フォーラムの案内 フォーラムのスナップ写真平成18年3月4日(土)13時~17時30分 札幌市環境プラザ「環境研修室1・2」 参加者:52名
テーマ: トイレ問題解決への道筋
~美瑛富士避難小屋に似合うトイレと管理のあり方~
01.表紙 02.目次 03.巻頭言:山岳トイレと管理 横須賀邦子 (山のトイレを考える会 代表 ) 04.2005年山のトイレを考える会活動報告 05.山のトイレを考える会ニュースレター №5 2006.1.17 06.美瑛富士避難小屋トイレ設置署名活動経過報告 岩村和彦 (山のトイレを考える会) 07.山岳トイレ技術の概略と導入事例 加藤篤(日本トイレ協会) 08.山のトイレ問題~斜里岳の現状~ 吉田敏則(斜里「清岳荘」管理人) 09.東大雪・山のトイレ事情 河田充(NPO東大雪ガイドセンター) 10.知床の世界遺産登録とトイレ問題 村上隆広(斜里町役場環境保全課) 11.美瑛富士避難小屋へのトイレ設置めざして 愛甲哲也 (山のトイレを考える会・北海道大学) 12.美瑛富士避難小屋に似合うトイレと管理について考える 仲俣善雄 (山のトイレを考える会) 13.利尻山のトイレ対策について 須間豊 (利尻富士町商工観光課) 14.日高山脈・幌尻山荘トイレに係る活動を振り返って 高橋健(日高山脈ファンクラブ事務局長) 15.平成17年度黒岳トイレの運用状況について 小畑淳毅 (北海道上川支庁環境生活課主査) 16.大雪山・黒岳石室のバイオトイレを検証 佐藤仁俊 (正和電工㈱) 17.山岳トイレ問題を解決するバイオトイレ 町田喜義(大央電設工業㈱代表取締役) 18.山のトイレと土壌処理 中台光雄(㈱リンフォース 会長) 19.山岳トイレに対するTSS汚水処理システム 矢吹紳一郎(大成工業㈱) 20.2005本州の山岳トイレ状況等と北海道への展望 小枝正人(山のトイレを考える会) 21.「山岳トイレ」の研究報告 上幸雄・加藤篤 (日本トイレ協会) 22.表大雪山登山者入込数実態調査報告書 庄子康・八巻一成((独)森林総合研究所北海道支所) 23.自然地域レクリェーション計画における有料化の展開 伊藤太一(筑波大学) 24.知床国立公園及び大雪山国立公園での自然環境保全に対応した利用面での取り組み 小林昭裕(専修大学北海道短期大学) 25.編集後記 小枝正人(山のトイレを考える会)
フォーラム議事録(要旨)
(ゲストスピーカー) (横須賀代表挨拶) 6年の活動と、フォーラムは7回目。簡単にはトイレはできない。管理や支える人が必要。バイオトイレの検証は十分かなど、山岳地の環境条件に適したものを考えていきたい。平たい場所で、気軽に意見交換をはかりたい。 1.2005年度活動報告 山のトイレを考える会 仲俣善雄 2005年度の活動として、フォーラムの開催では屋久島の事例や黒岳のバイオトイレの課題を議論し、美瑛富士の署名を開始することになった。トイレマップとトイレ情報の更新を行った。署名活動は7月から10月で2万を達成した。個人や団体の協力もあった。幌尻山荘のトイレの屎尿の担ぎおろしにも会から数名が参加した。広報用にマップ等をおさめるカタログケースを作成した。9月4日にはトイレデーを実施し、多くの参加をもらい、署名もおこなった。環境団体等の集会でパネル展への出展も行った。ニュースレターを作成し、配布した。あとで紹介する山のトイレマナー袋を、(株)ムッシュ様の協力で作成した。 2.講演 「山岳トイレ技術の概略と導入事例」 日本トイレ協会 加藤 篤氏
