第13回山のトイレを考えるフォーラムの報告

(2012年3月10日)

(写真撮影:山のトイレを考える会 西田弘氏。スナップ写真も同様)

フォーラムの案内     フォーラムのスナップ写真     フォーラム資料集の購入要領(送料込み600円)

平成24年3月10日(土)13時30分~16時30分
札幌エルプラザ「2階 環境研修室2」    参加者:38名

テーマ:「北海道の山トイレ 今私達にできること」

目 的:フォラームも回を重ねて13回目。今回は基調講演をしないで、時間をたっぷり使って、北海道の     山のトイレ問題に積極的に取組んでいる人、団体が一堂に介して日頃の活動内容と提言を発表、     改善に向けた具体的な取り組み、活動方法についてディスカッションする。


《資料集》
全てpdfファイル(資料番号をクリックしてください)
(注)資料集に掲載された寄稿等の著作権は著作者及び当会に帰属します。無断転載等は禁止します。
   転載等の利用は著作者及び当会の承諾が必要です。

01.表紙

02.目次

03.巻 頭 言:第13回フォーラム開催にあたって 岩村和彦(山のトイレを考える会 代表)

04.2011年 山のトイレを考える会 活動報告

05.2011年 山のトイレデー活動報告・概要・感想

06.山のトイレを考える会ニュースレター NO.12 2012.1.27

07.北海道の山岳トイレ事情と改善に向けた官民の取り組み 愛甲哲也(山のトイレを考える会)

08.北海道の登山スタイルとトイレ3題 横須賀邦子(NPO法人アース・ウィンド)

09.北海道の山岳トイレ問題の展望 小枝正人(山のトイレを考える会)

10.2011年度利尻山山岳年報 佐藤雅彦(山のトイレを考える会利尻支部)
              岡田伸也(利尻山登山道等維持管理連絡協議会)

11.羅臼岳登山道における携帯トイレ用ブース導入計画について
              野川裕史(環境省ウトロ自然保護官事務所 上席自然保護官)

12.斜里岳における山のトイレ及び携帯トイレの問題について 松尾 英樹(2011年清岳荘管理人)
              山下健吾 (NPO法人きよさと観光協会)

13.阿寒国立公園・藻琴山の山トイレ問題について 松尾 英樹 (東京農業大学 非常勤講師)
              外崎 秀和 (㈱ エコニクス 環境事業部)

14.2011年度幌尻岳の山岳環境保全活動報告、課題と改善策の提案 高橋健(日高山脈ファンクラブ事務局長)

15.国立公園の自然環境保全に関わって10年・その成果と課題 内藤美佐雄(美瑛山岳会理事長)

16.2009~2010年東大雪・知床等のトイレ・野営指定地の状況 黒澤大助(山のトイレを考える会)

17.携帯トイレ利用適地情報の試案について 土栄拓真(山岳ガイド・山楽舎BEAR)

18.黒岳バイオトイレのオガクズ掻き出し作業に参加して 仲俣善雄(山のトイレを考える会)

19.夕張岳ヒュッテトイレの現状 河村健(ユウパリコザクラの会)

20.山のトイレ問題はどこに向かうのか 上幸雄(NPO法人山のECHO代表理事)

21.上高地で思うこと・利用者負担について 鍛治 哲郎 (自然公園財団 上高地支部)

22.かながわパークレンジャーにおけるトイレマナー啓発活動報告 石川瑠美子(かながわパークレンジャー)

23.白山のトイレ事情 三谷 幹雄(NPO法人ネイチャープロジェクト白山)

24.屋久島新高塚小屋に新設されたTSS汚水処理システムトイレ
            小原 比呂志(屋久島野外活動総合センター・環境省自然公園指導員)

25.(前回)第12回山のトイレを考えるフォーラム報告(要点)  山のトイレを考える会

26.(前回)第12回山のトイレを考えるフォーラム議事抄録 山のトイレを考える会

27.編集後記 小枝正人(山のトイレを考える会)

