報告:山のトイレを考える会会員 佐藤雅彦
日頃、利尻山の環境保全などについてご尽力いただき、まことにありがとうございます。9月11日の「山のトイレデー2004」(山のトイレを考える会利尻グループ・利尻礼文サロベツパークボランティアの会主催)に島内からも有志が参加し、以下のような清掃登山などを行いましたのでご報告いたします。なにかのご参考にしていただければ幸いです。 日 時: 2004年9月11日 6:00-18:00 天 気: 晴れ(沓形側はほぼ無風、鴛泊コースでは風も徐々に強まった) 参加者: 8名(利尻町3名、利尻富士町3名、礼文町1名、稚内市1名;当日都合により急遽不参加となった方は、利尻町1名、利尻富士町1名、稚内市1名だった)
内 容:
所 見:
沓形コースでは、避難小屋1、礼文岩3で、それ以外は特にトイレの痕は気にならなかった。頂上のロープ裏もアンモニア臭もなく、用足しに降りる者も最近ではいなくなったようである。昨年は頂上直前の岩場には複数のトイレ跡があり、岩場の裂け目にティッシュとともに突っ込まれてあったが、今年もティッシュ痕が2つあった。9合目の東側の谷もよくトイレ場となる場所だが、今年は携帯トイレ1の投げ捨てのみであった。しかし、まだ携帯トイレの投げ捨てがあるとは、今後もマナー向上を地道に呼びかける必要があろう。9合目から山小屋までにティッシュ痕は7あった。避難小屋の周辺はもっともゴミ、トイレ痕が多い場所であり、今年もその傾向は変わらない。ティッシュ痕3、携帯トイレ1。しかし、それでも量は年々減っているように感じた。避難小屋から長官山まではティッシュ痕3。7合目はちょっと奥に行く道にティッシュ痕7。トイレブースが撤去された5合目の場所の周辺は意外ときれいであったが、その反対側の谷にティッシュ痕2。4合目は5つのティッシュ痕が見つかった。なお、鴛泊避難小屋引き返しグループによると、ティッシュ痕は約50、使用済み携帯トイレの投げ捨ては2だった。
携帯トイレを利用している人の姿は当日は見ることはなかったが、登山客との会話から「本州では当たり前になってきている」というような声も聞こえたりと、全国的に普及は進んでいるように思えた。投げ捨てられた携帯トイレの数としては、昨年は3だったので、ほぼ同じ状況であった。
ゴミに関しては昨年同様、お菓子の包み紙などの小さなゴミが多いことや、帽子やタオルなどの風で飛ばされた衣類、そして転がり落ちたペットボトルなどが多く、故意に捨てていっているような悪質なマナー違反は少なくなっているように感じた。しかし、鴛泊の旧避難小屋の埋めたゴミが目立つため、少しずつでも担ぎおろしをやっていかなくてはならない時期にきているかもしれない。縦走グループでは45リットルのゴミ袋で燃えないゴミが1袋(空き缶、ペットボトル、瓶など)、燃えるゴミ+トイレゴミが2袋という結果だった。これは昨年の合計4に比べれば少ないように感じられたが、沓形グループが1袋分、そして鴛泊グループが少なくとも1袋分は担ぎ降ろしているので、合計5つとほぼ例年並の量といえる。
沓形コースでは、親不知子不知のルートは春先のような足場が悪い印象はなくなり、ほぼ安定しているように思えた。しかし、ガレ場から登山ルートにもどる場所が水の流れにより深くえぐられ、非常に渡りづらくなっている部分があった。親不知子不知の後の一部道が落ちていた昨年も指摘した部分は、水の通り道が更に広く、深く礫をえぐり、たいへん危険な場所となっていた。「親知らず」を抜かせば、多分、利尻山の中でもっとも事故が起こりやすいところかもしれない。この水の通り道を別な方向(親知らず側)に逃がさない限り、この部分の道はいずれ使えなくなるはずだろう。 合流点直前の沓形コースは、利尻町による礫を袋詰めして階段状にならべるという補修が行われたばかりで、その結果、大変登りやすくなった。登りやすくなっただけでなく、これまでのように礫を下に落とすことなく、登山道の侵食に対してもたいへん有効な素晴らしい方法と思えた。しかし、合流点に置かれた古い土嚢はすでに袋が破れており、どれだけメンテナンスをできるかが、この方法の正否を左右するものといえよう。 参加者の多くも、今後のこの事業の進展に大きな期待を寄せているようだった。鴛泊ルートでは合流点以下、危険な場所、変化が大きな場所は特になかったように思えるが、合流点直下の部分では貴重な高山植物もあり、登山道脇の沓形側の崩壊などにより、そんな植物たちも姿を消しつつあった。これだけ大きな崩壊の状態では、崩れるのを止める方法はなく、なんとも残念に思っている。
ブースの使用状況や携帯トイレの投げ捨て状況から、徐々に利尻山でのトイレ問題は昨年同様改善されてきたように感じられる。しかし、これらの問題はなにかをやったからといって一気に好転することはないだろう。粘り強く、多くの登山者に山が抱える問題に耳を傾けてもらったり、マナー向上の普及活動を地道に継続していくことが、登山者全体の気持ちをいつか変化させる大きな運動へとじわじわ浸透するものではないかと考えている。なお、今回は早朝における呼びかけは中止し、興味のある登山者に、「山のトイレを考える会」で作成したマナーガイドとパークボランティアで作成した利尻山のポストカードを配付した。
全道一斉のこの事業も今年で4回目となり、今年は6/27にこれまで同様の全道各地でのトイレデーが開催された。これは山開きにあわせたものであり、利尻では清掃登山の時期ではないため、会のノボリを両登山口にたてるだけの活動にとどまった。 秋のトイレデーとしては「山のトイレを考える会」として9/4に美瑛富士の清掃登山が実施され、利尻では年度当初の予定にあった9/11にこれまで通りの「トイレデー」を実施することとし、「山のトイレを考える会利尻グループ」および「利尻礼文サロベツ国立公園パークボランティアの会」の主催事業とした。 「山のトイレを考える会」が今後秋のトイレデーをどう位置づけるかはわからないが、利尻島では9月のこの時期の清掃登山を様々な人が参加できる活動として今後も継続していきたいと考えている。今年の活動の特徴は、体力や都合などの参加者の事情にあわせて、沓形途中引き返しグループ、沓形・鴛泊縦走グループ、鴛泊途中引き返しグループに班を分けたことである。当初は活動としてのまとまりがなくなることも懸念されたが、1)誰もが自分にあった活動を選ぶことができ、本来のボランティア精神に近い活動ができた、2)参加者の体力的な差が解消された、3)結果としてルートが分かれたため、清掃作業の分担が行われ、作業が楽になった、などのよい成果が得られた。 今後は参加者の安全性にも気を使いながら、このような誰もが参加できる選択肢をもった市民ベースのボランティア活動を「トイレデー」を利用しながら根づかせていきたいと考える。
(鴛泊グループの報告) 今回は2つのルートにわかれて活動を行った。本報告は参加者の感想などからなるべく全体の報告としてまとめるよう努力したつもりであるが、基本的に沓形~鴛泊縦走グループの視点にたったものであり、鴛泊グループからは別紙のような報告をいただくことができた。本報告でもらした点もいくつかあるので、別紙の通りそのまま添付することとした。作成者である大野陽子さんに紙面を借りてお礼申し上げたい。 |