。430名の根拠が縄文杉のデッキのスペースからであったり、その周辺の小屋のキャパシティだけで決まっているのですから、利用者の混雑に対する自然への影響を科学的に踏まえて出した数字ではないので、私はどちらかと言うと原生的な自然の方が好きだと思うのですけど、初めて屋久島に入って縄文杉に登った頃というのは多分1日100人行くか行かないかと思う。
 それ位で丁度いいなぁと思っていたのですが、今から10年前で430を越える数字は殆ど無かったのです。ところがこの数年、非常に多くなって1日1000人近くになったので430人ということにしているのです。その数字が妥当かどうかというのは少し議論をしていかなければならないと思う。ただ、一つ問題なのはエコツーリズム推進協議会では、町民を対象にヒヤリング調査をしているのですが、屋久島の人口は1万4千人います、声かけが悪いのか、町民がしらけ切っているのかよく分からないのですが、15人とか20人とか、酷い時には10人を切ります。言っても何も反映してくれないとか、山は自分達とは関係ないと言う人も多く、結局ガイドさんとか観光業者の話だけになっていて、できるだけ数字を大きくしろと圧力がかかる。数字を下げた方がいいよと言う話はなかなか出てこないのです。
 形式上は住民参加型の管理形態をとっていますと行政側は言うと思いますが、しかし、それを細かく見ていくと極めて形式的な住民参加型の管理になっていて、欧米の住民参加の研究者からすると避けるべきであるという状況にどんどんなる可能性があります。私も○○レベルで座談会を開こうと計画しているのですが、なかなか行政と観光業者でない地域住民の声をいかに反映するかの仕組みがあまりにもなさすぎるので、どうしょうか悩んでいる。
 正直言って北海道というのは何か問題があると何かみんなが集まる場所だなぁと改めて思って、すごく感激しているのですけど、北海道のこのやり方を屋久島に持っていくとそのまま使えるかどうか微妙だなと思って話を聞いている。報道では規制の話が進んでいるように思われますけど、科学的な根拠は非常に乏しいということ。それに対して極めて本当の意味の地元住民がさめている現状があること。中には何で自分達が今まで水汲みに行けたのに、シャトルバスに乗って行かなければならないのかと言う声も出ているのですが、閉鎖的な社会で表面上は言えないという状況は陰であると思う。

(愛甲)
 全く同じ話が知床にあります。科学的な根拠をどう作るかというところと、トイレ問題は他の問題と繋がっているので、全体的に山のことを考えないと、トイレだけで議論していても駄目ですし、それだけで集まってきても話が分散します。
 もう一人高山植物保護に取り組んでいる樋口さんに話しを聞こうと思います。それは高山植物の盗掘防止活動の営みをやっていて、かなり私は市民の活動というか研究者なんかも加わって大きく行政を動かし条例ができ、全国的にもとても評価できる活動だと思うのですね。ついこの前小野先生とお話をしましたら、やはり高山植物の盗掘だけでなく、もっと広げて山岳環境全体を考えるような場も作らないといけないねとおっしゃっていたので、その辺を少し宣伝も兼ねて樋口さんお話をしていただけますか。