日本トイレ協会は任意団体で、1997年から山のトイレ問題に取り組んでいる。活動をはじめて100年、山岳地での垂れ流しは少なくなり、携帯トイレも普及しつつある。今日は、技術のメニューだしをやりたい。 3.ゲストスピーカーからの報告 ○知床の世界自然遺産登録とトイレ問題 斜里町環境保全課 村上隆広氏 流氷が知床をつくる力、海と陸が一体となった生態系が評価された。登録後、観光客が増加し、五湖の歩道は混雑し、交通渋滞もおこった。自動車利用適正化、エコツーリズムの導入、ツアーと産業の連携、ガイドラインの設定などが課 題。自然公園の利用適正化として、利用調整地区の指定は進んでいない。登山者数は9千人前後で、指定前後での増減はない。水場や野営地周辺で踏み跡の増加、臭い、屎尿と紙による景観への影響が懸念されている。携帯トイレは普及していない。平成17年度の半島中央部地区基本計画では、入山前のトイレ、場所の分散、紙持ち帰りのお願いとともに、携帯トイレの普及と回収システムの検討があがった。 ○山のトイレ問題~斜里岳の現状~ 清岳荘管理人 吉田敏則氏 シーズンは6~10月、登山者が8800人、観光客とあわせて1万人の利用がある。斜里岳は清岳荘にトイレがあるのみ、昨年新設した循環式活水再利用処理槽、当初は年1回の予定だったが、2ヶ月で汲み取りをおこなった。発電機で24時間、電力を供給しており、今のところ故障もなく、利用者の反応もよい。当初は無料の予定であったが、維持管理のコストがかかるため町と業者が相談して、募金箱を設置して利用者に協力金をお願いしている。入れる人が少なかったため、トイレは有料と掲示した。協力金または使用料といっても、だれが徴収するのかという問題がある。 ○東大雪 山のトイレ事情 NPOひがし大雪自然ガイドセンター 河田充氏 登山道のロープ張り、登山道の維持補修、山開き登山会中止の提言、携帯電話の通話状況調査、登山講習会への協力などを行ってきた。東大雪は、大雪山では人の少ない山域だが、平成7年頃から増加、年間3千人から4千人くらい。山の上にティッシュの花が咲いた。1997年に杉沢登山口にトイレを設置。大小1つずつで汲み取り式。清掃は業者と契約、25万円の設置費。日ごろの清掃と汲み取りのタイミングの連絡をひがし大雪自然ガイドセンターで実施。2006年に更新予定。2002年には石狩岳の登山口にもトイレを設置。2003年から十勝支庁により前天狗に携帯ブース設置。テント式は1週間で壊れたので木製の組み立て式にした。野営指定地である小天狗のコルよりも前天狗のほうがティッシュが多かった。携帯トイレは、配る、使う、回収するというサイクルを確立することが重要。支庁の無料配布は財政難で打ち切りとなった。残った300個を少しずつ継続して配っている。NPOで配布を続けたい。ブヨ沼のティッシュの回収も秋に行っている。「私が18年前に見たニペソツを次世代に」が願いだ。
(質問):なぜブースは木製か?また利用者の声や、有料化などは? 4.デスカッション (岩村) 今回は美瑛富士に似合うトイレを考えたい。しかし、様々な視点から意見やアイデアをもらいたい。結論は出さない。 (仲俣) 美瑛富士を対象としたトイレ問題の解決案の提示。宿泊者は年間500人。①携帯トイレの徹底、システムが必要。②バイオトイレの設置、管理人がいないのでメンテナンスができない。③浸透貯留式、コストやメンテナンスは不要、時流や世論から困難か。④固液分離で搬出、小便は簡易処理後地下浸透、コストも安い。⑤固液分離で搬出+携帯トイレ、屎尿の搬出の期間をのばせる。また、登山者が清掃などに協力できる仕組みがほしい。 (上川支庁 小畑) 今年度は登山者が減ったが、黒岳トイレのピーク時の人数は800人/日と変わらない、協力金は120万円、40%が払った。おが屑の交換頻度は4回と昨年より1回減った。今後の対策として、施設の拡充はコストがかかる。固液分離は、小便の処理が問題となる。改修費の捻出は難しい。 (日高山脈ファンクラブ 高橋) 昨年は対策の一環として、幌尻山荘のし尿の汲み取りと担ぎ下ろしをした。今年も実施したい。林野庁の事業で、幌尻山荘にバイオトイレが設置されることとなった。電力は小型水力になりそう。 (大央電設工業 町田) 幌尻山荘にバイオトイレを設置した。屎尿を分離し、使用の少ないときに尿を発酵槽にもどす。水分と温度の管理がかなめ。また臭いは油分が原因、それを分解するバクテリアも必要。発酵熱を使うため、電気も少なくてすむ。大事な事は、バクテリアが繁殖活動をする為には空気と水・温度が絶対必要で使用頻度が多い場合には、固液分離という方法でバクテリアの割合を増やす必要がある。