第12回山のトイレを考えるフォーラムの報告

(2011年3月)

(写真撮影:山のトイレを考える会 西田弘氏。スナップ写真も同様)

フォーラムの案内      フォーラムのスナップ写真
フォーラム資料集の購入要領(送料込みで600円)
平成23年3月5日(土)14時00分~17時30分
北海道大学学術交流会館「1階 小講堂」    参加者:53名

テーマ:「本州の山トイレ事情・土壌処理に学ぶ」

目 的:北海道ではまだ導入されていない「土壌処理方式」のトイレが神奈川県、岩手県
    はじめ本州ではかなり導入されている。
    今後、北海道に環境配慮型トイレを導入する時の選択肢の一つとして、この方式の
    メリット・デメリットについて学ぶ。


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(注)資料集に掲載された寄稿等の著作権は著作者及び当会に帰属します。無断転載等は禁止します。
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01.表紙

02.目次

03.巻 頭 言:第12回フォーラム開催にあたって 岩村和彦(山のトイレを考える会 代表)

04.2010年 山のトイレを考える会 活動報告

05.2010年 山のトイレデー活動報告・概要・感想

06.山のトイレを考える会ニュースレター NO.11 2011.1.25

07.土壌処理方式の山岳トイレの維持管理(神奈川県・丹沢山塊) 吉田直哉(神奈川県自然環境保護センター)

08.山岳トイレの土壌処理技術について 岡城孝雄(日本環境整備教育センター)

09.「土壌処理」をフォーラムテーマにした思い 仲俣善雄(山のトイレを考える会)

10.2010年度利尻山山岳年報 佐藤雅彦(山のトイレを考える会利尻支部)・岡田伸也(環境省稚内自然保護官事務所)

11.知床連山における携帯トイレの利用状況と今後の対策 中村仁(環境省ウトロ自然保護官事務所)

12.知床連山地区における課題と対策 知床世界自然遺産地域適性利用・エコツーリズム検討会議

13.2010年度幌尻岳の山岳トイレ問題とその対策 高橋健(日高山脈ファンクラブ)

14.大雪山国立公園パークボランティア連絡会の活動 岡花博文(大雪山パークボランティア連絡会会長)

15.羊蹄山避難小屋付加施設 (トイレ )の検討 羊蹄山避難小屋整備基本計画検討会

16.岩手県の避難小屋トイレの状況 千葉行有(岩手県環境生活部自然保護課)

17.飯豊連峰・朝日連峰における登山道整備の協働取組み 坂本万純(環境省羽黒自然保護官事務所)

18.飯豊保全連絡会・朝日保全協議会の活動をふりかえって 佐々木大樹(環境省羽黒自然保護官事務所)

19.伊那市の山岳トイレの現状と課題 白鳥孝(伊那 山仲間)

20.石鎚山におけるトイレの整備計画 白石崇(石鎚山トイレ問題検討委員会会長)

21.山岳トイレのあり方を考える-「屋久島への提言」を中心に- 山川陽一(日本山岳会理事)

22.自然地域トイレし尿処理技術セミナー概要報告 (福岡市) 環境省自然環境局国立公園課

23.山岳トイレし尿処理技術実証試験結果報告 (土壌処理・非水洗 ) (株)ティー・エス・エス

24.2010本州の山岳トイレ状況と北海道への展望 小枝正人(山のトイレを考える会)

25.(前回)第11回山のトイレを考えるフォーラム議事抄録  (山のトイレを考える会)

26.編集後記 小枝正人(山のトイレを考える会)

