第6回山のトイレを考えるフォーラムの報告

(2005年3月)
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平成17年3月5日(土)13時~17時30分 札幌市環境プラザ「環境研修室1・2」 参加者:72名

テーマ: 山はきれいになったか!次に私たちがすべきこと


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01.表紙

02.目次

03.巻頭言:次にすべき私たちの役目 横須賀邦子 (山のトイレを考える会 代表 )

04.2004年山のトイレを考える会活動報告

05.山のトイレを考える会ニュースレター №4 2005.1.25

06.屋久島の自然環境とトイレ問題 堀内直哉 (屋久島ユネスコ協会)

07.ガイドの立場から見た黒岳バイオトイレについて 池田しのぶ(美瑛・白金ネーチャークラブ) 

08.H16年度における黒岳バイオトイレの運用状況 酒元辰也(北海道上川支庁環境生活課長)

09.利尻山のトイレ対策について 須間 豊(利尻富士町商工観光課) 

10.美瑛富士避難小屋へのトイレ設置をめざして 愛甲哲也(山のトイレを考える会) 

11.全道一斉トイレデー(利尻山)での実施結果について 佐藤雅彦 (山のトイレを考える会) 

12.市民参加による公有地でのレクリエーション計画策定を求めて 山口和男 (山岳レクリェーション管理研究会)

13.大雪山におけるトイレ問題とアクセスの変化 愛甲哲也(北海道大学大学院農学研究科)

14.知床連山におけるトイレ問題の現状と課題 磯野満里子 (知床財団 保護管理研究係)

15.北海道山小屋フォーラムに参加して 岩村和彦 (山のトイレを考える会)

16.山小屋の存在と自然環境への影響 川口恵典(北海道大学大学院農学研究科)

17.2004 本州の山岳トイレ状況と北海道への展望 小枝正人(山のトイレを考える会)

18.環境配慮型山岳トイレの整備 富田耕平(神奈川県自然環境保全センター自然公園課)

19.山のトイレ・ゴミ問題での改善の動き 上幸雄(日本トイレ協会)

20.2004山のトイレ問題参考資料一覧と編集後記 小枝正人(山のトイレを考える会)

フォーラム議事録(要旨)

(ゲストスピーカー)
・屋久島ユネスコ協会       堀内直哉氏(特別講演)
・美瑛・白金ネイチャーセンター 池田しのぶ氏
・北海道上川支庁         酒元辰也氏
・利尻富士町            須間和彦氏
(コーディネーター)岩村和彦

(横須賀代表挨拶)

今までのフォーラムで感じるのは目指すべき議論まで行き着かないで時間切れ、消化不良で終わっていた。今回は一般参加者の中にパネリストを混ぜ、パネリスト用の演壇を無くした。垣根を取り払ったので、質問・意見を多くいただきたい。要望の強かったバイオトイレが黒岳にできた。克服しなきゃならない課題が多くあるが、上川支庁様にご報告をいただいて、みなさんの知恵を集めて、気持ちよく使えるものにしたいと考えている。

○2004年度活動報告(フォーラム資料参照)

報告:山のトイレを考える会 川口恵典

○講演 屋久島ユネスコ協会 会長 堀内直哉氏(フォーラム資料集参照)

・世界遺産に指定されてから、登山者、観光客が一気に増えた。経済的な効果は上がったが、自然に与えるインパクトが増えてきたことを懸念している。
・登山道の侵食が進んでいる。縄文杉の根が剥き出しになるのを防ぐのに防水処理をした木道を造ったが、近くに水場があり心配。屋久杉の一部が削り取られたり、苔が持ち去られたりもしている。
・屋久島の山岳トイレは10カ所あり、避難小屋6箇所の全てにトイレが併設されているが、いずれも汲み取り式。登山口の3箇所は浄化槽付き。大株歩道入口に1億2千万円かけて循環式のバイオトイレができた。しかし、電気代、汚泥の回収処理コストは税金で住民負担が持続的に拡大される方法になってしまった。このトイレもオーバーユースの傾向で、いつも行列ができている。
・これからは、屋久島はどうあればいいのか、屋久島の自然をどのようにして守るのか住民とのコンセンサスをとることが課題。観光地でなく環境地を目指して努力したい。

《討論》

1.黒岳バイオトイレについて

○上川支庁の酒元氏から現状報告があった

 2004年本格稼動した黒岳のバイオトイレは、以前より多くの人が快適に利用することができ、最終的に糞尿はヘリで運んだため、自然環境へのインパクトは少なくなりよかった。しかし、次のような問題があり、改善に向けた取り組みが必要と考えている。

