第12回山のトイレを考えるフォーラムの報告

5.デスカッション

【テーマ】北海道の山岳トイレへの土壌処理適用の可能性

コーディネーター:山のトイレを考える会 愛甲哲也


コーディネーター

 吉田さん、岡城さん、どうもありがとうございました。
 いろいろな話が、土壌処理方式について出てきました。あと1時間ほどおつきあいいただきますが、ディスカッションでは、特に土壌処理方式を中心に、それ以外の話も含めて、みなさんといろいろな話ができればと思っております。
 最初に、なぜ、われわれが今回のフォーラムで、12回目に当たるわけですが、特に土壌処理方式を取り上げて、改めて勉強してみようと思ったかというのは、資料集の33pに、山のトイレを考える会の仲俣さんが書かれた文章が載っています。これを少し、仲俣さんに概略説明していただいて、そこから話を進めていこうと思いますが、仲俣さん。

仲俣善雄(山のトイレを考える会)

 私も山のトイレを考える会に入ってからいろいろな屎尿処理の技術があるなということが解りまして、いつも副代表の小枝が資料集を編集しているのですけれども、その資料集にかなり全国のいろいろな技術の情報が書いてありました。
 それで、美瑛富士の避難小屋のトイレをどういう方式にするとら良いのか、いろいろ考えて、全国の事例を見ながら、私なりには考えていたのです。それで、3年くらいにわたって、資料集にこういうのが良いのではないかと、私自身の素人ながらの提案をしたわけなのです。固液分離して、便はカートリッジに入れて、できるだけ乾燥させる。最終的にはヘリで運ぶわけですけれども、尿は土壌処理する。そういう方式について一昨年、技術セミナーが東京の航空会館であったときに相談コーナーがあったので、岡城先生にお聞きしたのですね。それが、岡城先生とのきっかけというか、最初の出会いだったのですけれども。
 みなさんもご存じのように、黒岳と幌尻山荘にコンポスト型のトイレを導入して、二つともかなり苦戦して、維持管理している人がたいへんな苦労をしているのですけれども、導入検討時に土壌処理方式は検討されたのかなあというのがあります。土壌処理は、さきほども説明ありましたように、冬の閉鎖している期間でも嫌気処理でゆっくり処理しているということです。土地面積は必要なのですけれども、北海道でも適用できるところがあるのではないかなというのが、最初のきっかけなのですね。特に、電気がなくても処理できるというか、そういうことがきちんとしていれば場所によっては適用できるところもあるのではないかと。今回、私自身も疑問点がいっぱいあるので、維持管理について吉田さんが話してくれましたけれども、それと、実際の仕組みというか、そういうのも含めて岡城先生にお願いして、今日、来ていただいたということです。
 北海道でも、避難小屋自体も老朽化してきていますし、トイレも、いま浸透式でやっているわけですけれども、検討するときに、今までの黒岳とか幌尻山荘のそういう反省も踏まえて、土壌処理も一つの選択肢とすべきではないか。「予算がついたから、ハイ、入れます」ではなくて、かなり慎重に検討して、これから北海道のトイレも更改時期が来ると思いますので、その時の検討材料として、土壌処理を選択肢の一つとしてほしいなと、今回勉強したいということでテーマとさせていただきました。

コーディネーター

 それで、この資料を見ていただくと、仲俣さんがいくつか整理して書いていらっしゃるのは、いま土壌処理を北海道でも検討されても良いのではないかというのがあるわけですが、土壌処理方式のメリット。電気がいらない、維持管理が比較的楽である、負荷・変動に比較的強い。ただしデメリットもあって、そこにいくつか書いてあります。
 あと、山岳地の導入実績が意外と多いと。北海道ではないわけですが、全国いろいろな所で導入されている。
 資料集の後ろの方には、小枝さんが最近の全国的な動向をまとめられた原稿も載っていますので、そちらも見ていただければと思いますが、資料集の135p「2010年本州山岳トイレ状況、北海道の展望」ということで、小枝さんが環境省からデータをいただいて、2009年、2010年の山岳トイレの整備状況、これは環境省の補助金をもらったものだけに限定してまとめてありますが、いろいろなタイプが挙げられていますが、この中にも土壌処理方式は、十和田八幡平と中部山岳公園で使っています。逆に、これを見ると、コンポスト式がないですね。  そういうようなこともあって、実証実験も行われて、北海道の避難小屋には適しているのではないかと。さきほど、吉田さんの話にあったように神奈川県では、土壌処理方式の二つのタイプを、一つは、管理人さんというか、山小屋の管理人さんがいらっしゃるところにトイレをつくって、そこはメンテナンスを管理人さんができる状態になっている所に対して、たまに巡回で行くことしかできない避難小屋にも設置をしたという実績はすでにあるわけですが、今、ご覧になったばかりで申し訳ないですけれども、岡城さんと吉田さんに、ここに書いてある仲俣さんの、土壌処理方式のメリットとかデメリット、北海道でも使えるのではないかとか、書かれていることについて、どう思われるか、少し感想を伺ってみたいのですが、岡城さんからお願いしてよろしいでしょうか?

岡城孝雄さん

 充分読んでいないので…。先ほど私の方でお話ししたようなかたちで、土壌というのは生物を使うだけではありませんので、時間的な処理能力は高いわけですので、水量が上がったとしても能力は充分。ただ、当然、冬は使用量が少ないわけですので、そういう点では、寝かしていると同じような状況で、凍結さえしなければ問題はないと思います。
 そういう点と同時に、これも、穂苅さんのところで例を挙げましたけれども、最初から、合わせ処理は止めた方が良いねと、つまり、屎尿を合わせて処理をするというものは、なんらかの形で、さっきのように、ペーパーを長時間かかって分解するような薬品を使ったり、何かを添加していかなくてはなりませんので、わざわざ最初から分かれている物をミックスしないほうが、北海道の場合において、適用するときには良いのではないかなと。ただし、分けるときに、登山者がそれをしっかりやってくれるかどうか、そちらの方の指導をしないと、便器そのものが使えなくなってしまうということもありえるということになりますので、そういう体制を整備しながら、一つのチャレンジとしては、土壌処理をやるけれども、分離をした形の物を提供していくというようなことを考えてもいいのではないかなという気がしております。もう少し読んでみます。

吉田直哉さん

 私は専門家ではないので、素人考えしかできませんけれども、丹沢を、非常に良いことばかり紹介した気がしたのですが、比較検討していないというか、もちろん最初に整備するときに、どの方式が良いかの検討の結果、土壌処理方式になっているはずなのですが、それ以外のオガクズとか牡蠣殻とか、そういうものを一緒にやってみて「こうでした」という結果ではないので、土壌処理がなんとなくうまくいっているように紹介してしまって、バラ色の将来を約束してしまったような、そう捉えられると困るなということと、丹沢と北海道の大きな違いは、冬の気温の差とか積雪の差がぜんぜん違うと思いますね。丹沢は、冬も山頂でもせいぜい−10度とか、最低気温が12、3度位ですね。雪はせいぜい積もって5、60cm位。したがって、1mくらいというかんじで、降っちゃあ融け、降っちゃあ融けを繰り返すのがだいたい基本パターンです。
 登山者も、さっき言いましたように、冬がけっこう多かったりします。明らかに夏よりも冬のほうが多いです。そういう状況の中で、一年中なんとなく割と人がバラバラ来るのです。それはトイレにとっては良い条件なのだろうと思います。そういう意味で、夏のある時期だけ集中するという条件にそのまま適用できるかは自信がないなあ…。
 それは、立山だとかあっちの方でいろいろ例があると思いますが、丹沢の例をそのまま適用はできないかなと思います。

コーディネーター

 岡城さんが言われていた分離する便器の問題は、幌尻山荘でもやりましたよね。目詰まりというか、紙を、本当は尿をしてほしい方にされてしまって、そこが詰まってしまって、洋式のタイプの便器ですけれども、そこに紙が入ってしまって、結局詰まって尿がそこに流れこまずに、結局便器の大便タンクの方に全部一緒に入ってしまっていたということも起きていましたが、丹沢とかなり条件が北海道の山は違うという話でしたけれども、ちょうどうちの会の横須賀さんが 、横須賀さん、いつ行ったのですか?