1.開会挨拶・司会 副代表 小枝正人

2.代表挨拶 岩村和彦

 フォーラムも2000年の第1回に教育文化会館で百数十名の参加で開催され、12回を迎えました。当初、山のトイレを考える会を数人の有志で立ち上げた時は数年ぐらい活動すると何とか目途が立つかと軽い考えで始めたのですが、気がつけばもう12年になります。
 毎年、毎年、多くの方にフォーラムに参加してもらっているのですが、本来ならば、こういうフォーラムを開かなくてもいいような山岳環境に1日でも早くなるのが私たちの最終目標ですので、その目標に向かって少しでも前進できればいいなと思っています。
 今までいろいろな活動をやってきました。美瑛富士の避難小屋に何とかトイレを作りたいと言うことで、署名活動もやってきましたし、年に一度、山のトイレデーと称して全道の登山口にみんなで散って、トイレ紙を拾ったり、パンフレットで登山者にマナーを呼びかけたりしていますが、まだまだ満足できるような状態には正直言ってなっておりません。しかし、少しずつでも山の環境が良くなっているのは、私自身も実感しております。
 今回は2名の講師の方をお迎えしています。今回のテーマは当会の仲俣の強い希望で土壌処理方式について学ぶフォーラムです。日本環境整備教育センターの岡城様に土壌処理の技術的なこと、神奈川県の吉田様には山のトイレの維持管理についてお話をしていただきます。デスカッションの時間もありますので、是非多くの皆様からご意見をいただければ助かります。それから山のトイレを考える会、もっとしっかりしろ!と叱咤激励も含めて、いろいろ意義のあるお話をいただければと思います。

3.2010活動報告 仲俣善雄 

 内容は第12回フォーラム資料集2~3ページを参照願います
 (資料)2010年(平成22)山のトイレを考える会活動報告

4.話題(要旨)

【話題1】「土壌処理方式の山岳トイレの維持管理(神奈川県・丹沢山塊)」

 アドバイザー:神奈川県 自然環境保全センター 自然公園課主査
        吉田直哉氏

・神奈川県では丹沢山塊にH13~H17にかけて有人の山小屋に隣接4か所(以下有人トイレ)、園地併設1か所、避難小屋に併設3か所(以下無人トイレ)の計8か所に土壌処理方式のトイレを導入、維持管理している。

・有人トイレは「国定公園山岳公衆トイレ運営委員会」(県と山小屋で組織)、無人トイレは県の直営(1か所は相模原市)で維持管理している。

土壌処理方式のメリットは電気がいらない、維持管理が比較的楽、負荷変動に比較的強いこと、デメリットは広い土地面積が必要、初期投資が比較的高価なこと。

・メンテナンスフリーに近いと言っても日常のトイレ清掃(有人小屋の人が無償で実施)は必要。あと専門業者による年1回の点検を実施している。

・有人トイレの協力金は50円。推定で登山者の20~25%が協力。協力金により、トイレットペーパー、清掃用具、消化消臭酵素、尿石除去クリーナー等を購入。

・土壌処理は汚泥が溜まるが、まだ一度も汚泥引き抜きをしていない。これからの汚泥引き抜きに備え、協力金から年50万円を貯めている(500万円ほど貯まった)。

・無人トイレの維持管理はボランティア(神奈川県自然公園指導員180人など2団体)との協働。ただ単にお任せしますは駄目。県にも自然公園指導員1名を配置して、ボランテアとのコミュニケーションを積極的に図り、顔の見える関係を作った。意思疎通もよくなり改善要望への措置対応も早く、好循環が生まれた。行政側にとって相応の人件費と手間がかかることは断言できる。

・登山者への啓発活動として「トイレ紙持ち帰りで美しい丹沢を」をキャッチフレーズに年2回キャンペーンを実施している。トイレットペーパーは分解できるがティッシュペーパーは分解できない。トイレットペーパーを置き、紙の持ち帰りをお願いしている。うんちまみれの紙を持ち帰るのは勇気が必要でその定着が難しい。なんとなく入れちゃったと言う人が多い。

・土壌処理方式の導入費用:男女共用1(約1500万円)。男大2小2、女3(約4000万円)


(質疑応答)

会場から(男)

 さっきの話の、特に無人小屋、丹沢の。北海道の場合は、吉田さんもご存知かもしれませんけれど、ほとんどの小屋は無人の、しかも、いわゆる避難小屋中の避難小屋みたいな山小屋がほとんどなのですけれど、あの中で、ボランティアの二団体のところに委託している、清掃のために、というところがあったと思うのですけれど、あの団体というのは、いわゆる地元の山岳会的なものなのでしょうか、それとも、どういった団体なのでしょうか、教えていただけますか?

