第1回山のトイレを考えるフォーラムの記録(その4)


4. 意見の交換

Q. 環境ボランティア天空という全国組織

 酸性雨、水質悪化に対して動き出したボランティアグループ。携帯トイレを作ったとの新聞を読んで、ゴミがまた増えたと思った。最近になって山がこんなに汚れていることを知った。恐ろしいのは何10年後になって山からの水が汚れているということ。紙も薬品で染まっているので、その影響も心配。携帯トイレの後の処理について伺いたい。

A. 横須賀

 今、売られているもののほとんどは消却処分されている。抵抗あることとして、防水性からビニールしかなく、厚めになっている。2重3重となるとダイオキシン発生ということも考えられる。携帯トイレはこれから改良するべきものである。本州の登山者は富士山のたれ流しを見ているので、携帯トイレの使用に抵抗はない。

・上川支庁自然環境係 小林さん

 北海道と上川管内行政機関と山岳関係者で作っている、クリーン大雪運動推進会議というのがあり、そこで今年から大雪山のトイレ問題の取り組みをしている。携帯トイレの持ち帰りに向けた意識調査を今年から始めている。
色々な問題点があることがわかってきた。1つは降ろした携帯トイレを誰がどういう形で処理するのかという問題点。例えば自宅に持ち帰るのが基本にあったが、本州の人が飛行機の中に持ち込んで、東京なり大阪なりに帰るということは、実際不可能であろう。そうなると、地元の登山口等で回収するシステムを作らなくてはならない。
今回試験的ではあるが、旭岳と層雲峡のビジターセンターに携帯トイレの回収ボックスを設置し、ダイオキシン対応の最新の炉で試験的に消却処分している。ただ、これを大雪山全山に広げていった場合、炉が新しくない町村もあり、運搬する手だても問題。それとロープウェイ等交通機関の中を、処理の悪い携帯トイレが通ってくると、一般の観光目的の利用者の方に不快感を与えてしまうだろう。これも対策が必要。どれだけ認知されるかわからない段階で、無差別に携帯トイレを配った場合、携帯トイレ自体が山に放置されたりとか、新たな問題が起きる可能性が高い。
今回は意識調査ということで、旭岳と層雲峡のビジターセンターの2ヶ所で希望者に配るという形をとっている。
配っている実物はメーカーに話し、新しく開発した物である。すけない色合い、厚手のビニール、ジッパーも強いもの、臭いもそうとう防げる。中に脱臭剤もセットで入れている。今後認知してもらえるかどうかアンケートを行い、行政への意見欄も多くとっている。また、ちらしの裏面にはメールアドレスやFAX番号を入れている。とりあえず、試験的に携帯トイレを使ってもらい、色々な意見を参考にしながら、次年度以降の取り組みを進めていきたい。
トイレを大雪山に設置した方がいいのかどうかという問題は残っている。ただ、どんなトイレを設置するのかを考えた場合、大雪山系で機能的にうまく使えるトイレというのは技術的にむずかしいと思う。唯一使えるとしたら、汲み取り式、カートリッジ式などだが、ヘリコプター運搬には相当なコストがかかってくると思う。
今、白雲とか忠別にある避難小屋のトイレは水分が浸透していくタイプのトイレで、これだと溜まるのに相当年数がかかるが、当然これから先は地下水の汚染の問題等が出てくるので、やはり完全貯留式というのを考えた場合、1年、半年ぐらいでトイレが満杯になってしまうという場所も出てくると思う。そうなると、大雪山系に10、20トイレを作ったとしても、その運搬をかけて処理をしていくことは非常に大変なことだし、先程の話しにあったように、トイレがあっても外でする。実際、トイレに行く時間は集中するので、そこにトイレが何基あればいいのかという問題を考えるとかなり検討をしていかないと難しい問題だと思う。大雪山系にトイレがあちこち建っている姿が正常な姿なのかどうかも検討していかなければならない。
そういう諸々の事を来年以降、携帯トイレの施行と合わせて検討していきたい。どんどん行政の方に意見を寄せていただければと思う。
植物の踏み荒らしという問題は、携帯トイレだけでは解決できない。携帯トイレを使用する場所を設置しなければならない。とりあえず試行期間ということで、はたしてそれが認知されるかどうか。どれくらいの耐久性があるのか。黒岳の石室に今2基設置してある。この使用状況や同等の耐久性などを見ながら、全体的に展開できるかどうかも含めて検討していきたい。