1.開会挨拶・司会 黒澤大助

2.代表挨拶 岩村和彦
 2000年に当会が発足。当初は5年ぐらいの活動を考えていたが、13年目となった。本来は山の好きな人が一人一人、
ちょっと気を付けて行動することにより、80~90%問題は解決すると思う。
 まだまだ山のトイレマナーは程遠く会の活動は継続していかなければならない。昨年の山のトイレデーは雨の降る中で
美瑛富士避難小屋に行ったが、小屋周辺で短時間にトイレ紙を約80箇所で回収した。残念ながらトイレが無いのが続いて
おり酷い状態だった。
 今回のフォーラムでは講演は無く、もう一度原点に立ち返り、北海道で活動している様々な方に出席していただき、活動
の報告を聞いて、問題点と解決策についてみなさんとお話しできればよいと思っています。

3.2011活動報告 泉 恵子 
 内容は第13回フォーラム資料集2~3ページを参照 

4.活動報告(発表)とディスカッション

コーディネーター:愛甲哲也

《報告者一覧》

 ・黒岳バイオトイレの掻き出し作業に参加して   山のトイレを考える会 仲俣善雄
 ・幌尻山荘のトイレ問題について         日高山脈ファンクラブ 高橋健
                         幌尻山荘管理人    稲垣悦夫
 ・羅臼岳登山道における携帯トイレブースの導入計画について
                     環境省ウトロ自然保護官事務所 野川裕史
 ・携帯トイレ利用適地情報の試案について     山楽舎BEAR    土栄拓真
 ・羊蹄山避難小屋建替えに伴うトイレについて   北海道地方環境事務所
 ・トムラウシ山に新たに避難小屋は必要か     NPOアースウェンド 横須賀邦子
 ・夕張岳ヒュッテのトイレ状況          ユウパリコザクラの会 川村健
 ・空沼岳万計山荘のトイレ状況          万計山荘友の会    小笠原実孝
 ・美瑛町管内十勝連峰のトイレ状況        美瑛山岳会      内藤美佐雄
 ・東大雪・知床等のトイレ、野営指定地の状況   山のトイレを考える会 黒澤大助

〔要旨と質疑応答〕黒岳バイオトイレの掻き出し作業に参加して 山のトイレを考える会 仲俣善雄

【要旨】黒岳のバイオトイレは運用開始してから8年経過。オガクスを使ったコンポスト式トイレは4基ある。
    電気が必要でソーラー、風力、ガソリン発電機を使っている。最大設計利用者数は1日200人だが、
    利用者数が予想をはるかに超え、オガクスが水分過多となりバイオの性能が発揮されていない。
    そのため年5回ほどのオガクズ交換作業を余儀なくされている。
    昨年の10月オガクス掻き出し作業に参加したが、オガクスはベチャベチャな状態。ビニール袋に入れ、
    約60個、900kgを掻き出した。蓄電池も放電して使えない状態。これらの年5回掻き出したオガ
    クズは小屋閉鎖後にヘリで全て搬出。
    オガクズを使ったバイオトイレは立山の大汝休憩所3000mで環境省の実証試験を受けたが、その
    データがHPで公開されている。データを見ると設計最大利用者数を超えないように利用者数制限など
    をして細心の注意を払っている。その結果一度もオガクズ交換をしなかった。
    黒岳のバイオトイレAS-25PKの処理能力をカタログで調べると約20~25人。黒岳は4基ある
    ので80~100人となり、設計値時の能力と食い違いがある。
    その原因はともかく、改善に向け提案をしたい ①電気設備の原状回復 ②固液分離便器へ取り替え、
    尿をタンクに貯留しヘリで搬出 ③携帯トイレ利用環境を整え利用制限 ④トイレの維持管理に専担者
    を配置 ⑤関係者が一堂に介して改善に向けた話合いの場を設ける。