それとバクテリアの活動しやすい温度は20度付近なので、それ以下にならないようにしなければならない。13度以下となると活動できなくなる。完全に分解さえ出来れば、何年も触媒を交換する必要は無い。 (参加者) バクテリアはいなくならないのか? (町田) 高温や低温でも死なないバクテリアを使っている。 (参加者) 羊蹄山の麓の水汚染も心配。ヨーロッパ等では持ち帰りが原則だろう。 (鈴木) 美瑛には、恒久的施設を作るべきかどうかをまず議論すべき。建設と維持管理が課題。環境省にお願いしたい。 (愛甲) 昨年美瑛富士避難小屋の調査に行った時には、一昨年より去年の方が少なかった。 (万計山荘友の会 小笠原)11年前から市民で管理。万計山荘は現在林野庁から無償で委託契約している状態である。またハエの発生もトイレ環境を悪化させる原因で、外に出している便槽内の排気用煙突は長く突き出した方が煙突上部が太陽の熱で暖められ、排気の能力も強くなりハエの発生も押さえられる。浸透式を貯留便層にかえ、EM菌を入れている。募金箱もおいたが、かなり集まっていそうだ。登山者にメンテナンスを期待するのは難しい。便層にゴミが一つでも入ると、続けて入れる。一度汚れると、どんどん汚くなる。常にきれいな状態を維持しておくことが重要だ。 (美瑛山岳会 内藤) 地元の人間は使わない。観光の中心は十勝連峰と白金温泉から、丘へとシフトしている、関心は薄い。現避難小屋は防災関連事業として設置した。昨年は残雪も多かったので、登山者は減少した。林道の奥まで入れるようになったので、オプタテシケが日帰りでいけるようになった。設置されれば維持管理等に地元がまったく黙っているということはないだろう。山岳会にも登山道の補修などの依頼も多い。十勝岳の避難小屋も老朽化している。山岳会も老齢化が進み中々これ以上という要望には応えられない。それと「町民が利用しない施設に金をかけるの?」との声もあり、1回下ろすと数百万円掛かるという事を恐れている。 (参加者) 黒岳のおが屑はどうやって運んでいるのか? (小畑) 4トンあり、ヘリでおろしている。 (加藤) 事前に利用者の把握を行っても、トイレが新しくなるとトイレの利用者は激増するのが通例である。 (参加者) 登山をはじめたばかりで、このような問題があることを知らなかった。一般の人にももっと知ってもらうべきでは?テレビCM等では快適性のみが伝えられる。山に登らない人、これから登る人に伝える必要がある。 (岩村) 山域の管理は地元の山岳会のお世話になっている。ネットワークを広げて、役割分担をどういう方法でやっていけばよいのか? (加藤) 町にいても下水道料金が取れれている。トイレは金が掛かるのだ。空気でさえお金が掛かっているという事を一般の人にも啓発活動する必要があるのでは? (横須賀) ボランティアは多く活動している。ガイドもよく山には通う。枠を超えたボランティアが必要。ボランティアの組織化、広報。各山岳会だのみでは負担が大き過ぎる。 (十勝支庁 橋本)ヒサゴ沼で、調査や利用者指導を行っている。昨年も海の日付近と山の終わりの日ごろに職員により清掃している。携帯トイレも認知度が増しているようだ。携帯トイレにもブースが必要。ソフトとハードが一体となった対策が求められるだろう。普及啓発が重要だ。 (村上) 知床では様々な機関が関わっており、それぞれの考え方の違いが顕在化することもある。山岳会も実働人員は少なく、お金や依頼があっても時間がない。世論が高まることで、行政機関等は動いていくだろう。 (岩村) 羅臼平で昨年のトイレデーに清掃をした。82箇所の紙を回収し、テントやガス缶も放置されていた。現実に山に行っている登山者がお手伝いできることもあるだろう。 (河田) 山岳会はあくまでも趣味のもの。未組織の登山者も増えている。すべて地元に任せるのは難しい。NPOは受託事業で食いつないでいる。美瑛には地元のNPOの協力や旭川、札幌の団体の協力も必要。ガイドや登山者の努力により、携帯トイレの使用も考えるべき。役人をまきこみ、現地に一緒に出かけ、問題意識を共有することも必要だろう。