吉田直哉さん

 委託をしているわけではなくて、「私たちがやるからね」と言ってくださる方に、別に協定しているわけでもなんでもなくて、やっていただいているというだけなのですけれど、一つの団体は、自然公園指導員連絡会といって、指導員さんの有志で作っている、横の繋がりを作りましょう、といって作っている組織がやっています。もう一つは、指導員ではなくて、他の人も、一般の人も、自由に入っていいですよ、という、指導員さんが中心で作った山岳会です。

会場から(男)
 たくさんトイレを作っておられるのですけれども、設置費というのはどれくらいかかったのかということですね。やはり山の上ということで、資材の運搬とか、そういうものは、たとえばヘリを使ったとか人力でやったとか、そのへんのお話が聞きたいなと思ったことと、それからトイレを使うにあたって、自分たちの家のトイレの使い勝手と山岳トイレという、特殊なもので使い勝手がわからなくて間違った使い方をされたとか、そういうような心配もあるかなと思っています。そのへんをちょっとお聞きしたいなと思います。

吉田直哉さん

 まず、資材の運搬は、南山以外の七ヶ所はヘリコプターですね。南山だけは、林道から、特装車みたいなのを持ってきて、林道から20分ぐらいで来れちゃうとこなので、それでなんとかなりました。費用は、これはトイレの規模によってピンキリですけども、例えばですね、一番小規模な、この図でいうと、6番の黍殻避難小屋というのが、これが、屋外に独立して、ポツンと仮設トイレみたいなかんじで建っていて、それもなんかあんまり、味も素っ気も無いようなトイレなのですけれど、一穴のトイレですね。いま正確なものが必要でしたら、ぜひ、資料に私のメールアドレスが書いてありますので、メールを送っていただければ、返答できますけれども、運搬費を入れても1500万円とか、そのくらいですかね、確か。正確には思い出せないですけれど、そのくらいだったと思います。逆に大規模なやつは、塔ノ岳が、第二章に、アナ三穴のトイレ、これが一番大きいのですけれど、塔ノ岳で4000万円ちょっとぐらいかかったと思います。これは運搬費も全部入っています。他は、だいたいその間、というかんじです。
 それから、一般家庭のトイレとの違いについてですけれど、まず紙を投入しないでくれというのは、相当しつこく何回も、山小屋の方も貼り紙をしたりしているのですけれど、それが最大の違いだと思うのですが、やっぱり人間は流れ作業で無意識に入れてしまって、あっと気がついたときには、もう紙はウンチまみれになって落ちていて、それを拾って持って帰ろうという人まではなかなかいないと思うので、やっぱり、それが一番あると思いますね。本人は、誰も見ていないからやっていいのよ思っているわけではないのだけれど、なんとなく入れちゃったというのは、たぶんあるのではないかと思います。それはもう、ある程度はしょうがないのかな、とは思っています。トイレットペーパーに関しては、分解はできると言われているのですね。多少時間はかかってしまう。ただ、ティッシュペーパーだと、ビニール分の成分が入っているので、これは分解できない、ということで、トイレットペーパーだったら、多少分解に時間がかかっちゃうけれど、入れられてもしょうがないかなというので、トイレットペーパーを置くようにしているのが現状です。
 使い方として、そんなに違うものでもないのですけれど、足踏みポンプで水が流れるという方式に関しては、結構、水を汲み上げないといけないので力が要るのですね。結構真剣に踏んでもチョロッとしか流れなくて、おかしいじゃないか、故障しているんじゃないかと、できたばっかりの頃によく苦情の電話がかかかってきたのですけれど、「そんなものなんです」というのを説明するのに随分苦労しました。そんなところですかね。

会場から(男)

 ありがとうございます。もう一つ追加で、たとえばトイレの消化層とか、規模の決め方は、一日何人使用とか、そういう基準があってやったと思うのですけれど、そのへんの決め方をお願いします。

吉田直哉さん

 いま、式とかそういうのまでよく分からないのですけれど、一応、だいたい何人ぐらいの人が来ているのかという想定のもとに、メーカーと相談して決めています。

会場から(男)