・バイオが正常に稼動せず、5回もオガクズ交換をした。
・小便が多くオガクズが水浸し。これを蒸発させる熱電力が足りなかった。
・予想したより多くの人が利用し、順番待ちで並んだ。
・人力でオガクズを攪拌するが、ペダルを廻す回数が規定値より少ない人が多い。
(順番待ちをしているので、次の人の事を思うと廻す回数が減る)
・利用協力金は35%ぐらいしか協力してもらえなかった。

○年間1万人、1日平均130人、最盛期平日250人、ピークで500人と言う想定のもと処理能力1日200人で設計。しかし、利用者数は18,275人(6/19~9/28)、1日平均179人、最大ピーク820人と言う結果だった

○今後の対策について

上川支庁を中心に多くの皆さんで智恵を出し、今後の対策について検討、改善を図っていく。

・小便が多いことから、水分を蒸発させる電力を確保。バイオを正常に働かせる。
・登山者が人力ペダルを規定値回数廻せるよう工夫する
・ピーク時は携帯トイレを使用できるよう、トイレブース設置を検討する
・協力金を拠出しやすいような工夫をする
・ガイドから登山者への理解と啓発をお願いするよう協力体制をとる
・大雪山の総合的な山岳管理体制の確立を目指す

2.携帯トイレの利用について

○利尻の須間氏から現状報告があった

平成12年から携帯トイレの無料配布を開始して、全国的に利尻の携帯トイレ利用促進施策は知れ渡った。携帯トイレブースも苦労して必要な箇所に設置。また、携帯トイレ回収ボックスを鴛泊・沓形の両登山口に設置。使用しなかった携帯トイレの回収ボックスも設置した。携帯トイレの利用について多くの登山者の理解も得られ、成果が上がっている。しかし、財政的に逼迫している中、携帯トイレの無料配布を継続するかどうか悩んでいる。2006年は有料化の方向で検討している。

○大雪の携帯トイレ無料配布について(酒元氏)

環境省からの補助で大雪でも無料配布をしていたが、回収ボックスで回収される数が少なく成果が見えてこない。2005年度からは、回収ボックスは整備していくが、無料配布を止め、啓発に力点を置く方向に転換していきたい。

○少しずつ認知されつつある携帯トイレの使用を後退させて欲しくない。回収ボックスの整備も前向きに取り組んで欲しい(岩村)

○回収ボックスが必要な場所にしかも分かりやすい所にあること。また、中味(糞尿)を出さなくても焼却処分が出来るようなシステムが確立してから、携帯トイレの普及促進をすべきだ(上井)

○携帯トイレの利用と回収は、利尻のように完結した地形だと利用推進はできるが、大雪のように広大で、多くの市町村がまたがっている山域は難しい。トイレもあるし、選択肢がいろいろある。ブース設置をしても下山地で回収できない所もある(愛甲)

  3.美瑛富士避難小屋のトイレ問題

○野営地でもあり避難小屋もある場所で唯一トイレがない。第1回のフォーラムから問題提起しているが、7年間何の改善もされていない。改善に向けた署名活動を提案したい(愛甲)

○署名では、どのようなトイレを作って欲しいか、具体的に明示した方がよいのではないか。今日すぐ決議されて関係団体に申し入れすることが必要と思う(参加者)

○どのようなトイレがいいか現時点では難しい。ただ、トイレを設置すべきだと言うことは山のトイレを考える会としての統一見解(岩村)

○それでは、運動は停滞する。主催する人が方針を持っていないと、団体に協力依頼する時に漠然としていますと言っても受け入れてくれない(参加者)

○美瑛富士のトイレ問題は何十年も前から言われている。上川支庁や道がお金を出すことも大事だが、地元の人の意思や熱意が必要。維持管理は地元の自治体。どうやって地元の自治体が盛り上がってくれるのかが重要(りんゆう観光植田氏)

○登山者数など山のデータが不足していると言う話があったが、ガイドなど山で働く人をどんどん活用していただけないかとここ数年思う。研究者と連携がとれたらと思う(ガイドの池田氏)

○美瑛町の地元の人は、美瑛富士への登山道をあまり利用していないのではないか。利用していないのに、地元に意見を求めても漠然としていて難しいのではないか(池田しのぶ氏)

○美瑛富士にバイオトイレのような立派なものが必要かと思う。貯留式でよいのではないか。バイオトイレは維持管理ができる人がいないと導入はなかなか難しい。今後は避難小屋に泊まった人に清掃とかをやってもらうと言った柔らかい管理も可能でないか(横須賀)

○会としては実際の行動(署名活動)に移すべきだという段階に移っている(岩村)

4.その他

○硫黄山に通じるカムイワッカ線が行けなくなる。7月13日から8月31日まで代替運行バスが運営される。縦走は事実上この期間できなくなる(遠山氏)

○山のトイレを考える会では、毎年9月の第一日曜日をトイレデーとして活動している。
 2005年は9月4日(日)。みなさんのご協力をお願いしたい(横須賀)


                                             以上(記録:仲俣)

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