また、山に対する思い入れも大きなポイント。地元ボランティアとの連携も大事なのでは?役人を巻き込み想いを共有する事が大事なのでは? (ムッシュ 鈴木)会の熱意を感じた。普及活動を全国に浸透させることが必要。入山料の検討も必要では。旅行団体ツアーなどで「北海道の環境を守ろうツアー」とか銘打って徴収してもらうって事もありかな? (山のトイレを考える会 泉)ムッシュ様の協力により作成したティッシュを持ち帰るための「山のトイレマナー袋」の発表。使用済みの紙を持ち帰るという基本的な取り組みを普及させるために作った。持って帰って、配ったり使ってほしい。 (ムッシュ 鈴木) 通信販売の売り上げの一部を山岳環境保全に使ってもらう。回収ボックスの利尻への寄贈にも協力した。マナー袋は北海道と屋久島で配布する。改良もしていきたいので、使い心地などの意見を。 (吉田) 清里山岳会でもいろいろな依頼がくる。実働人員は少ない。入山料といっても、だれが徴収するかが課題。それに人員が必要となる。 (愛甲) トイレについては、協力金を頂くのは良いと思うが、入山料に付いては、使い方を明らかにする必要もある。地元山岳会はど人件費・高齢化が進み難しいのでは? (利尻富士町 須間) 平成12年より携帯トイレを補助金なども使いながら無料で配布している。募金も募ったが一人当たり8~12円とまったく不足。財政上の問題と、登山者が負担すべきとの声から、来年度から有料化する。それにより再び山中に屎尿が散乱しないか、心配。PR用のパンフレットを作成中で、皆さんにもPRに協力いただきたい。 (村上) 美瑛では、燃えるゴミとして処理できるのか? (内藤) 東川、東神楽、美瑛の合同の清掃組合で処理、燃やせるゴミとして受けられるかどうかは不明。 (小畑) 焼却施設による。斜里では処理が難しいという話も以前にはあった。入れ物は一般廃棄物で、高規格焼却炉ならば燃えるごみとして一括処理できるが一般の焼却炉の場合は中の汚物は別処理となる。 (山のトイレを考える会 小宮)広報だけではなく事前に広報の内容もみなさんに見てもらっては。 (須間)すでに印刷に入っているので、広報に協力いただきたい。 (加藤) 協力をお願いするのではなく、山を楽しむルールとして定着させたい。今まで山に行ってなかった人や、子どもにも広げる必要がある。使わなくても防災グッズとして使える。美瑛富士については、トイレを作ると入り込みが増える。美瑛の山のあり方を考えてからでないと、維持管理に振り回される。固液分離は、尿の処理が課題となる。浸透がよいかどうかには、科学的根拠が必要。まずは、試験的に、携帯トイレを使って山のあり方を考えてはどうか? (横須賀) 登山者はゴミを拾っている。広報するなら、一般の人や小学校の教育の中で位置づけることも必要。 (環境省からの参加者) 本日は有益な情報をいただいた。費用対効果が課題で、大雪全体の中で議論すべき問題でもある。大雪山全体を管理する仕組みが必要で、管理の方針を明確に示す必要がある。 (津幡) これまで署名活動に協力してきた。あとひとふんばり、みなさんとともに頑張りたい。 (加藤) 山のECHOでは今年7月15日に前後に全国一斉登山者調査を計画している。協力をお願いしたい。 《ディスカッションまとめ》 山のトイレを考える会 愛甲 トイレの処理方式と維持管理は表裏一体である。維持管理も考えた方式の選択を提案していきたい。携帯トイレは利尻の常識になってほしい。PRに会としても応援していきたい。有料化の議論も必要だが、協力金は協力する意思のあるものが負担を強いられる不公平な面ももつ。登山者数などのデータの収集と評価も必要で、山があることの価値付けも必要。3月末に向けて署名のいっそうの協力をお願いしたい。トイレの新設のみでなく一体的な管理や役割分担の議論の場の設置と検討を働きかけていきたい。 5.閉会の挨拶 山のトイレを考える会 小枝 まだ美瑛富士避難小屋にどのようなトイレが似合うか結論はでないが、議論を継続したい。資料集には多くの方に原稿をもらった。今後の参考にしていただきたい。 |
DUM | フォーラムINDEXへ |