横須賀邦子(山のトイレを考える会)  2月の末の土曜日、27日です。

コーディネーター

  鍋割に行ったのですね。(鍋割山です)北海道の山をよく知っている横須賀さんなので、そこで見ても、丹沢と北海道の山の違いも踏まえて、感じられたことをおっしゃっていただきたいのですけれども。

横須賀邦子(山のトイレを考える会)

 スライドを見せてもいいですか

コーディネーター

 スライド、使います? いいですよ。

横須賀邦子(山のトイレを考える会)

 たまたま、いろいろな仕事のガイドの下見の山だとか、様々な用事を五つも六つも背負って出かけたのですけれども、私たち山のトイレを考える会の事務局メールというのがあるのですね。そこに仲俣さんがすごく土壌処理について力説されていらして、ぜひこれを学ぼうという雰囲気が持ち上がっていたときに、「現場を見ていないので」という言葉があったのです。
 今回、私、丹沢の近くをずいぶん登ろうと思っていたので、ついでに見てこようということで、物見遊山的です。私も研究者ではないので、小枝さんとか、ちゃんと文章を読んで理解している仲俣さんとは全然違って、データの数を見せられても「なんか解らないやー」という部分も多いのですね。それで登って、どんな物か覗いてきたのです。
 これが<スライド1>山頂にある1272mの鍋割山荘です。この中で、由来の鍋焼きうどんとか、名物なのだそうです。
 これが<スライド2>、その鍋焼きですね。980円でした。ここのオーナーさんの草野さんがちょうど作っていたのですよ。できるだけお昼を外して話そうと思って、私も遅く上がったのですけれども、そのときでも、小屋の中にはもう20名ほどが食べていて、4人、5人と入ってくるのですね。そういう忙しいときに入ってしまってまずかったなあと思ったのですけれども、「じゃあまた、改めて」と言ったら「いいから、いいから」と言って、うどんを作りながら便がどうのこうのという話をしているのです。「ごめんなさい」という感じです。  向こうに見えるのがトイレです<スライド3>。このトイレの右の下の看板の所に、この処理システムがホームページと同じものが貼ってありました。これですね。『トイレ内のアイゼン厳禁』ということで、私は北海道大雪山をガイドするときに、黒岳は1月に行きますと、石室の屋根が、一番てっぺんが屋根でしょう。その屋根がうっすらと見える程度で、壁も傾斜している屋根も全部雪の下なのです。そういう状況の冬しか知らなかったので、「あっ、丹沢はそうだった」と、私も昔、丹沢を40年前に歩いていたので、冬でもアイゼンで歩けるんだなと凄い感心したのですね。これが中に貼ってあるトイレの説明ですね<スライド4>。こういう物を投げちゃだめですよとか、冬眠期間がありますよという話で『公衆便所ご利用のお願い』ということで書いてありました。その次に『チップ50円よろしくお願いします』と書いてあったので、「あー、パリだったら入り口で50円払ってもいいけど、ここだったら500円だなー」なんて思いながら入りました。これがチップ箱<スライド5>で頑丈なステンレス製の。どの位入っているか揺すってみたのですけど、ほとんどなかったです。  これが<スライド6>環境省の技術実証モデルの実施中ですよという貼り紙がしてあって、処理能力が400人。因みに私がこの日に登ったときに、自分で数えたら185人でした。その前の週に「何人くらい来ていたの」と草野さんに聞いたら、「鍋焼きが150個出たから多分250人くらい来ているだろう」と言っていました。これが、トイレ使用上の注意として、三番目に銀のテープが貼って修正してあるのが、『使用済みトイレットペーパーは各自お持ち帰りください』と書いてあるのですね。この絵、しつこく書いてあります。これが中に入って座った状態で、トイレットペーパーを回す前に、『便器には捨てずに各自お持ち帰りください』というところで、私も踏みとどまって持って帰って来たのですけれども。その上にガムテープで『紙を流すな!!』と、感嘆符が二つ付いて、その隣に『使用済みの紙はビニール袋に入れて自分で必ず持って帰ること』と。全部で5箇所に書いてありました。便器に座って5箇所に書いてあるのです。ここにも、外側のところにも神奈川県の看板で『必ず紙を持ち帰ってください』『チップ入れてください』と。どうしてこんなことをやるのかと。バクテリアが働いていて長い時間をかけて屎尿を分解するんだよと。紙やゴミを入れると分解が進まないのだよということが書いてあるのですね。でも、きっと、こういうのを読んでも、その場を離れると、頭に残らないなというかんじがしました。すみません。
 これが<スライド7>トイレの下、私、ずっと下まで柵の周りを歩いてみたのですけれども標高差、だいたい12、3mくらいですかね。初めの方が平らで、このロープの部分側は急激に斜度が増しています。左側のところが、大雨が降ったりすると、オーバーフローして、茶色の濃い水が流れ出ると言っていました。「どうしてなの?」と聞いたら、要するにトレンチに入らない部分が、濃縮された塩分が底に貯まっているのだと、それが大雨がたくさん降って、流すことに間に合わなくなると、あのマンホールの間から染み出てきて、茶色い汁がその辺に散らばって流れるのだと。登山者は、それをとっても気にして「どうなってるんだ、これ」と、「汚いじゃないか」ということを話すのだそうです。ある科学者もこれを指摘して、これはダメだということを言っていらっしゃることもあるようなのですけれど、「草野さんはどう思うの?」と聞いたら、「あんた、どう思う?」と言われて、「その成分を聞いてみないと私もわからない」と言ったら、「俺はそのぐらい大丈夫だと思うよ」と、ただ色が着いているから、やっぱり見た人はショックだろうなということをおっしゃっていました。  それで、だいたいこんなところなのですけれど。ここの鍋割山荘は1,000mの上にありますけれども、全然水が無いところなのです。ですから、このバイオトイレ、土壌処理システムで洗浄水がもう一回回収できて流せるということは非常に喜んでいます。水が無いから、これは助かるんだわと。でも、私、「羊蹄で、もしかしたら土壌処理のトイレを使用するとしたらどう思います?」と、羊蹄山で小屋ができるとか、できないとか、いま検討しているようですけれども、「土壌処理、使えると思いますか?」と聞いたら、オーナーさんのその感触です。これは感触ですから、オーナーさんが全国各地のバイオトイレを見て歩いたわけではありませんが、感触として「北海道の山は、2,000mで3,000mの気象条件だと無理じゃないか」ということを一言。詳しいデータは全然知らないお互い同士ですけれども、やっぱり感触的に気候条件で土壌処理ができるとは思わないということをおっしゃっていたのが印象的でした。
 洗浄水がたくさん取れるというのは、非常に良いという喜び方をされていて、助かるんだよということは力説されていらっしゃいました。その水が取れないので、これは登山口に置いてある看板で<スライド8>、ペットボトルに水を入れて用意しています。これ沢の水ではないので、ボランティアさんたちが登るときに、いくつでもいいので運んできていただけると助かりますということで、川のすぐ傍の登山口に、これが何本か置いてあります。実際にこれ、山小屋の中です<スライド9>。上がってきたところで、こういうふうにザックから5、6本と出して、「ボッカ訓練終わったわ」と言って置いていってくれるボランティアさんがたくさんいらっしゃいました。私、1時間の取材の中で、なんと15人の方がこうやって一つのザックから5、6本出して置いていくのです。素晴らしい協力だなと思いました。
 これが草野さんです<スライド10>。「写真撮ってもいいですか?」と言ったら、「うん」と、目をつぶっちゃったのですけれど。鍋焼きうどんは1時半頃でしたかね。次から次と作りながら、処理槽の話だ、茶色く濁った水の話をしてくれまして、どうも本当に感謝しますというかんじで帰ってきました。
 これが丹沢の鍋割山の地図なのですけれども、鍋割の頂上、一番上です、青い旗が立っているところ<スライド11>。このへんのコンタは拡大してみないとわからないと思うのですけれど、結構、山稜は急峻なのです。それで山稜の細いところに階段みたいなのがついていて、それをトコトコ上がっていくと、ほぼ2時間くらいで階段が終わるのです。林道が1時間半ありますので、全部をやると、標準で3時間半、私の足で全部で2時間半歩きました。
 山頂部分が急に平らになるのです。それが鍋割の由来だとかという説もありますけれども、やっぱり上は草が生えていて、本当にここだったら家が一軒建ちそうだなというくらい広いです。その草の所には、木がほとんど、いまはないです。もしかしたら切っちゃたのかもしれませんけれども、こんな感じで細い木が何本か立っていて<スライド12>、このロープの中には入ってはいけないのですけれど、スゲ類の高さ、夏だったら40cmくらいになるようなスゲ類が繁茂しています。
 ここにはないのですけれども、鹿類がすごく多かったです。私がこの写真を撮っている間に鹿がなんと15頭も現れました。木の向こうで隠れながらスゲを食べているのですけれども、この鹿はたぶん、きれいにこう芝生のようになったところを、夜だったならば、きっとここで座り込んで食べるだろうなというような予想ができました。ですから土壌処理を覆うような草が、そのままそこに繁茂して、それをまた好んで鹿がくるというようなことで、ちょっとこれは将来的にどうなんだろうなという心配が浮かびました。
 それから、あとはちょっと心配だったなと思ったのは、やっぱりこっちでは雪がすごく多いです。美瑛富士の避難小屋あたり、結構な雪の量です。ちょうど雪がたまるところなのです。こういう状況のところにありますから、普通の風が吹きとおしなのですけれども、北海道の美瑛富士のあたりは、やっぱり少し雪がたまります。そうすると、雪の重みというのが、どのくらいかかるのか、かなり違ってくるのではないかというふうに思っています。
 今は、私の希望は、北アルプスの方にある、穂苅さんの小屋の土壌処理システムを見てみたいものだというふうに思います。
 この程度の報告しかないのですけれども、私も直感的には、やっぱり土壌処理も一つ、検討課題ではあるけれども、場所をかなり選ぶという感覚があります。
 長野県にあります、7月の1週間の登山口の利用者数6万人です。1週間で6万人、去年北海道から発表されました、ツアー登山の動態調査ですね、あれをもって調べると、7・8・9月で大雪山は3カ月で7,2000人でした。1週間で6万人のところと3カ月で7,2000人のところを考えれば、その利用比率から考えても、ここの鍋割山荘は4,500万円かかっているという話です。
 ヘリでユンボを上げて、土壌を全部上げて、そしてトレンチを掘って、マスを埋めて、全部終わるのに100回、ヘリコプターが行き来したのだそうです。
 そういうことからして、もう一つ、オーナーさんがちょっと気になると言ったのが、今年か来年中にやらなければならないのが、フィルターの掃除だそうです。便層の所に紙をひっかけるフィルターがあって、それを通過して水だけになった状態でトレンチに流れていくのだそうですけれども、やっぱり「紙をなげるな」と書いてあっても、紙をなげる人が多くて、もう目詰まりをおこしているそうです。「便層を全部開けてやんなきゃなんないのだよ、それが大変なんだよ、いつやるか考えてるんだけどね」というようなお話をしていました。  ですから、4,500万円をかけて、いまいろいろな土壌処理に挑戦して改良して使えるようになれば、これは儲けものだなというふうに思います。けれども、では登山人口の少ない北海道で、何千万円もかけて土壌処理を施す必要があるのかなと。それならば、2、3年か5年、それとも少ないところで10年に一回、ヘリを飛ばして下ろす方が効率的なのではないかというふうに感じているところが率直なところです。