・りんゆう観光(黒岳ロープウェイ) 植田さん

 自然公園指導員としても仕事をしている。自然公園指導員の会議の場でトイレ問題とか国立公園内の施設の維持管理の問題については、色々な議論を活発に戦わせてきた。その中には行政や環境庁もメンバーに入って、10数年前から論議をしてきている。
ここ3、4年にかけて携帯トイレ問題が出てきた。携帯トイレを批判するということではないが、携帯トイレも山のトイレのひとつの手段だと思う。携帯トイレが全ての事を解決していくということで、論議をしていくことについては異論を唱える。使用済みのトイレをどうするのかという論議もなしに携帯トイレを使おうという話しが広がってきた。
現場にいてお客を山に上げたり、一般の観光客も案内している立場としては、大変不安に思う。色々な観点から山のトイレを考えてもらいたいし、携帯トイレはあくまでも1つの手段として考えないと、山麓にある交通期間は大変である。
利用者のレベルアップをどう計るのかも論議しなければならないし、国や道が一方的に理論を展開して話しを民間にぶつけてくると、民間の側はその後処理に苦労することが起こるので、幅広い論議ができる場を設定してもらいたい。
役所が物事を決めて進めていくということではなく、例えばクリーン大雪連絡協議会などにも民間の側も入らせてもらい、現場としての経験を伝えさせてもらいたい。


・横須賀

 携帯トイレを使ってみて、ゴミの多さと運搬の難しさを実感している。取り組みやすいが自分の範疇で終わらない。受け皿がしっかりしていないとゴミが増えることになる。
携帯トイレは自宅まで運び自分の自治体で処分するという形を実行しているが、3泊4日の山行でははたしてできるだろうか。様々な登山経験のお客さんに対して、簡単には取り組めないという印象。まず抵抗。携帯トイレの普及、運搬方法、回収方法を検討しながら、意識調査を各地で行い、その結果を見てから普及させる本格的な動きになっても良いと思う。
ただ、その前にやれることはある。北海道の山はアプローチが長いので、せめて登山口にはすべてトイレを設置してほしい。そして、そのトイレは間代材のカラマツを利用して単純なトイレを設置してほしい。
その管理は問題になってくるが、有名な山になると1日に200人ぐらいは使うだろうが、普通の登山口だったらそれほどではない。せいぜい60~70人であろう。それなら管理する必要があるだろうか。1ヶ月ぐらいのピーク時だったらもつのではないかと思うので、管理がなくてもトイレは建てられるという考え方もしている。
それから、野営地と小屋のある所には当然トイレを設置する。たしかに大雪山の中に幾つもトイレを作り、その後どうするのかという問題は出てくるだろうが、何かを始めてみないとクリアしていかない問題も浮上してこない。

・電気で消却するトイレを扱っている業者さん

 何かの役に立てばと紹介。電気消却トイレは100Vの電源で、普通のトイレ様式。大便、小便を完全に電気で消却する。灰分としては大の方で、1回分がスプーン1杯になる。それを袋に入れて燃えるゴミに出す。トイレ本体の下に灰を受ける灰皿があり、これに70~80人分ぐらいが対応できる。電源があればどこでも簡単に設置できる。下水、浄化層はいらないし、水も流さない。特別の脱臭システムで臭いもない。消却後は少量の灰が残るだけである。