 一般市民です。私、単身赴任で関東行ったとき、丹沢には何度も足を運ばせていただいて、お世話になったのですけれど、全然公衆トイレを使った記憶がなくて、お金を払ったこともないのですけれど、一つ思うのは、受益者負担ということを考えると、多分トイレだけではなくて、登山道の整備とか、さまざまなことにお金がかかっていらっしゃるかと思います。トイレだけ受益者負担というのも何か不思議な話でして、特に関東ですと、意識の高い方は大勢いらっしゃるでしょうから、東京とか神奈川なんかは、できれば率先して入山料というものを、もう少し前向きに検討していただいて、人がたくさんいる丹沢をターゲットにされるなりして、受益者負担ということを全面的に考えるならば、山登りをすること自体に、ある程度お金が必要なんですよと、意識啓発していく方法を考えていらっしゃるのかなということをお聞きしたかったのですけれど。

吉田直哉さん

 厳しい質問で、どう答えたらいいか考えていたのですけれど、入山料の検討は一応県でも、過去にした形跡はあるのですけれど、私も、どういうふうに検討して、どういうふうに無理だという結論になったのか、よく分からないのですけれど、よく言われるのは、登山口が無数にあって、例えば屋久島みたいに必ず来る人が、船か飛行機で来るのかハッキリしているのではなくて、無数にある登山口からどこからでも入れて、その人たちから公平に入山料を取るということが非常に難しいとか、そういうことは言われているとは思います。ただ、だからいいというのではないのではないかと、私も個人的には感じていて、ただ自然公園はご存じの通り民有地も含まれている土地ですから、その全ての土地の持ち主の了解にこぎつけて、そして国定公園に入る人から入山料を取るということは不可能に近いと思うのですね。それをやると、結局は協力金という形にならざるを得ないという、任意のものになってしまうと思うのですけれども、きっと環境省の仕分けのあれで、この話はまた再復興するだろうなという感じがしていますけれども、「こうすべきだと思います」という答えは、いま明白には答えられません、すみません。

司会(山のトイレを考える会 小枝)

 それでは同じように、お手元の資料集の81ページと82ページに「岩手県の避難小屋トイレの状況について」と、岩手県の環境生活部自然保護課の方から寄稿をいただいておりまして、実は何の打ち合せもなく、私が振ってしまうのですが、岩手県から今日、フォーラムに来ていただいております。この岩手県の状況はどうだろうかということを、坂本様、ちょっとお話ししていただくことは可能でしょうか? 突然振って悪いのですけれど。

坂本さん(岩手県)

 岩手県環境生活部自然保護課の坂本と申します。何も準備してこなかったのであれですが、本県の方で土壌処理のトイレの整備につきましては、こちらの資料にありますように、多くの山奥の端の方で、進めてきている状況にはあります。ただ私も現在の部署に本年度から配属になりまして、主な担当といたしましては、早池峰国定公園の管理というところに収まっておりまして、皆様ご承知の方も多いかと思いますけれども、早池峰山につきましては、いろいろな、国の特別天然記念物ですとか、森林の生態系の保全地域とかいう形で、多くの法の網が引っ掛かっている保安ゾーンにもなっておりまして、こちら82ページの表にもありますように、ここでは、いわゆるトイレの整備、山頂の避難小屋ですが、トイレの整備については今、重要な案件として、十数年来の懸案事項として県のほうで取り組んでいるところです。山頂の部分につきましては、先ほど吉田さんの方からもご説明があったように、非常に平場が少ないところで、しかも法の規制のかかっているところということで、土壌処理の方式を持ち込もうにも、平場の箇所がなかなか確保できないということで、装置をそこに据え付けようとすると、ちょっと大きな、逆に土地の改変につながってしまうというふうなところ、あと、山頂という部分もありまして、水、電気が確保できないので、バイオ式のトイレなども、便槽内の温度を保つとか、そういった電源などの取り込みができないといった条件がございまして、それで、基本的に早池峰山のほうでは、携帯トイレの推進ということで現在、取り組みを進めております。携帯トイレの普及につきましても、十数年、ボランティアの方々が山頂避難小屋のトイレからの担ぎ下ろしをずっと続けてくださっておりまして、その中で、ここの山頂避難小屋につきましても、昭和61年の建設でございまして、本年度末で目安となる耐用年数を迎えてしまうという状況にもございまして、今々、緊急に方向性を定めていかなければならないという中にあって、昨年度から、最終的な検証というふうな形で携帯トイレの専用デーというのを設けて、山頂トイレを、時間帯でございましたけれども閉鎖して、その時間帯については携帯トイレのブース専用でお使いいただくというふうな取り組みを進めてきております。
 平成21年度が二日間で、本年度が八日間、来年度は、一応その検討の結果を出すということで、15日スパンで2回、30日間、山頂の汲み取り式トイレを閉鎖して、利用者の方々のご意見などもアンケートなどを通じて取りながら、汲み取り式トイレをどうしていくか、携帯トイレの専用化というのを果たして目指せるのかといったところの最終方向に向けての結論を見出そうということで取り組んでいるところでございます。