(樋口)
 108Pに「自然保護の裏方として」を書いたのですけど、高山植物盗掘防止ネットワーク委員会(以下 高盗防)の事務局を長年(4年)たった一人で事務局長としてやっていました。
 高盗防は全道各地の山岳団体、自然保護の市民団体などのグループが50団体集まって作りました。なぜそのようなネットワークを作ったかというと高山植物の盗掘が夕張岳とかアポイ岳とか大千軒とかいろいろな所、各地で起こったんです。個々には対応していたのですけど、夕張岳で1988年だったか270株の盗掘が起きて、それが新聞に出ましたけど、それが主婦2、3人が盗掘して捕まった。採ったものは元に戻せないので、大変なことだと夕張から声が上がったのです。そうしたらアポイの方でもヒダカソウが絶滅寸前だという声があがり、大千軒でもホテイアツモリソウなどの貴重な植物が盗掘されていて、独自に福島町の「青い山脈」という市民グループがずーと平日に交替でパトロールをしていた。それで全道的な組織にしなければ駄目だねと言うことから高盗防ができた経緯があります。
 それで道条例が出来たり、東京に行って法務大臣に訴えたり、署名を集めたり、いろいろなことをしました。それで盗掘も無くなってきた。
 盗掘をする人はインターネットで情報を調べるんですね。山のトイレを考える会はHYMLが主体となって出来た会ですけど、HYMLでもルールができて、山に行く人たちが、どこどこに貴重な高山植物があったなどの情報を流さないようにしょうと申し合わせをした。HYMLも500人にもなって、どんな人がMLを見ているか分からないので、情報も注意しながら流さなければならない状況になってきていますが、当時は100人位のMLの中で合意ができたというのは大きかった。長くやってきて成果があったと思います。
 その中で様似町のアポイ岳ファンクラブ、市民グループと行政が連携をしながらやってきたことが凄く勉強になった。行政と手を繋いでやっていかないと何も進まないと。ユウパリコザクラの会も夕張市とけっして仲が良いわけでないのですけど、水尾さんが夕張市に日参したということがある。それでも変わらないけど夕張岳は夕張市の財産であることを知らしめた功績はすごく大きいのではないかと思いました。
 委員長の小野先生は地域の人達と連携することにとても一生懸命だったこともあって、10年間を振り返り、盗掘防止という名称も変える時期だねと4月の総会で「高山植物保護ネットワーク委員会」という名称になるかも知れません。
 それと利尻の方に一言お礼を言いたいと思うのですけど、日本山岳会の道民カレッジで私が話す機会があったのですけど、利尻ルールというのは素晴らしくて、利尻富士町に資料を送っていただきたいと言ったら、翌日に50部送っていただきました。そういう意味でも地域の力と行政とがうまくいっているいい例ではないかと。雨竜沼湿原を愛する会と行政も雨竜沼ルール?を作ってやっている。トイレ問題もなかなか難しいなと思うのですけど、もう少し行政とどこかで話あえる場があったらいいなと思います。大雪は広すぎて難しいと思うのですけど、工夫をしていけたらなと思います。

(りんゆう観光:植田)
 11回目のトイレフォーラムと言うことで、私はりんゆう観光、大雪山層雲峡黒岳ロープウェイで仕事をしています。山岳ガイドをやったり、日本山岳会北海道支部に所属、NPO雪崩研究会、万計山荘友の会の会員もやっています。
 このフォーラムが立ち上がった当初よく参加した。当初、随分、愛甲先生と上川支庁の担当課長さんを天敵のように噛み付いた記憶があります。それからいろいろな愛甲先生たちの努力で、山のトイレを考える会の方々の気持ちも理解できるようになった。さきほど愛甲先生が10年やってきたことが、どのような成果に結びついているのだろうか、この先何を目指すのだろうかとの話もあったのですけど、継続は力なりかな。当初、天敵のように愛甲先生に噛み付いていましたけど、やはり地道な活動を継続することによって、いろいろなお話を共通のベースでできるようになったと言うことで、これは大変素晴らしいことだと思っている。
 そういった活動をいろいろな形で継続していって欲しいと思っています。携帯トイレの問題で話が出てきていますが、素晴らしい先進事例が利尻である。
 大雪でもそのようなことがあった。今も継続しているのですが、携帯トイレは携帯トイレで素晴らしいものだと思います。もう一つ私は山岳ガイドをやっています。ヨーロッパアルプス、カナデアンロッキー、ニュージランドのミルフォードトラックとか、いろいろな所に北海道の方々を何千人もご案内してまいりました。施設は施設で素晴らしくいい。携帯トイレの重要性も大事だが、もう一つは財政的にこういう時代ですから施設をよくしろと言うのはなかなか難しいと思うのですが、施設もやっぱり充実することへも力点を置いていくことも大事であると私は思う。ですから両面をうまく機能させていくかを考えていく必要があると感じました。

(愛甲)
 今日は、どう行政と連携をとるかがキーワードだったと思います。総会で事業計画を説明したのですが、その中で黒岳のトイレについて、今年、我々も何かお手伝いできることはないかということで、山岳トイレの実証事業に関わる専門家の方とかをお呼びして、黒岳に一緒に登って、みんなで改善検討会をしようというようなことを計画しています。できればそこに行政の方とかも一緒に行ってもらってやりたい。出来てしまったことをどうこうと言うことではなく、何かもっと改善するうまい方法はないか、他の道内のトイレに生かすことができないか、勉強する場を作っていきたいと思います。役所の方も今日、たくさん来ていますけど、うまく実現できればなぁと思っています。最後に岩村代表から締めてもらいます。