コーディネーター

 はい、横須賀さんありがとうございました。
 場所とかは、かなり選ぶのではないかな、環境条件が厳しいのではないかということとか、コストのこととか、メンテナンスのこともありましたが、吉田さん、何か補足、ありませんか? 横須賀さんの話で、何か補足ができればしていただければと思います。

吉田直哉さん

 補足ではないですけれども、値段の4,500万円はたぶん草野さんの勘違いで、私の記憶でしゃべりますけれど、3,500万円とか、それ位だと思います。4500万円だと、塔ノ岳よりもかかってしまうので、そんなにいく訳はないです。

コーディネーター

 3500万円でヘリの経費はどのくらいですか?

吉田直哉さん

 設計書を見ないと…。そうですね、400万円とか500万円とか、その位の金額になりますか。

コーディネーター

 北海道の場合、多分ヘリを飛ばすこと自体かなりお金がかかるでしょうけど、今の話と仲俣さんとか我々が持っている疑問に、北海道では、オガクズのコンポストトイレが二箇所でやっていて、土壌処理はまだやっていないですけれど、そういう他の方式と比較してみたときの土壌処理のメリット、デメリットみたいなのを、少しうかがいたいです。

岡城孝雄さん

 まず、オガクズトイレという部分で、よくバイオトイレと言いますけれども、バイオ、バイオと言い過ぎでして、例えば富士山で静岡県側は、ほとんどそれを入れているのですが、実態調査をしてみると、富士山は気温が低いですので、大変反応が進みません。そのためにヒーターを入れております。そのヒーターによって水分を蒸発させているというのが実態でして、結果的にアンモニアも、水分と一緒にどんどん飛んでいっているという状況がございます。
 ですから一番ピークの時に行っていただきますと、流れてくる空気中にアンモニアが、その周りに行きますと、目がショボショボするぐらい、そんな状況が実態です。
 中に溜まった物がコンポストというふうにいうものですから、先程のように水分は飛んでいきます。しかし塩分は残ります。したがって、高濃度の塩分を実際に、それを水に溶いてみますと、その中の水分の塩分濃度というのは、海水よりも高くなります。ですから、もしこれをコンポストとして田畑に使ったら、完全に食害だよという、そういうことで、静岡県の方には、これは産廃でもなんでも処分しないと、コンポストとしては使えないよというような話もしたりしているところでして、エネルギーをかけて、それをとにかく水分を飛ばすのだというくらいのつもりだったら、まぁ使えるかなというふうに思いますけれども、コンポストとして使うつもりでは、それはいけませんというふうにいえるかなと思っております。
 そういう意味で先程の土壌処理という観点につきましては、鍋割の方は、まだ、し尿を分離している訳ではございませんので、そういう点で先程のリュース部(?)におけるフィルターの目詰まりという分については、これも必然的に起きることですので、そういう点を考慮して便器から考えるかなと、ただし相当の指導をしないと、つい先程の話に戻ってしまうことにもなってきまので。  あと入っているのは何でしたか? バイオトイレと北海道には…?

コーディネーター

 北海道はバイオトイレ(コンポスト型)ですね。あとは浸透のそれしかないです。

岡城孝雄さん

 バイオトイレも、北海道は研究室として船水先生も言っておられますけども、一般家庭で使って、そして小さい規模でやる分に関しては問題ないのですが、山岳のように大量の人がいっぺんに使うと、そういう状況なったときに、やっぱり水分だけ、これを別にした方がいいですね。水分は別にして、バイオトイレの中に醗酵させるための、あまり水分が入りすぎますと、これはもう熱をかけませんと飛びませんので、ウンチとかそれを主体になってやれば、当然醗酵して菌も死んでくれるというメリットはあるかと思うのですが、そこも最初から一旦分離して、おしっこを溜めて、それから少しずつ処理するとかいうようなピーク対応をしないと、なかなか難しいのではないかなというふうに思いますけども。

コーディネーター

 穂刈さんのところで、分けてオガクズのやつを作ったときに、分離させて、尿の方だけ土壌処理をするというのを一個、やっていらっしゃいますよね。あれはどうなのですか?

岡城孝雄さん

 その段階であれば、土壌の方の目詰まりというのは、さっきのような固形物が少ないということもあるので、そういうメリットがありますよということなのですね。
 あとは、処理水をどこまで期待するか。今回の場合には一応、ある程度処理をしますよと、ともに何段かに槽を分ければいいと思っているのですよ。そして土壌処理のメリットを出すためには、最初の槽、2槽目、3槽目と、そこに使う材料を考えながらやっていただいた方がよろしいのではないかというふうに思っておりますけれども。

コーディネーター
 北海道の場合、高さと雪の重みという問題があって、そういう特徴があって、いまあるバイオトイレが、残念ながら黒岳と幌尻では数が元々少なかったということもあって、うまく動いていないということもあるわけですが、仲俣さんは前、美瑛はもっと人が少ないから、便は溜めといて、運んで、尿だけ土壌処理すればいいのではないかという案を、美瑛富士でやったらどうだと言っていましたよね。あれは今はどういうふうに?