《質疑応答》

(横須賀:山のトイレを考える会)
  黒岳バイオトイレを良好に働かせるために管理する専担者が必要とのことですが、人数制限を誘導するため
  ですか。黒岳管理人ではできないのですか。
(仲俣:山のトイレを考える会)
  その他に携帯トイレブースでの携帯トイレの使い方アドバイス、バイオが順調に働いているか、気温、オガ
  クズ温度測定、オガクズ水分量チェック、オガクズ交換、発電量測定、発動発電機による発電、利用者カウ
  ンター測定、利用者アンケート、清掃など仕事がいっぱいある。黒岳管理人はトイレの清掃と基本的なデータ
  記録を請負っているがオガクズ交換は入っていない。黒岳管理人だけでは無理だと思った。
(横須賀:山のトイレを考える会)
  今現在、黒岳トイレの裏には掻き出したオガクズが残っているのか
(福井:上川総合振興局)
  シーズン終わりに全てヘリで搬出し残っていない。来シーズン用のオガクズや交換基材もヘリで運んである。
(横須賀:山のトイレを考える会)
  黒岳管理人とは別にバイオトイレを管理する専担者を配置するとした場合、資金を確保できるのですか。
(福井:上川総合振興局)
  個人的な意見ですけど、道の予算に計上するのは至難の業。協力金の徴収率はいろいろ工夫して上げる努力を
  しなければならないと考えている。ロープウィの入口で協力金の周知をするなどの工夫が必要であると思っている。
(黒澤:山のトイレを考える会)
  黒岳トイレに掲示してある看板にはバイオ、風力や太陽光を使った自然に優しいトイレと表示してある。
  登山者はオーバーユースで大変な状況であることを知らないので、そのようなことを協力して貰う意味で掲示
  周知してはどうかと思う。
(男性:会場から)
  ロープウェイに乗る人の内どのくらいの人が登山しているか分かりませんが、ロープウェイの料金にトイレ処理
  費用を上乗せすることはできませんか。
(愛甲:コーディネーター)
  事業者さんは料金を上乗せすることにより、お客が減少する危惧があり難しい。それは別としてそもそも何故
  我々が上乗せしなければならないのかとの話がある。
(山口:自然環境コンサルタント)
  今年、オガクズの入れ替え作業を請け負ったのですが、私の会社で6人、そのほか総合振興局の人、ボランティア
  参加を加え7~8人で約3時間の作業(登山の時間除く)とロープウェイ代が費用となる。あとバイオトイレに
  関するデータ収集の調査をした。その中でオシッコをする人は9割だった。オガクズの中の温度を温度センサーで
  測ったが、オガクズを交換した直後は温度が高くなりバイオが働いていることが分かったが、すぐに室温に近い
  温度になった。今回は国の地域雇用促進事業で臨時雇用をしたのでオガクズの替え時にすぐ対応できた。バイオ
  トイレの他に登山道の調査もしたが、オガクズ交換をタイムリーにするにはある程度人を確保しておく必要がある。
(仲俣:山のトイレを考える会)
  大汝休憩所ではコンポストトイレの実証実験が終わった後、休憩所のオーナーは環境省の補助で土壌処理方式を
  導入した。やはり安定した電気の確保、水分過多によるオガクズ交換が必要なことから高山には適さないと判断
  したようです。
(愛甲:コーディネーター)
  小枝さん、本州でも最近土壌処理が導入されている所が多いですが、コンポスト型トイレはどうなんでしょうか。
(小枝:山のトイレを考える会)
  山岳トイレの技術としてコンポスト型とか土壌処理などがスタートして10年ぐらい経つコンポスト型、つまり
  オガクズ充填式トイレは必ずエネルギーが必要。尿の水分を電気で飛ばす、水分をエネルギーを使って飛ばすの
  は一番非効率的な方法。ただ、10年前はよく分かっていなかった。諸々の理由で北海道の様に電気の無い山岳地
  で適さない方式だと判ってきてきたと言うのが実情です。
  山岳トイレではオガクズや杉チップをなどの充填式トイレは最近増えていない。
  昨年のフォーラムで勉強した土壌処理方式もいろいろ課題もあるが、オガクズ充填式トイレよりは山岳トイレに
  向いているのではないかと現時点では評価されている。これからも山岳トイレに適する画期的な技術はでてこない
  と思う。技術よりも別な問題を解決して、うまく適用して維持管理していくのが山岳トイレの課題と思う。
(岩村:山のトイレを考える会)
  黒岳トイレ問題では、黒岳バイオトイレの現状をロープウェイに乗る登山者に周知し、理解を求め携帯トイレの
  利用協力をお願いするのが最優先ではないかと思う。