【話題2】「山岳トイレの土壌処理技術について」

  アドバイザー:(財)日本環境整備教育センター 企画情報グループリーダー
          岡城孝雄氏

・土壌処理槽は砕石や、砂利、通気性の良い土壌を詰めたトレンチの中に汚水を土壌に散水する多孔質の散水管(パイプ)を布設する。トレンチの大きさ、散水管の太さ、長さ、トレンチの深さ等は標準的な規格があり、装置構造が決まってくる。

・土壌に負荷される有機物が多いと細菌増殖による目詰まりが起き、汚水処理が低下する。

・土壌処理装置は目に見えないので、装置に入口と出口があるように、各装置が適正に処理されて能力を発揮しているか、汚水がちゃんと流れているか、汚れ度合はどうか。試料を採取したり、目視できるマス(点検口・検水管)をできれば設けた方がよい。

・精度の高い利用者数の把握、水はあるのか、電気はどうか、必要な面積はとれるか、近くに沢や地下水はないか、どんな土か、土壌の傾斜角度はどうか、積雪はどの程度か、降雨量はどうか、気温はどうかなど設置前の十分な事前調査が重要となる。

・設計時において負荷条件に余裕があることが必要である土壌処理装置に雨水の進入があること、それから降雪による雪の重みにより、トレンチの水平、傾斜が大幅に変化して、配管の破損やズレを生じるケースも多く認められている。また、積雪していれば凍結の心配はないが、吹き曝す地形だと雪が融けた後に寒波が来ると、消化槽や循環水が凍結する。北海道は凍結対策が必要。

・目詰まりしているのであれば、そこを栓してしまう。栓して半年、1年寝かせばいい。そうすれば、自然界の微生物はちゃんと回復できるようにやってくれ、目詰まりは解消する。

・土壌処理は設置後、そのままの能力を継続的に発揮するものと考え違いをしてしまう例が非常に多い。このように土壌処理装置を維持していくためには、土壌処理装置への固形物の流入、これを極力押さえるということが必要であり、そのために装置の適正な運転が非常に重要ということになる。

・土壌処理について神かがり的な能力があることを言う人がいるが、その能力を過信せずに、その能力を発揮させるための装置工学的な設計、その維持管理上の対応ができるような設計にしていただきたい。

・土壌処理はけっして悪くはないのだけれども、もう一つの次のステップにいくのには槍ヶ岳山荘等のオーナーオーナーである穂苅さんがやっておられた、し尿分離式というのも検討の余地ありだろうと考える。


(質疑応答)

会場から(男性)

 一般市民なのですけれども、丁寧なご説明、ありがとうございました。
 このシステムの図の説明の中で、土壌処理層の中に入っている雨水調整槽があると思うのですけれども、その横に雨水浸透槽があって、お互いに行き来をしているようなかたちで、要は実屎尿が増えた分、相当増えるかと思うのですが、その実屎尿がある程度処理はされているかと思うのですが、雨水浸透槽の方に行き来していることを介して、それが、地中に浸透されることについて、浄化槽法とか水質汚濁防止法の観点から、各自治体ではどのような規制なり施行をされているのか、そのへんの答弁を。