仲俣善雄(山のトイレを考える会)

 美瑛富士の場合は、かなり登山者が他と比べると少ないと思ったので。それと、し尿を分離すると尿だけだとかなり土壌の面積も少なくていいのかなというのがあります。船水先生の話も聞いて、できるだけ便を乾燥させれば長持ちすると、10年に一回ぐらいカードリッジを運ぶだけでいいのではないかなということで、ああいうふうになったわけです。けれども、なかなかなんでも難しいですね。そういう感想です。

コーディネーター

 あと私、先程ちょっと窺っていて、人の数もそうですし、横須賀さんのやつでは、温度的なこととか、雪の重みとか、岡城さんも言われていましたし、事前にちゃんと調査をやっておくことというのが、かなり大事なのではないかという気もするのですけれど、神奈川で土壌処理の方をやられるときは、そういう調査というのはかなりやられたのですかね。

吉田直哉さん

 残念ながら、私も調査をしたときに関わっていないのではっきりわからないのですけれど、そんなに大げさに調査をしたような形跡はない気がします。通常の建築の設計委託する中で処理方式の検討みたいなのがあって、私が関わった頃にはすでにもう、第1号、第2号、第3号ぐらいまでできていたときなので、もう始めから土壌処理方式ありきで、一応比較検討しましたと、○×△いう比較表が載っている程度の比較検討しかしていないです。

コーディネーター

 人数はかなり正確に分かるようになっていますから、先程、登山者の数が出ていましたけれど、あれはどういうふうにして推計をなさっているのか。

吉田直哉さん

 あれは一番ピークの5月の連休の、しかもすごい晴天だった日なのですけれど、各山頂にボランティアの人々が散りまして、ひたすらカウントしたのですけれど。それと年間通じてかなり正確に統計が取れているビジターセンターがあるので、そこの年間の変動データとピーク時のもの、過去何回か日を決めて一斉調査をしておりますけれど、そのへんのデータを使いながら推定をした数字です。

 ただ、それは調査をやったのは、まだ5年ぐらい前ですから、最初のトイレを作る段階なんかよりは、もっと後の話ですので、最初はあんなデータです。

コーディネーター

 山小屋というのは結構、分かっているわけですよね、泊まっていらっしゃる方の数は。

吉田直哉さん

 宿泊者数は正確に分かります。

コーディネーター

 岡城さんにもうちょっと伺いたいのですけれど、調査という意味で、土壌処理方式をやるときに、事前にこういうことはちゃんと調べとかなければいけないよというのには、どんな項目があるのかというのを教えていただきたいのですけれども。

岡城孝雄さん

 共通事項は、土壌処理に限らず、どんなトイレを使うにしても、利用人数というのは絶対条件だと思いますので、土壌にするといった段階で、水が使えるのか、電気があるのかなどなどの設置条件というものが絡んでくるかなというふうに思います。
 土壌処理をしようと思ったときには、先程の面積がとれるのか、そしてその面積に土壌浸透するための土があるのかないのか、もし無い場合は当然下から、その目的を持った土を上に運ばなければなりませんので、そういう材料の選定からなにから全てやっていかなければならないと。
 TSSとリンフォースの場合の違いというのは、消化槽です。TSSさんは一つの架空の物(?)をもっておりまして、それをヘリで積み上げても、上に運ぶだけというようなスタイルも、たしかもっていたと思うのですが、ヘリと運搬の条件、そういうものも含めた形。
 あとは地域条件として、そこが沢に近いとか、そういったことも含めて、どちらの方に浸透、先程のように浸透する雨水調整槽、それの水はどこに行くのかというところの入口出口の関係もしっかりみておかないといけないなあというように思いますけれども。ざっとそういう部分で、置く場所の状況確認はしておく必要はあるだろうなあと、加えれば、先程の積雪の問題と降雨量の問題、そういったところが施設的に必要になってくるだろうなあと。
 これを見ていると、傾斜の方向と逆の水の流れを作っているということが最初からあるのですね。それも間違いではないの? というところもありますので、その設置面積に対して入り口出口の角度関係も見ておく必要があるだろうなあと思います。

コーディネーター

 あと、北海道の人が気にしているのは、気温なのですよ。丹沢は千何百メートルでしたっけ。さっきの一ノ越は2700ぐらいですよね。大雪山で一番高い所は2500ですけれども、黒岳のトイレのあるところが1984だから、小屋のあるあたりは1850くらいですか。羊蹄が避難小屋のある場所は何メートルくらいでしたっけ。1700、山が1900くらい。ですよね、北海道のです。それで気温の影響というのはどの程度あるのか? 逆にあんまり気にしなくていいのか、どうなのでしょうか?

岡城孝雄さん

 気温の影響は当然あるわけでして、先ほど申し上げた話で、土壌の部分はもし上が積雪がなかったら確実に凍ります。そういう点では、積雪が十分ある地域であれば、多分間違いなく問題ないのではないかなと。ただ小屋に積雪があっても小屋のサイドは雪がない。その雪がないところに風がぶち当たりますと、その中も冷え込んで、その下の便槽の下の槽、そこが凍ってしまう。それが土壌浸透槽の部分については積雪で守られていますが、小屋の下の便槽の消化槽ですね、そのへんが意外と凍るのですね。それらの部分はこちら側にちょっと被いなど必要なのかなと。処理槽をくみ上げるために足踏みしますけれど、一旦処理して溜めるところ、濃度が薄いものですから余計に凍りやすいというのがありまして、そこもやはり一番風のぶち当たるところがありまして、そこが氷20cmくらい凍ります。使う春先になってから、そこは一旦溶かした形で、使用開始したというところはございます。

コーディネーター

 今のは一の越?

岡城孝雄さん

 そうです。

吉田直哉さん

 丹沢でも冬は循環させるのは諦めていまして、冬は凍結でどうしても機械が壊れますので、冬に関しては水を流しません。それは北海道でも、絶対無理だと思います。

コーディネーター

 私は昨年3月くらいに、鍋割山荘に行ったのですけれど、草野さんはストーブを焚いていたのですよね。真ん中の男女分かれる所の部屋で、あれは…。

吉田直哉さん

 鍋割だけ例外で、加温することで流れるように最初から仕組みを作っておいて、鍋割だけ例外で水が流れるのですけれども、あとのところは止めてあるのです。

コーディネーター

 冬使うかどうかということと気温ですね。いま聴いていて、ちょっと思ったのですけれど、横須賀さん、吹き溜まりができないような風衝地の、元々草原だとか、はい松が植生でないような吹き溜まりができないような場所に土壌の浸透槽を作ると、ひょっとしたら上の雪の厚さがかなり薄いので、凍結をするかもしれないということがありますよね。

横須賀邦子(山のトイレを考える会)

 風衝地ではほとんど表面に斑状の5cmくらいの雪があって、風衝地では真冬でもアイゼンを履いていってもジャリジャリの石がくっついてきてどうしょうもないくらいのところが結構あるのです。雪が深いところでも足首ぐらいしかなくて、縞状に全くない部分があるので、多分、表面の温度は−17℃から20℃以下になるだろうと思います。雪があれば本当0℃ですね。私も高山植物の温暖化のことで基礎データを収集していまして、10年間1時間に一回の割合で、ジット・ピット(?)という気温計を据えて、地表面の温度を測り続けているのですが、やはり、表面に雪がありますと、0℃を保ちます。ですからかえって雪があった方がいいと思うのですけれど、その雪の量が多すぎて、今度、圧力としてはどうなのだろうというふうに考えられます。

コーディネーター

 そういう意味では、丹沢よりも岩手県の方がちょっとまだ少し近かったりする訳ですけれど、岩手県はトイレ設置される時に気象条件とか、そういうデータを取ったりとかというのはどういうふうにされていますか?

岩手県の方

 私どもは技術の設備担当と他の担当がこの場には来ているものですからあれですが、山小屋については山小屋の管理人が冬期間は不在になりますし、冬期間の使用については、県道が通行止めになると言うことで、管理上も県の方では冬期間は行っていないという状況です。

コーディネーター

 ありがとうございます。もうひとつ、岡城さんに聴きたいことがあって、今のそういう条件的なこととか、設計的なことも含めて、黒岳と幌尻の話を聞いたときに、正直言って思ったことなのですけれど、メーカーが言っている技術的なことと、現地がもっている山岳地特有の条件みたいなものの両方をきちんと判断して、そこでは、こういう設計がいいのではないかというようなことをコンサルタントできるような技術者というか、技術者と技術者の中間に立てるような役割を果たせるような人というか、会社というか、そういう存在はいるのですかね?