■幌尻山荘のトイレ問題について   日高山脈ファンクラブ 高橋健
                  幌尻山荘管理人    稲垣悦夫
《質疑応答》

(愛甲:コーディネーター)
  幌尻山荘バイオトイレも同じような悩みを抱えているのですが、山荘管理人の稲垣さん、昨年の状況はどうでしたか
(稲垣:幌尻山荘管理人)
  昨年、水力発電は壊れる前に修理したのでバイオトイレも比較的順調だった。また天候も悪かったし、シャトルバス
  の導入、震災の影響などで入山者数が少なかった。
  私の感覚では1日約2kg、10人ぐらいまでの大便しかは処理できないと思う。
(愛甲:コーディネーター)
  導入時の設計最大利用者数は100人だったはずだが…。処理能力を超えると自動的に使用禁止ランプが点灯するの
  ですが、稲垣さん自身が見て判断しているのですか。
(稲垣:幌尻山荘管理人)
  そうです。電気がキチント供給されている時は割といいが、人数が多いとどうしても処理能力を超えてしまう。
(愛甲:コーディネーター)
  やはりバイオトイレ以外にトイレが必要なのですね。高橋さん、昨年は何回排泄物担ぎ下ろしをしたんですか。
(高橋:日高山脈ファンクラブ)
  昨年は2回実施した。7月の1回目は悪天候で糠平川の水量が多く、汲み取りだけした。9月の2回目は参加者23名
  で約360kg担ぎ下ろし、便槽内は空になった。
  黒岳はヘリで降ろしていると言うことですが、何回往復しているのですか。
(福井:上川総合振興局)
  正確なことは分かりませんが5~6回くらいと思う。上川町と黒岳石室の往復で次年度の基材の運搬も兼ねていますので、
  いずれにしてもヘリは必要である。
(愛甲:コーディネーター)
  幌尻山荘トイレは来年以降も排泄物担ぎ下ろしを実施するのですね。
(高橋:日高山脈ファンクラブ)
  ボランティア参加なので人件費はかかっていない。傷害保険料とバス代は必要でいつも助成金で賄っている。今年は
  バイオトイレが昨年並みに動いたとして8月、9月の2回を考えている。動かなかった時はもう1回7月にするかも
  知れない。今の水力発電機はベトナム製だが、今年、平取町で日本製に変える予定。
(岩村:山のトイレを考える会)
  ボランティアの人もだんだん高齢化している。永続的にできるシステムを考えないと。
(高橋:日高山脈ファンクラブ)
  現在トイレは4基。そのうち1基がバイオトイレ。朝はトイレが集中するのでバイオトイレだけでは処理できない。
  どうしても汲み取りが生じる。
(愛甲:コーディネーター)
  黒岳のオガクズ掻き出し作業に参加して思ったのですけど、上川総合振興局の人がオガクズ掻き出し作業を年5回も
  しなければならない事を見て、やるべき人がやるべき仕事をする状態になっていないのではないかと不自然に感じたこと。

■羅臼岳登山道における携帯トイレ用ブースの導入計画について
                    環境省ウトロ自然保護官事務所 野川裕史

【要旨】羅臼岳ではH24年度に携帯トイレ用ブースの整備がされ、H25年度から本格運用が開始される予定である。
    羅臼岳には登山道は3つある。知床連山の年間登山者数は8000人。9割は岩尾別コースの羅臼岳日帰り登山。
    トイレが無いので休憩場所周辺でトイレ臭がしたりティッシュが散乱している。
    H20年から携帯トイレ普及活動を開始。利尻で携帯トイレ利用が定着しているが、知床も登山道が少なく山中に
    トイレが無い、関連市町村も少ないなど似ている。来年度は硫黄山側にも回収ボックスを設置して全ての登山口で
    回収できる予定。携帯トイレを持っていない人も多く普及活動にもう少し工夫が必要と考えている。
    過去3年間テント型仮設ブースで試験したが、やはり維持管理が難しい。
    来年度銀冷水に木造の固定式携帯トイレブース2室を設置することになった。7月の海の日ぐらいから使えるように
    なる。維持管理は協議会を作りみんなで分担したい。実効性のあるものにするため、維持管理をした人(団体)を
    評価する仕組みも考えたい。