岡城孝雄さん

 山の話に関しては、正直言って公共水域ととらえるかどうかという問題はありますけれども、実は普通の街でも道路側溝がないという所がありまして、そういった所にこういう排水処理装置を持って行った場合には、市町村が自ら条例を作りまして、「浸透、OK!」というかたちの浸透マスというものでやってきたのが現状でございます。本来は、道路整備をして、ちゃんと道路側溝をやっていくべきところなのですが、残念ながら間に合っていないということです。
 水質汚濁防止法上の関係からみていくと、公共用水水域に排出するものに関しては、水質汚濁防止法にからんでまいりますので、その範疇から若干ずれているということです。
 それで、先程の雨水調整槽というところがありましたけれども、おっしゃるとおりで、雨水だけが流れてきて出ていくわけでありませんで、水位が上がってきて、屎尿をためた貯水槽のところで混ざります。混ざって希釈された状態で出ていきます。これが実態です。そこは正直に認めるべきだと思いますので、それは当然のこと。
 そのときの濃度は、雨水が大量に入って来て流れるということに関しましては、逆に、水質汚濁防止法から見ていきますと、水質汚濁防止法は濃度規制になります。工場で排水を出すときに、ちょっとのどが残念ながらまだかゆい(?)。それを水道水、あるいは地下水等で希釈して流すということについても、これは全く問題ないわけですね。総量規制のある場所、たとえば瀬戸内海とかありますけれども、そういう場所は総量ですので、どんなに薄めてもだめですけれども、元々水濁防止法というのはどうぞ薄めて流しましょうという、これも範囲なものですから。
 山のトイレをその範囲で考えるべきなのかどうか、それをこれから、自然地域トイレのワーキングの方では来年度、吉田さん、検討しようという話になっている状況でございます。

仲俣善雄(山のトイレを考える会)

 土壌処理は目に見えないというか、どこで、さっき言った目詰まりとか、きちんと汚水がトレンチの方に行っているかどうかというのは、かなり判定しづらいということがあったのですが、そういう検水槽というか検水管といいますか、そういうのは、一般的には、設けていないのですかね。全国でたくさん土壌処理方式を導入していると思いますけれども、それはメーカーに言わないと付けてくれないのですかね。

岡城孝雄さん

 一部、雨水調整層側に近いところに1カ所設けておりますけれども、それはあくまでも水位を見るという状況だけですので、パイピングのところの話は見えないです。検水槽はずっと流れていって、下の方を見ているだけですので、こちらは、「本当に浸透していますか?」というところを見ていますので、 そのところにギャップがあるわけですね。検水槽の方は実は雨が降ったものが下に浸透していきますので、そいつが溜まってきたところの水位を見ることはできるのですが、こちらの処理がちゃんといっていますかという話とはぜんぜん違う。そういう点で、検水槽の代わりにいまのような、まずは流入管で見えるポイントをしっかりつくること。
 検水槽も本当はたくさんあった方がいいのですけれども、それぞれみな独立しておりますので、そういう指導をしてもいいのですが、おそらく、そこまでは複雑にしなくても、入り口をしっかりしていただいた方がむしろ見やすいと思います。

仲俣善雄(山のトイレを考える会)

 先ほど言いましたように、 積雪でパイプが壊れたり、いろいろ指摘されましたけれども、測定箇所の問題とか、それが一番大変だと思いますね。

岡城孝雄さん

  面積が大きくなる分だけ、その影響が大きいと思いますので。

会場から(男性)

 北大の山とスキーの会なのですが、いま無意根小屋を現役の方が管理していまして、そこであそこのトイレをどうしようかなと話題になっていまして、今日はフォーラムに参加させていただいております。
 そこで、トレンチですけれども、昔、新見式というのを勉強したことがあるのですが、そのときには、トレンチの側面と底面からは浸透させないで、上から毛管現象で浸透させるという方式だったと思うのですが、この場合は、側面とか底面に浸透しないような膜をまくとか、そういうことは考えていないで地下に重力で浸透させるという考えで。

岡城孝雄さん

 基本的にはそうですね。新見先生の時代の話もありますけれども、あの方式も結局、新見式としてやったものが、その通り動いていない。結果として、排除しようというかたちになってきたというのが実態です。理論的には正しい部分もあります。ただし、負荷条件が高すぎるという状況になりますと、ああいう原理が働かない状況があって、目詰まりが非常に激しいということで、残念ながら、そこまでは。出てくる理論は正しいのですけれども、状況がそうならなかったというのが実態です。

会場から(男性)

 19pの絵なのですけれども、上のトレンチから重力式に処理された水が浸透していって、下の不透水性シートを敷いた導水の施設に落ち込んできて、検水管のあるところに集まってきて、それから外部に放水するという考えですか?

岡城孝雄さん

 基本的には、そうです。

5.デスカッション

【テーマ】北海道の山岳トイレへの土壌処理適用の可能性


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