岡城孝雄さん

 正直言って、それを目的に山のエコーに少し頑張ったらと言っておりまして、そういう窓口として、いろいろな情報を、これまでの蓄積したものもございますし、委員の中には設計に長けている方もおられますし、技術的な、専門的なことは私どもがフォローはいたしますし、そのあとの維持管理については、吉田さんにフォローしていただけますので、是非、山のエコーを少し活用していただければ、費用は相談にのるつもりでおりますので、無料相談でいいと思いますので、そういう形で何とかしたいんだということであれば、是非そういう形をとってやっていただければと思います。
 お金がある県では、たとえば和歌山県では、とりあえず整備するときに委員会を立ち上げまして、その委員会で、私も委員に入って、整理をして、各メーカーさんにもいろいろと発表していただいて、点数付けをやっているのは、そういう選定をしたのはありますけれども、北海道は特に条件が非常に難しい部分がありますので、まず条件をしっかり整備していただいて、その設置現場の条件と、あとは処理方式の選定から設置条件も含めて、なにかそういうワーキングでやるのがいいのではないのかなという気がいたしますので、気軽にご相談いただいてから…。

コーディネーター

 その和歌山県は、要はプロポーザルをやり入札をすると、なるほど判りました。そういうのは是非、やっぱり必要ですね。かなりいろいろと、考えなければならないことが多いと思うので、判りました。
 他に会場から、もし何かここで聴いておきたいことがありましたら、植田さん、お願いします。

植田さん(日本山岳会北海道支部)

 日本山岳会の植田と申します。トイレのことに関しましては全く素人ですので、そのへんはお許しをいただきたいと思いますが、3月2日の日に黒岳の標高1900mのところで、雪質の断面観察を行いました。その日の朝の気温は−15℃です。そうしますと黒岳の9合目で1900mのところで断面観察をしたときの積雪が3m80です。観察をし始めましたのは10時頃ですから、ちょうど日が当たって、気温が上がってきたときなのですけれども、雪の層の中の雪温をずっと測っていたのですけれども、一番高いところで−8℃くらいでした。寒気が雪の中に閉じこもっているせいなのか、あまり気温の変動がありませんでしたけれども、だいたい−8℃くらい。それは上から2m掘り下げたところでだいたい−8℃ですね。今の時期の大雪山のたぶん平均的な条件かなと思います。
 それから私、丹沢はよく冬、行きます。鍋割も尊仏もよく行くのですけれども、尊仏のハナダテさんはいまのトイレになって大変に登山者にも喜んでいただいているということで高い評価をしておりますが、彼と酒を飲みながらいろいろ話をします。その尊仏のハナダテさんは黒岳のトイレのこともよく知っているということで、北海道でどうだろうかという話を聞くと、気象条件的にどうなんだろうねというお話はいつも彼はしております。
 それから雲取になども冬によく行きますけれども、あそこのトイレも水洗でたいへん素晴らしいなと思うのですが、電気を使えていて、あそこは確か大変あったかいのです、トイレの中が。ですから十分電気で暖めて、バクテリアを分解させているのかなというふうに思いますけれども、そんな感じでした。やっぱり条件的には関東周辺の山と大雪山は、ちょっと違うのかなというふうに感じていますので、みなさんご存知と思いますが、お話しさせていただきました。以上です。

コーディネーター

 ありがとうございます。そういう点でかなり条件が違うので、土壌処理をやるならきっちりと調査をやらなければいけないし、それなりのたぶん、設計をしなければいけないことになるのだと思いますね。ありがとうございます。

会場から(女性)

 私も全く分からないですけれど、私なりのちょっと奇抜な考え方があるのです、山のトイレに対する。それで吉田先生にお聞きしたいのは、字幕の最後のところに、携帯トイレ利用の選択肢もあると、先生、書かれておりましたね。そのことについて、もっと先生の基本的なお考えを深くお聞きしたいということと、それから岩手の方が何カ月間かトイレを閉鎖して携帯トイレだけでしたと。そのときの実態とか問題点もお聞きしたいと思います。

吉田直哉さん

 携帯トイレを使った取り組みの説明は、もうご存知ですよね。携帯トイレというのはどういうもので、それを使うということはどういうことなのかということはご存知でよろしいですよね。
 例えば、先ほど和歌山県の例でいろいろな業者に提案をさせて、検討委員を決めて比較をしてみたという話がありましたけれども、例えば、そういうのと携帯トイレを使った取り組みというのは、全く異質な取り組みなので、なかなか同じ土俵で検討しづらいと思うのです。  根本的にちゃんと施設を作って、そこでし尿を処理させるのだという方針でいくのか、それとも携帯トイレ方式でいこうとするのかを、まず決めなくてもいいのかもしれないですけれど、ちゃんと携帯トイレを使ったやり方というのも比較の対象として考えないと、どうしても技術の話と技術ばっかりでいってしまうので、そういうこともありだということも念頭において検討してくださいという意味で書きました。
 携帯トイレの取り組みは、私なんかよりも利尻の岡田さんが。

コーディネーター

 その前に岩手の携帯トイレについて。お願いします。

岩手県の方

 先ほどの説明、ちょっと支離滅裂になってしまったところがあると思いますが、岩手早池峰山では、山頂の避難小屋ですけれども、こちらの方がいまトイレブース、3ブースございまして、そのうちの2ブースを携帯トイレ用のブースとしております。1ブースを汲み取り式のトイレとして従前から残しておりまして、携帯トイレの専用化というところについては、その残り1ブースについて最終的に閉ざしてしまって、全て山頂においては携帯トイレを使用していただくということが即専用化に移行できるかどうかという取り組みをしてきておりまして、これまで元々山頂のトイレというのは地下浸透式、古くは地下浸透式でスタートしていって、それから県の方でも平成6年あたりに大腸菌の発生ということで、沢水の方からそういった検出がされたということで、騒がれたのを期に地元のボランティアの方々が1993年あたりから、ずっと担ぎ下ろしを、では自分たちがやろうということを申し出てくださいまして、今年度まで回数もあれですが、ずっと17年、18年くらいですか、続けて、これまでトータルで2,100人を超える方々、そして8,500キロに近い量の担ぎ下ろしをずっと続けてきてくださっているという背景があります。
 先ほどもちょっと触れましたように、山頂のいろいろ、ハイテクといいますか、土壌処理とかバイオ式とかいうところの建設についても並行して検討を重ねてきて、そういったものを作るのが困難であるということを一つの方向性として、地元、各関係団体とそれらを確認してきたうえで、取り組みとして携帯トイレの吸水シートということで、そこについてもご利用いただく方々、利用者のアンケートなどをとって、それらを総合的に考えていこうという取り組みをいま3カ年の計画で行っているところですが、22年度につきましては、アンケート項目も7、8項目設定しておりますけれども、ある程度の理解をいただいておりまして、今後携帯トイレを使ってもいいというご回答が87%に上っているということで、ただ一方では、地元の方で携帯トイレ化ということがあまりにも先行してしまうと、来る方が減るのではないかというふうなところなども地元の方で、ちょっと観光資源的なところで考えている市町村さんなんかでは、ちょっとそういったところを懸念する声などもまだありますので、トータルとして、私どもは公園管理という立場ですが、どういう山として利用していただく、どういうふうなところまではフォローしていくことを、全体としていま、そういった保全対策事業の推進協議会として話をして取り組みを進めているところです。

コーディネーター

 ありがとうございました。携帯トイレの話が出たので、岡田さんにちょっとふってもいいですか? 携帯トイレのことも含めて利尻の昨年というか、今年度の状況を原稿も書いてくださっていますけれど、ちょっとご報告いただければと思います。

岡田さん(環境省稚内自然保護官事務所)

 こんにちは。利尻の環境省アクティブレンジャーをやっております岡田と申します。利尻での携帯トイレの取り組みは、この前回の昨年のこのフォーラムでもお話しさせていただきましたけれども、利尻山、日本で一番携帯トイレが進んだ山と言われていますけれども、実際にその携帯トイレの利用者数は、使用済みの回収数から計っているのですけれども、それとアンケート等を含めても60%ぐらいというのが実態なのです。
 ですから、日本一と言えども40%、30%は利用していないというのが実際です。それと、利尻でこれだけ携帯トイレが普及したというのは、一つに、島ですから出入り口が限られている、フェリーと船しかない。そこで携帯トイレを島内の全宿泊施設で売っているのですけれども、登山者を管理しやすいという環境が、地理的なメリットが、利尻に携帯トイレを普及させている原因と考えられているのですけども、それを、例えば大雪山だとか丹沢のような出入口が広範囲にわたっているようなところに、そのまま持っていくというのはなかなか難しいのかなと思います。
 また、携帯トイレを普及させるためにひとつ重要なのは、トイレブースというのがあるのですけれども、トイレブースというのは技術的な問題は何もありません。携帯トイレをただ乗せるだけの台というわけですから、ただし、携帯トイレといえども、携帯トイレを知らない人が間違えてし尿をしてしまう場合がありまして、そういったものを定期的に清掃しないといけないのですね。ということは、それなりの維持管理がかかるということ。
 それと携帯トイレがどういったものかということの普及啓発というのは、土壌処理方式だとかその他の方式と同じく必要になってくるのかなと思います。

コーディネーター

 ありがとうございます。かなり少なかったですね、登山者数も。

岡田さん(環境省稚内自然保護官事務所)