《質疑応答》

(黒澤:山のトイレを考える会)
  携帯トイレブースの設置は銀嶺水より糞尿やティッシュの散乱が酷い羅臼平がいいのではないか。H21年8月に知床を縦走
  した。羅臼平に40人近い人がテントを張っていて私もテントで泊まったが悪臭にはまいった。
(岩村:山のトイレを考える会)
  私も7年前に羅臼平でトイレデーをしてティッシュを100箇所くらい回収した。優先順位としても羅臼平に設置して欲しい。
  弥三吉水や銀冷水でも回収したが圧倒的に羅臼平が酷かった。
(横須賀:山のトイレを考える会)
  私もガイドで羅臼岳に年5回ほど登る。一回行くとスーパーの袋1個いっぱいを持ち帰っている。
(野川:環境省ウトロ自然保護官事務所)
  羅臼平も候補になりましたが、携帯トイレブースを管理できなければ全く意味がない。羅臼平は敵地だと思いますが、維持管理
  する到達時間それと景観上の理由で難しかった。まずは携帯トイレを普及させることが必要で、携帯トイレを使うシステムを
  導入する入口として銀冷水を選んだ。全工程の2/3の所で下りてくる人が利用する場所かなと思っている。銀嶺水には水が
  あるので管理し易いのも決めてとなった。羅臼平は次の課題としたい。

■携帯トイレ利用適地情報の試案について     山楽舎BEAR 土栄拓真

【要旨】10年前に比べて携帯トイレの認知度は高くなった。持っている方も多くなった。しかし実際使ったことのある人は少ない。
    要因は値段が高いとか持ち帰るのが不安とか種々あると思うが、どこで使えばいいのか分からないのも一つかなと。
    特に大雪山は見晴らしがよく、用を足す隠れる場所が少ない。携帯トイレブースの設置も期待できない。ここなら隠れて
    携帯トイレが使えますよと言う場所を地図に落とし周知すれば、携帯トイレの普及が進むのではないかと考えた。
    今回は旭岳~裾合平周遊コースを検討してみた。金庫岩周辺、裏旭野営指定地、中岳温泉上、裾合分岐脇沢について適地の
    条件を評価する基準を作り点数付けした。条件は「安心感」「安全」「環境への影響」「他登山者への迷惑」で評価。
    山のトイレマップにその情報を落とし込むと登山者も安心して携帯トイレを使ってくれるのではないか。ガイドである
    私自身がこのようなマップが欲しかったので試案として報告させていただいた。

《質疑応答》

(会場から:男性)
  適地を区間にしないでなぜポイントにしたのですか。
(土栄:山楽舎BEAR)
  できる場所はそれほど多くないが、区間で表示するという方法もあると思います。
(愛甲:コーディネーター)
  逆にこの情報を出してしまうと、そこがトイレ場になってしまうと言う心配もある。みなさんが携帯トイレを使ってくれるといい
  のですが…。この評価に管理のし易さを付け加えると携帯トイレブースの適地候補にもなりそうだ。最近トイレマップを更新して
  いないが、このような情報も盛り込むことも検討していくと良いと思う。

■羊蹄山避難小屋建替えに伴うトイレについて 北海道地方環境事務所 太田

【要旨】羊蹄避難小屋は㈱ティーエスエスの土壌処理方式トイレを導入する。北海道の山岳部での施行例はない。実際の工事は
    北海道に施工委任していて、まもなく実施設計を終了する。来年度に着工する諸手続きは終わっている。環境省では携帯
    トイレブースを避難小屋に併設して携帯トイレも利用できるようにすることも提案したのですが、維持管理をする地元の
    市町村から構成する協議会が難色を示し、見送った。

■トムラウシ山に新たに避難小屋は必要か NPOアースウィンド 横須賀邦子

【要旨】2009年7月のトムラウシ山での大量遭難事故が発生した。トムラウシ山は奥深く日帰り登山は十数時間かかる。
    しかし全国的に人気が高く初級~中級に至る手前の体力的技術的に無理のある登山者が多数訪れるので事故発生が顕在的にある。
    今回のような事故を防ぐ意味から新得町で避難小屋建設の話があった。私達はそれに反対する署名を500名ほど集め提出した。
    理由は ①避難小屋を造ってもそれをあてにした登山者が増えるので遭難事故は減らない ②原始的な景観が損なわれる
    ③小屋やトイレの維持管理が新たに発生することです。
    新たに避難小屋を造るとトムラウシ山のツアーは今の2~3倍増え事故は減らない。大雪山には避難小屋が7つあるが、その
    不便さが登山者数の均衡を保ち国立公園の原始的な景観が守られていると思う。