(岩村)
 長谷川さんから言われた時、私がすぐ答えるべきだったんでしょうけど、長谷川さんの最初の発言は「山のトイレを考える会はもっとしっかりやれよ」との叱咤激励と受け止めています。私は横須賀から代表を引き継いだ訳ですけど、正直言ってトイレ問題の難しさというのは、当会でもいろいろ人によって考え方の違いがあります。まして山のトイレは一括りに括れない。幌尻山荘のトイレと黒岳のトイレは当然違うのだろうし、まさに愛甲さんが言っていたように、山のいろいろな状況に応じた山の楽しみ方とか使い方を含めてですね。
 山のトイレを考える会として、もっと圧力団体的なものになった方がいいのか、これも議論の分かれるところです。私は圧力団体になったら、この会場にみなさんが来てくれないのではないかと心配しているわけですね。この場で環境省さん、あれだけ署名を出したのにどう答えてくれるのですか、前の会合の時にはちょっとそんな話をしましたけど。私の考え方は、圧力団体になるのではなく一緒にとにかくやって行きましょうと。目標とするのは圧力をかけることではなく、北海道の山をよくするのが私達の目標であって、けっして誰かを問い詰めるとか、そういうこと自体が山のトイレを考える会の役割でないと私は思っています。そういう面で、みなさんから見たら、少し歯がゆく感じられる面もあるかも知れませんけど、是非、そうゆう方向で基本的に、これからも町の方、道の方、国の方、お役人の方含めて、どうしたら北海道の山をよくできるのか一緒に考えてやっていきたいと思います。
 ただ、困るのは、いろいろと投げかけた時に役人言葉で「じゃ、善処しておきます」と言われると、出来ないことなんだなと思うのも困るんですけど。できれば是非、環境省やほかの方からも「実はこんなことを考えているんだよ」と逆にこちらに前もって投げかけてくれれば「あっ、そうか、前に言ったことがちょっと進んでいるんだなぁ」と大変ありがたく思います。
 今日、小林さんがおっしゃっていたキャリアキャパシティですが、非常に示唆に富んだ考え方で、なるほどなと。山のトイレを考える会でも第1回のフォーラムから入山料をとった方がいいのではないか、入山料はある意味でキャリアキャパシティに近いような感覚ですよね。入山料を取るんだったら行かないという人もいると思いますし、勿論、いくらに設定するかによりますけど。
 スイスあたりの話をされていましたが、日本にはなかなか文化の違いというか、歴史の違いがあるので。例えば、今すぐ日本で大雪山に5千人しか登らせないとなると、これもまたロープウェイで人を運んで食べている人とか、地元の旅館の方とか、もしかしたら航空会社の人が北海道観光としては人が少なくなるから困ると言われるだろうし。考え方としては非常になるほどと思うのですけど、なかなか一朝一夕に進む話でないなと思いました。ただ、長い目で見て。もし本当にそういうことが必要だったら今のうちからでも、そういう考え方を打ち出していった方が、すぐにできなくても5年後、10年後には、あたりまえだよねと。入山の制限をするというのは今のうちから北海道でも議論しておく必要があるのかなと。
 結局、山のトイレを考える会、なぜ僕なんかが。やりましょうと言ったと言ったのは、一局集中ですよね。1週間に一人ぐらいしか登らない山で、誰がどこでウンコしようが、紙を捨てようが、問題にならないと私自身は思います。ただ、どうしても集中する山には、特に北海道の場合は、2~3カ月に人がどんと来る。特に百名山中心になるわけですから、そういう面からすると入山制限は一つのやり方かな。ただ、入山料をとる、そのやり方をどうやってするかが非常に難しい問題なのですよね。利尻みたいに登山口が2つしかない所は、もしかするとやり易いかも知れませんけど、大雪みたいにかなりの数になるところもあるし、いいは易し行うは難しで簡単にいかない。ただ本当に必要ならば、今から環境省あたりが音頭をとって議論をやるのも必要かなと思います。

                                      (以上)

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