 今年に関しては、登山者数が昨年比で25%減ということになっています。ちなみに利尻山の登山者数というのは、登山の日に赤外線式の登山者カウンターというので調べていまして、その機械的なデータということになります。減った数のうち、これはまだ分析中なのですけれども、25%減ったうち、その多くが、ツアー登山が減っているのです。携帯トイレが当初、もう11年目になりますけれども利尻では、その事業開始して。その普及した大きな理由として、ツアー登山のガイドさんが勧めてくれたということがあります。
 ツアーですから、ガイドさんが言えばツアー全体が買うわけですね。利尻山というのは10,000人のうちの1,500人くらいだから15%くらいが、ツアー登山者数と登山チェック計画書の中からみられているのですけれども、そのうちの1,500人が使うわけですから相当な割合になるのですよ。それが減ったというのが、ページでいうと、資料集の40ページです。今年の回収数、回収率が書いてあるのですけれど、これがその減った理由になっているのかなと思っています。
 逆に言えば、知床のような、これから携帯トイレを普及させていくような地域にとっては、ツアー登山ガイドさんの協力をとりつけるというのは携帯トイレを普及させる一つの大きな要因になるのではないかなというふうに思っております。

コーディネーター

 ありがとうございます。登山者数が減っているのが、まさか携帯トイレのせいだったなんていうことになると、先ほど、それこそ早池峰で心配されているようなことが起きるので、まさかそんなことはないよなとは思ったのですが。

岡田さん(環境省稚内自然保護官事務所)

 早池峰の方もおっしゃられたのですけれども、利尻では携帯トイレを島内の全宿泊施設で売っていて、売り上げも島内の宿泊施設で売られている物というのが全売り上げのうちの60%ぐらいを占めるのです。これは宿泊施設が全て、携帯トイレの販売に協力してくれているからなのですけれども。登山者の敬遠というのはなくて、逆に評価が高いというのが、宿泊調査から聞く登山者の声、実態であって、私の知る限り批判的なことはきかれていません。

横須賀邦子(山のトイレを考える会)

 すみません、利尻のツアー登山が減ったというのは、やっぱりオーバーユースがはっきりとこの10年間あったのです。6月のある登山口、朝4時の時点で250名くらいの登山者が数珠つなぎになって登っていきました。一つひとつのチームは、5人から15人くらいまでいろいろなのですけれども、そうやって朝4時のうちにいくつものチームが、一気に同じ時間に登って帰ってくるというのを6月中30日間も、30日間ではないな、6月の初旬は元々来ませんから、15日過ぎから月末までの15日間ですごい数が登ります。
 そういうのを10年間繰り返して、今では利尻山は、それぞれ個人で来ても登れるというふうな感覚が結構広がったなという感じがしています。私のガイドするお客さんたちも大雪山にいらしたときに、次は利尻に行くんだという人がいて、個人的に行ったほうがいいみたいだから、ゆっくり天気がいい時を狙って、何日か滞留したいという。だからツアーになると、決まった日に帰らなければならないからもったいないし、ということは、すごく多く聞かれるようになりました。
 携帯トイレのために人気が下がっているよりも、「利尻島は携帯トイレ」ということが合言葉みたいになっていて、それが負担に感じる方は感覚ではいないような気がします。

コーディネーター

 ありがとうございます。同じように利尻の登山者数とか、携帯トイレのことは、資料集で37ページに書いて、佐藤さんと岡田さんで報告をしていただいています。同じように携帯トイレについては、20年度から携帯トイレの使用を呼びかけている羅臼岳があるのですが、その状況については環境省の宇登呂の中村さんが書かれた原稿が47ページのところに。これをちょっと見ていただくと、逆に、こちらは実はあんまり伸びていなくて、ただまだ3年目なので、利尻は11年もやっているわけですが、そこで出てきた問題が、やっぱりブースがあればいいのにという声だったのです。私も一年目、二年目はこの意識調査に協力をして一緒にやったわけですが、ブースがないので携帯トイレを使おうと思っても使えないとか、結構な人は利尻に行ったときに買ったとか、タダで配っている時期に貰ったとかといって持っている。最近は結構、山に携帯トイレを持っていらっしゃる方がいらっしゃるのですが、実際に知床に来て使ってみようと思ったら使えなかったということで、試験的に昨年、一昨年はブースを設置してみて、使ってもらおうという検討をやって、まだ正式に、最終的に決まったかどうかまでは聞いていませんが、来年度、できればブースを増設する方向でいま検討を進めているというふうに聞いています。
 もう少し時間を延ばして、みなさんのお話も聞きたいのですが、携帯トイレにしても、携帯トイレの方に話がいってしまいましたけれど、携帯トイレにしても土壌処理方式のトイレにしても、土壌処理の場合は、特に紙を入れない方がいいと。紙を回収して持って帰ってもらえるように丹沢ではお願いをしているという話がありましたので、どっちにしろ登山者が携帯トイレでも紙の持ち帰りでも、協力しないと、メンテナンスとかの部分でいろいろ問題が起きたり、制度自体がうまく動かなかったりというのが出てきますよね。
 吉田さんにもうちょっと聞きたいのは、その紙をいまどのくらいの方がちゃんと持ち帰ったりされているかというのと、もうちょっともっといっぱい紙を持ち帰ってもらうためにはどんな工夫を、これからしていこうかというふうにお考えか、聞きたいのですけれど。

吉田直哉さん

 どのくらいの方が持ち帰っているかというのは全然わかりません。いい加減なことを言ってもあれなんで、わかりません。すみません。  ただ、やっぱりでは観察をしていって、トイレから出てくる人がそういう紙を入れた袋か、なんかを持っているかなというのを見ていると、持っている人もいますけど、持っていない人の方が多い感じがします。
 それをどう工夫するかということに関しては、いまいっぱいトイレの中に、先ほど写真で鍋割山の紹介をしていただきましたけれど、ああやって、しつこく書くのは、ある意味いいのですけれど、ちょっとやりすぎかなという感もすることもあって、何か手書きっぽいチラシが貼ってあるような写真がありましたね、かわいらしいイラストが描いてあって。例えばあれは職員の手書きなのですけれど、力作なのですけれど、結構、いろいろな細かいことがいっぱい書いてあって、先ほどおっしゃっていましたけれど、では一個一個丁寧に読んでくれるかなというと、なかなかあれ全部読んでくれる人はいないだろうなと思っていて、もうちょっとシンプルに、やっぱり紙を持ち帰ってほしい、それはなぜならこういう理由です、ということを書いたものをもう一回整理しなおそうかなということはいま考えています。  山頂にはこういう看板、トイレの入口には、玄関口にはこういう看板、便器に座った時に見える所にはこういう看板、貼り紙でもいいですけど、トイレットペーパーの所にも。それから、持ち帰り袋は、統一基準の物をトイレの中に無料で吊り下げておこうというふうに、いまも、山小屋さんのほうで、各自レジ袋などを買ってもらって、吊り下げてもらっているのですけれど、統一基準の持ち帰り袋を用意して、そこにも簡単な言葉を印刷して持って帰れるようにしようと。それに関してはいろいろいま関係者から意見を聞いているのですけれど、なんとなくいま意見として強いのは、ごく普通のレジ袋という意見が強いです。どうしてかというと、特に女性の方で、持って帰るときの目立つ袋、中が透けないように黒くするとか、茶色にするとか、緑にするとかという意見もあるのですけれど、そういう、ちょっと奇抜な色の袋をトイレから持って出るということは「ああ、あの人持ち帰る紙を持っているんだな」というのが周りから見えちゃうので、ちょっとやっぱり恥ずかしいだろうなというのがあって、ごく普通のレジ袋だったら、ポケットに捻じ込んでおくこともできるし、また、ギュッと縛ってしまえば、まずそこから漏れてしまうことはないし、それでも不安な人は二重使いしてもらえればいいだろうと。一例ですけれど、そんな議論をいま、山小屋の方と職員の中でしているところです。
 あとは、パンフレットも作ろうと思っているのですけれど、ただ、トイレのことを呼び掛けただけのパンフレットとか、もうちょっと広げてマナー、山の登山のマナーだけが書いてあるパンフレットというのは、やっぱりちょっと堅くなってしまって、押し付けがましくなってしまって、なかなかそれをキャンペーンとかで配れば読んではもらえても、ビジターセンターとか観光案内所に置いておいて、それをみな喜んで持っていってくれるかというと、なかなか持っていってくれないので、そのへんを、持っていきたくなるようなパンフレットを作りたいね、といまビジターセンターの人たちと相談しながら、その案をこれからどうしていくか。
 ちょっと一例を言うと、以前に、秦野にある秦野ビジターセンターが中心になって、私とかも協力したのですけれど、登山マナーの小冊子を作ろうということで、十年ぐらい前に作ったことがあるのですけれど、未だにその小冊子は売れるというか持っていてくれるのですね。何かの行事のときに置いておくと、すごく売れ行きが良い小冊子で、でも、開けて見るとマナーのこととか、怪我したときの緊急対応とか、そういうことが書いてあるのですけれど、すごくその冊子は売れ行きが良いのですね。それは、私は一つの理由は、タイトルが「山遊び基礎知識」というタイトルになっていて、表紙に山のいろいろな、松ぽっくりだとか、楽しげな、いろいろなものの写真、落ち葉のアートとかが写りこんでいて、とてもデザインが良い冊子なのですけれど、これから自分もアウトドアでいろいろなことをしたいのだけれど、これ読むとちょっと勉強になりそうだなあと期待させるものが多分あるのだと思いますね。やっぱり冊子の作り方なんかも、一工夫で、そういうふうに持っていってくれるか、押し付けのパンフだなと思われるか、すごく変わってくると思うので、そのへんを工夫したいなと思っています。