■夕張岳ヒュッテのトイレ状況について     ユウパリコザクラの会 河村健

【要旨】夕張岳ヒュッテはH20年からユウパリコザクラの会で管理している。ヒュッテの手前600~700m地点が駐車場で、
    その先はバキュームカーが入れない。築40数年経たヒュッテの貯留式500㍑トイレ2基は満タンだったので閉鎖した。
    それでヒュッテの外に新たに高床式トイレを会員のボランティアで建てた。固液分離便器で大便をタンクに貯留する。
    大便をした後にバクテリアを混ぜた木屑を散布する。バクテリアは高価で昨年から農家から籾殻をもらって使っている。
    昨年で2シーズン使ったが500㍑の便槽1/4に貯まっただけで、まだ心配していない。
    2シーズンの利用者は約800人、その内半数が大便をしている。いずれ満杯になるがタンクを簡単に取り替える方式と
    なっている。ティッシュは別な箱に入れてもらい後で焼却。小便もパイプで床下の200㍑ドラム缶に貯留している。
    小便は400㍑溜まって20㍑ポリタンクで駐車場にあるタンクに一度移し、バキュームカーで下ろした。
    駐車場の手前に仮設トイレが2基ある。日帰り登山者は殆ど冷水コースを使い、馬の背コースにあるヒュッテ前を通らないので、
    仮設トイレを使うことになる。満杯で閉鎖したトイレはコンクリート製で昨年掘り返し、中のものを掻き出して駐車場近く
    に移動、バキュームカーで降ろした。トイレもハンマーで壊し下界へ下ろした。
    新しい固液分離便器は箱型の手作りで高さが45cmあり少し女性に使い難いので今年改修したい。

《質疑応答》

(岩村:山のトイレを考える会)
  シーズン最盛期の朝はトイレに並ぶと言っていましたが、大便器と男用小便器が別の部屋になっていればいいですね。
(河村:ユウパリコザクラの会)
  隣スペースにエンジンを置いている。ヒュッテが建替えられてエンジンを移設できれば、別な部屋にできる可能性はある
(愛甲:コーディネーター)
  固液分離便器は自作ですか
(河村:ユウパリコザクラの会)
  会の藤井代表の自作です。トイレの小屋も彼が設計してみんなで建てた。
(岩村:山のトイレを考える会)
  固液分離便器は大便と小便がキチント分離できていますか。
(河村:ユウパリコザクラの会)
  時々大便がキチント分離できていないことがある。もっと使い易いものに変えたい。

■美瑛町管内十勝連峰のトイレ状況について  美瑛山岳会 内藤美佐雄

【要旨】トムラウシ山の大量遭難の後、北海道経済部環境局でツアー登山の実態調査を実施。美瑛富士白金温泉登山口の登山者数の
    推計値はH22年7~9月で969人。6~10月だと約1000人位か。オプタテ山の日帰り登山も多くなったが、小屋にも
    従来と変わらず結構泊まる。
    小屋周辺の糞便・ティッシュの状況も変わっていない。2004年山のトイレを考える会で糞便・ティッシュを回収する清掃
    登山をしたが、あれから8年のうち考える会2回、北海道山岳連盟1回、その他個人や団体でも行っている。美瑛山岳会では
    雪降る前に毎年ティッシュを回収している。
    十勝岳避難小屋は森林管理署が資材を提供、美瑛町と美瑛山岳会、地元の企業、その他山岳団体の寄付金で竣工した。
    冬山遭難を防ぐ目的の小屋で、資金的な余裕もなくトイレは設置しなかった。
    三川台は暗黙の野営地でテント泊が増えている。裸地、トイレ道も広がっている。