岩村和彦(山のトイレを考える会代表)

 トイレの会の岩村です。二人の講師の方、本当にいろいろありがとうございます。たいへんためになりました。まず、さっきたまたま知床で携帯トイレの話が出たのですが、私が知床の羅臼岳の山のトイレデーで清掃に行ったときに、あそこの山頂の下の、羅臼平で、今から6年ぐらい前に行って清掃したときに、トイレのティッシュ関係がハイ松の影にちょっと入っただけで80カ所というか、そこには当然大便もそのまま置いてあって、ということで大変な状況で、やっぱり知床は、羅臼は特に百名山に入っていますから、本当に何とかしなければならないなという思いで帰ってきたのですけれども、先程、早池峰での携帯トイレの話で、僕も4年ぐらい前かな、早池峰に初めて登りに行って、もちろん、山頂のトイレとか何かも、よく拝見させていただいたのですけれど、むしろ、早池峰あたりは、いま幌尻山荘でうんこの担ぎ下ろし、私も行けるときは必ず行って、十何キロぐらいいつも背負って降りてくるのですけれど、その取組みをやってる高橋さんがうんこの運び下ろしを学んだのは、早池峰でやっているやつに彼が行って、実際、早池峰ではこういうことをやっているのだということで、では幌尻山荘でもそれを導入しようということで始めたのですよ。そういう面では、早池峰というのは先駆的なことをやっているので、僕なんて、パッと思うのですけれど、そういう例は、早池峰で全国に先駆けてやっているので、むしろ本州あたり、いまは全国的には利尻が先行していますけれども、もし携帯トイレということでやられるのであれば、早池峰はむしろリーダーシップをとって、さっきのアンケートですと86%でしたっけ? 87ですか、利用者の方はやってもいいよということなので、観光的には、僕なんかは全くマイナスにならなくて、むしろ早池峰というのは先行しているのだなというイメージは、登山者のためには僕はプラスになると思うし、そういうことがかえって、地元の自治体の方がある意味心配しているというのは分かるのだけれども、むしろプラスに働くような気持ちでいかせてもらいたいですね。
 それと、今日、岡城先生の話を聞いていて、うちの広報の仲俣といろいろな案を考えているのですけれども、基本的には当面する美瑛富士の避難小屋、それから北海道の羊蹄山で今度、小屋を建て替えますので、どういうトイレが必要かということなのですけれど、美瑛富士の避難小屋も約27000筆の、全国の皆さんから貴重な署名をいただいて、環境省と道の方に提出しているのですけれど、なかなか前進が見られないということで、さっきの先生の話を聞いても、本当にどういうトイレが一番良いのかというのはなかなか難しい問題で、調査とかいろいろな問題があるのでしょうけれど、ちょっとここで、突然ですが、私のほうで是非聞いてみたいのですけれど、ちょうど環境省の藤森さんが来ているので、美瑛富士のトイレの進行状況とか、そのへんを含めて、いや全く進んでいませんということであれば、それはそれで拝聴いたしますし、それからどういうトイレが良いのかを含めて、ご感想などがありましたらお願いしたいと思います。

藤森さん(環境省北海道地方環境事務所)

 環境省では、北海道地方環境事務所の藤森といいます。今日は、いろいろな貴重なお話をお伺いして大変勉強になっております。
 いま、美瑛富士の関係だとか羊蹄山の関係もちょっと話題に出ましたので、少しだけご紹介と、私がどういうことを考えているのかというのをお話できればと思います。
 羊蹄山に関しては資料の74ページのところで、老朽化した避難小屋があるのですけれど、そこの再生を環境省のほうに、地元からも、北海道からも要望されているものですから、今年度に検討会を設けて、これは2回目の検討会の資料でございますが、避難小屋の再整備にあたっては、どういう機能をもった避難小屋がいいのか、その機能の一つにトイレをどうするか、いまご存知の通り、汲み取りトイレが2穴あるのですけれど、それの再整備にあたって、どういうトイレがいいのかというのを、一応携帯トイレも視野に入れて、いろいろな処理方式について、私どものほうで、いわゆる委託で出したコンサルなどを中心に検討会で、愛甲先生に座長をしていただいているのですけれど、検討をいましてきているところでございます。
 今年度は基本計画レベルの検討でして、早ければ、来年度にもう少し掘り下げた、今日も前提条件の調査を、土壌処理を考えての悩み等もございましたが、一応土壌処理の方式も視野に入れて、またいろいろなところで来年以降も、もう少し掘り下げた調査をしていきたいというふうに考えております。
 羊蹄については、老朽化が非常に進んで倒壊の危険があるとか言われている中で、再整備を環境省のほうに要望があってというようなこともありまして、こんな検討をいましているところです。大雪につきましては、資料について、いちばんあるのですけれど、平成16年度から数年間、北海道さんのほうで携帯トイレの方の推進の取り組みを行われていて、いまでもその方式はまだ行っていますが、そこからさらなる推進はしていないという状況があります。美瑛富士の環境もそうなのですけれど、大雪での屎尿処理の施策をどのように進めていくかというところはなかなか悩ましい、あるいは実際、それを実践するうえで、誰がいつ頃に、どのようにするのだという、ある意味では、今後に向けたプランをどのように考えていくのだというのを、私どもも、ある意味では当然考えなければいけないという認識はしています。  一応昨年度に、大雪の少しトイレ環境の現状調査というのを、いまのところ、してきた段階でございまして、いま、ちょっとマンパワー的なところもあるのですけど、いま大雪は、登山道の維持をどのような形で、いろいろな行政機関だけでなくて、山岳会とか、そういった方々と協力しながら、連携しながらしていけるか、あるいはもっと、ほかの協力を得ながらどういうふうにしていったらいいのかというふうな検討をして、表大雪側ですけれど、上川側を今年度、ワークショップを3回ほど、今年は開いて検討していくところなのですけれど、そうしたものも含めながら、おそらく大雪の避難小屋の屎尿の対策も、当然国だけでも無理ですし、自治体、それから利用者、あるいは山岳関係者の方々と、いろいろ議論したり、意見をいただきながら考えていかなければならないであろうと。

岩村和彦(山のトイレを考える会代表)

 藤森さんどうもすいません、突然に、ありがとうございます。
 もう少しなんとか、できれば早めに具体的な形で前進があれば本当にありがたいと思います。「山のトイレを考える会」も12年目に入っているものですから、だんだんみんな老朽化してきて、トイレの前に人間のほうが先に駄目になる可能性もありますので、その前になんとか。
 山のトイレを考える会は基本的には、行政と一緒になって協力するところはするつもりでおりますので、ぜひ良い意味で使っていただければと思います。よろしくお願いします。

横須賀邦子(山のトイレを考える会)

 藤森さん、質問なのですが。
 例えば羊蹄山、いま避難小屋がありますけれども、管理人さんが夏だけ常駐していらっしゃって面倒見てくださっているのですが、やっぱりトイレの問題は利用者の数にもすごく大きな関係があるので、その小屋に何人泊まらせるか。その避難小屋の規模というのは、参考までに、白神岳の場合をお知らせすると、白神の場合は、間口1.5間ぐらいかな、壁のほうも1.5間、1.5の1.5で、1階、2階、3階に分かれているたいへん小さな、物置小屋に近いものなのですね。白神岳の場合は、日本全国から、ブナの森の山ということで人気があって、集中して一気に登山道を拡幅したということがありますけれども、それでも環境省が設置した山頂にあるトイレよりも、その半分の大きさで小屋が設置されました。これは長谷川恒夫さん、故長谷川さんですけれども、あの方が設計したスイスの小屋に似ていて、非常に効率良く、荷物を置く所とかは全然余分にないのですけれど、本当に寝転がるだけの高さで3階建てということで、私、使ってみたのですけれど、お客さんを7人連れていって、一緒に泊まって、非常に良いものだなと感じたことがあります。
 避難小屋がどのくらいの大きさかというのは、いろいろなご意見があると思いますけれども、来る人来る人を全部収容するような、そういうことはできないのではないかというふうに、山の上では考えます。避難小屋は避難小屋としての位置で、大きさを考えていただきたいというふうに希望いたします。

藤森さん(環境省北海道地方環境事務所)

 はい、いろいろな貴重なご意見、ありがとうございます。羊蹄の避難小屋に関しては、今年度だけでなくて、まだ来年度以降も、規模、し尿処理、トイレの落ち着き方をどうするかも含めて、また来年も検討するつもりでおりますので、またご意見等いただければありがたいと思っております。
なお、いまのところ羊蹄山関係の検討のほうは、私どもの環境省のホームページのほうで、検討会の資料とか公表しておりますので、ご覧になってご意見等ありましたら、いただければと思います。

会場から(男性)

 先程のトイレットペーパーの話なのですけれども、2年ぐらい前に、甲斐駒の七丈小屋というところに泊まったことがあるのですよね。そこは、し尿はヘリコプターで降ろしているそうですけれども、ペーパーは籠が置いてあって、籠に入れることになっているのですよ。あそこも山小屋の管理人がいまして、詳しく聞かなかったけども、焼却しているのだと思うのですよね。そういったことで、丹沢の場合も、そういうことは考えなかったのか、考えても、何か問題があってやらないことにしたのか。というのは、管理人さんがいるから、そのへんはやりやすいかなというふうにいま単純に思ったのです。
 それから、冬の北海道の問題ですけれども、我々も、その心配があるのですけれど、パラダイスヒュッテといって、手稲山に16年ぐらい前に新しく建て直したのですけれど、そこは山小屋のトイレとは言えないかもしれないですけれども、水洗式で、便器三つ、それから最終処分は土壌浄化式を使っています。合併消化槽でまず処理して、その後、排水を土壌浄化に、ということで、もう16、7年経っていますけれど、いまのところ大丈夫です。問題は、合併処理の、そっちのほうの装置がどのくらいもつのか。そろそろやり変えなくてはいけないのかなと。そのへんがちょっと心配になっているのですけれども。あそこは地下にトイレをもっているものですから、真冬でも+6℃です。1階は、一週間に一回しか管理人が行きませんから、行ったときは1階は完全にマイナスになっていますけれど、地下は、+6℃で、ですから、冬に雪洞なんか掘ってみれば分かりますけど、雪の下というのは結構暖かいので、先程立山の例がありましたけれど、吹き曝しで吹き溜まりにならないような所は、これは問題ですけれども、雪がしっかり積もってくれる所だったら、意外といけるのかなというような感想をもちました。

コーディネーター

 ありがとうございます。紙を燃やすという話題についてはどうですかね、吉田さん。

吉田直哉さん

 焼却に関してですが、焼却は条例によりできないのです。条例ですから、神奈川県だけなのか、他の県がどうなのか、私は分からないのですけれど、おそらく同じような状況、全国同じだろうと思いますけれど、事業者が、廃棄物として出てきたものを、自ら焼却処分するというのは、幾つかの例外を除いてできないです。例外というのは例えば農家が稲わらを焼くとか、植木屋さんが選定した枝を小規模に焼くとか、そういう幾つかの例外だけ認められているだけです。

コーディネーター  昔は結構燃やしていましたけどね。
 私が知っている範囲でも、黒岳は昔、いまは無いんでしたっけ、昔トイレの横に焼却炉があって、ゴミを燃やされていまして、ただ、いまどきちょっと問題なのは、ゴミ箱があるとゴミを捨てる人がいるのと同じで、燃やすとなると今度は登山者が自分のゴミを燃やしてくれだの何だのと、逆に余計な、新たな問題が起きるのではないかと、そっちのほうが心配になったりしますが。

岩村和彦(山のトイレを考える会代表)

 トイレの紙の問題で、私の反省として言うのですけれど、山のトイレを考える会を1999年に立ち上げたのですけれども、そのときから僕は本当にこのことも強力にやっていればよかったなといま思っているのは、山でトイレを使ったときに、自分で使った紙は持ち帰ってくださいということは、その当時から全部やっていたのですよ。ただ、山のトイレを使ったときに、その使った紙を持ち帰るというのを、そのときからちゃんとやっていればよかったなというのは、私、非常に、要は、最近は、一昨年ですかね、三年前かな? 山のトイレを考える会で、注意書きを作って、ヒサゴ避難小屋とかなんかに、使った紙を持ち帰ってくださいということを書いたものを作って、看板を作ったのですけれど、それは、要するに使った紙、通常はトイレットペーパーとか何か、使ったら便層に落とすのですけれど、落とさないことによって汲み取りまでの期間を長く、要は、便層を極力有効に使っていきましょう、と。そのためには、し尿はしょうがないけれども、トイレットペーパーとか何かは全部持ち帰ってください、という看板をいま大雪とか何かの小屋に書いて作って貼っていますけれど、これは1999年ぐらいからずっと徹底してやっていれば良かったなと、私の反省なのですけれどね、そういうことです。

コーディネーター

 そういうのもあって、マナー袋みたいなものを作ったり、やっていますけれど、それは、力入れて、これから我々、やっていかなければいけないところかな、と思いますし、携帯トイレを利尻で配り始めたときも、私、思ったのですけれど、やっぱりこういうのは、最初は誰でも抵抗があるのです。さっきの買い物袋のほうが良いという話もそうだと思うのですけれど、誰がこんなもの使うのよという、僕も実は正直思いました、携帯トイレを見たときに。特に初期の携帯トイレは白い色で、あれオシッコすると外から見えるような色でしたから、外袋もあんな立派なジップ袋無かったですから、やっぱりああいうのは少しずつ頑張ってお願いしていくと、ある一点でボーンといろいろな人に使ってもらえるようになっていくので、そこまでは、やっぱり我慢をしなければいけない、我慢というか、しつこくお願いしていくしかないのかなと思ったりします。
 そろそろ時間もだいぶ延びてしまって申し訳ないので、このへんでディスカッションは終わりにしたいと思うのですが、最後に、また突然振って、この状況で何を言えと思われるかもしれませんが、今日、お話をいただいたお二人に、最後に、北海道のいろいろな話をちょっと聞いていただいたので、ご感想なりコメントを一言ずついただいて終わろうと思うのですが、すいません、お願いいたします。

吉田直哉さん

 これほど白熱した議論になるとは思っていなかったので、曖昧な答えばかりしかできませんで、大変失礼いたしました。なにか、わりと行政の方も結構いらっしゃるのかなと思って、行政の方向けの言葉が多かったかなと思うのですけれど、きっとボランティアの熱意ある方々と、多分行政の方もいらっしゃると思うのですけれど、良い関係を築くのには、簡単にはできないのですけれど、だけど良い信頼関係ができたときには、その力は二倍、三倍になっていくと思うので、良い信頼関係を築きつつ建設的な議論をしていただけたらなと思いながら聞いておりました。(拍手)

岡城孝雄さん

 締め括りにはならないと思いますが、私も、仲俣さんのほうから、昨年からですか、来てくれ来てくれと言うので、時間が合わなくて来られなかったのですけれど、来てみると、非常に白熱した議論をなされておられて、ただ、なかなか前に進みにくいというのがこの分野の悩みでございますので、本当に地道にやっていただいているなという感覚がございました。そういう点で、多少技術的なことで補える部分があったのかなと、少し不安がありますけれども、またこういう機会を少し積み重ねるときに呼んでいただき、また東京でも、そういう話があれば、東京のグループもおりますので、北海道は日本の財産ですので、是非、環境をこれ以上悪くしないように、皆さんで努力していただくということをお願いして最後にしたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

司会(小枝)

 それでは長い間、このフォーラムに皆さん参加していただきましてありがとうございました。今回もいろいろなお話ができて非常に良かったのではないかなと思っています。ちょっとずつ進んでいきたいと思います。  今日は、遠いところから、岡城さんと吉田さんに来ていただいて良い話が聞けました。もう一回、拍手をよろしくお願いします。(拍手)  それでは、以上で第12回の山のトイレフォーラムを終了させていただきます。

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