■空沼岳万計山荘のトイレ事情について 万計山荘友の会 小笠原実孝

【要旨】万計山荘は空沼岳登山道の丁度中間にありトイレ最適地。山中で用を足す人は殆どいない。H7年林野庁で管理を万計山荘
    友の会に無料で委託。建物が傾き倒壊の危機状態。トイレは木で囲った浸透式の粗末なもの。雨が降るとトイレを流れた水が
    万計沼へ流れ万計沼は大腸菌で酷かった。万計山荘では万計沼の水をポンプで引いて炊事に使っていたから下痢する人も多かった。
    募金を集めて小屋土台修繕とトイレを新しくした。トイレは強化プラスチックの便槽4基。風通しをよくするよう工夫した。
    便槽の排気口を屋根より高くすると太陽の熱で排気パイプが温まり上昇気流で空気の流れがよくなり、今はハエが一匹もいない。
    EM菌も便槽に入れアンモニア臭もない。ティッシュは汲み取り量の半分を占めることからダストBOXに入れてもらっている。
    殆どの人が協力してくれている。また、週に1回清掃をしている。水をかけブラッシング、タオルで拭き取り綺麗にしている。
    一度綺麗になると利用者も汚さない。トイレに募金箱を置いたがみなさん協力してくれる。
    万計山荘のいい所は林道があるのでバキューム車で汲み取りできること。一昨年、札幌市から小型バキューム車が定年になった
    ので廃車するとの通告。市として大型バキューム車があり支障はないが林道は小型バキューム車しか通れない。何とかしてもらう
    ため何回か市と交渉。要望がかない2トン車を改造して作るとの連絡。ただ運転手が狭い危険な林道を行きたがらないと言う。
    森林管理署に頼み林道に砂利を敷いて整備してもらい何とか汲み取りをした。
    ところが昨年の夏に大雨があり林道がズタズタ。また課題を抱えることとなった。

■東大雪・知床等のトイレ、野営指定地の状況   山のトイレを考える会 黒澤大助

【要旨】沼ノ原大沼の野営指定地にある環境省の看板には「大沼の水質を悪化させないように携帯トイレを使いましょう」と書かれて
    いる。360度丸見えでどうやって携帯トイレを使うのか。携帯トイレは回収ボックスの設置、販売などシステムがしっかり
    しないと普及しない。
    東大雪の回収ボックスは鍵がかかっていて、その横に「鍵番号は携帯トイレの中のチラシに書かれています」と表示してある。
    そこで上士幌町などに「どこに鍵番号分かる携帯トイレを売っているのですか」と電話聞いたが、皆さん転勤して引き継ぎが
    なく、そんな回収ボックスがあるのですかと言う始末。かなり前に北海道で大雪山での携帯トイレ推進事業をした時に東大雪
    区域の配布携帯トイレのチラシに書いたらしい。
    愛山渓の登山口にあった回収ボックスが無くなっていた。愛山渓温泉の人や上川総合振興局に問い合わせところ、回収ボックスに
    一般ゴミがどんどん捨てられるので、それを見たある男性の人が憤慨して愛山渓温泉の裏に隠したとのことだった。

《質疑応答》

(愛甲:コーディネーター)山のトイレ問題に気付く人も増え、行動する人も増え、取組みも増え、新しいトイレも出てきているけど、
  我々の声が届いていないことを痛感。まだまだ山のトイレ問題の改善活動は止められないと感じた。
(黒澤:山のトイレを考える会)
  携帯トイレについてですが、わざわざ買わなくても牛乳パックを使ってみましたが十分使えます。牛乳パックに用を足した後、ガム
  テープで締める。何回も使えます。臭いも出ない。帰ってきてからトイレに中味を捨て牛乳パックを一般ゴミに捨てた。
(愛甲:コーディネーター)
  黒岳トイレについては関係者が集まって話合いの場を設けた方がよいのではないか。また、もうちょっとこうしたら良いのではないか
  と言うのを北海道に出してもいいのではないかと思います。  

5.閉会の挨拶  副代表 小枝正人
  フォーラムも13回もやっていますが、実際に改善が目に見えることになっていないのが残念なのですけど、また14回目もしなければ
  ならないなと感じています。また、この1年も頑張っていきたいと思います。

                                                         (以 上)
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