・万形山荘友の会 松浦さん

 携帯トイレやオーバーユースの問題とか、広い問題とつながる課題が話されてきているが、足元にはもっと具体的にすぐできる問題がたくさんある。そういう問題とつなげていかないと議論は色々あっても進まないことになる。
札幌近郊の登山口にはあっても、粗末なものしかないし、ほとんどの登山口にはトイレもない。日本の山岳トイレの問題は、貧困極まりない状態で、そこから考えるべきと思う。当然してあるべきことを何もしていない状況、山岳トイレが一番遅れている。
富士山はひどい。よくがまんしていると思うほどのひどいトイレの連続である。北海道のほとんどの山小屋のトイレは浸透式のトイレでほとんど汲み取らなくてもいいのだが、土壌はどんどん汚染される。
万計山荘でいえば、万計沼がたぶん登山者の汚物で大腸菌が発生している。万計山荘は森林管理局が管理しているが、赤字なので市民がボランティアで管理しているが、使っているのはほとんどが札幌市民なので、市の方でやってくれないかと訴えると縦割行政でやってくれない。市民と行政の力を合わせてできるトイレ、車の入るところは閉鎖式の汲み取りトイレにするべきと考える。
携帯トイレも広めながら、小屋のあるとこにはトイレを設置していき、ない所でもオーバーユースになっている所には、移動式でも季節的でも設置していく取り組みをやっていくし、またやってほしいと思う。


・札幌市 小枝さん

 登山者のデータを統一した形で記録統計をとり、インターネット等、誰でも使えるような仕組みにならないだろうかと考える。現在はどうなっているのか。


Q.札幌稲西高校ワンダーフォーゲル部OBOG会 薩田さん

 電気消却トイレについて、臭いはでるのか。電源について風力発電機と組み合わせて設置するとか、コストの面についてお聞きしたい。

A.臭いは特殊な脱臭システム装置を取り付けてあるのと、強制ファンによって外てに臭いを出す装置も取り付けている。電源は100V。費用については特殊なペーパーを使うことになるが、1枚20円。だいたい2時間で1人分消却するが、2時間経たないと次の人が使えないということではない。電気料が2時間で50円ぐらいとなる。合わせて1人70円ぐらいだが、本体は少し高く定価で92万円。メーカーから割り引きもあるだろう。実績としては道路工事現場の軽トラックに本体が取り付けられており、電源は発電機。札幌に20台ぐらい出ている。
風力発電機と組み合わせることは可能。電源が100Vの1250W。風力発電機でまかなえるかどうかはわからないが、一般的なメーカーで出している発電機で対応している。


・伊藤さん

 登山口にトイレを置くというのは大原則だと思う。そこで済ませれば、帰ってくるまでもつ。行政はもっと積極的に色々なトイレを研究してほしい。携帯トイレは臭いの問題解決が必要。トイレテントを人数が多い時には設置してもいいのではないか。


・鎌塚

 配布した携帯トイレは南アルプスクラブから頂いたもの。山梨県と地域環境財団の支援により世論が動いた。要望が高まっていき、北岳に15基のバイオトイレと中間に2基のトイレを設置した。行政を動かすには自分達も動かなければならないと思う。

・りんゆう観光(黒岳ロープウェイ) 植田さん

 ロープウェイ山頂駅にあるトイレの物は、整備期間中の冬に社員が降ろしている。登山者には町の浄化槽に継がっている山麓駅のトイレを使用してほしい。

・苫小牧山岳会(道岳連) 泉田さん

 溶けるティッシュを配っていたが、昨年よりやめている。子供の紙オムツはさわってもぬれた感じがしないが、携帯トイレとの違いはあるのだろうか。山で使えるのではないか。

A. 愛甲

 基本的には同じ高分子吸収体を使っているはず。外側の素材は違う。
 ヒサゴ沼に木道があり、年々延びているが、違和感を感じる。行政と登山者と話し合う場が必要と思う。


5. 閉会挨拶DUMMY道央地区勤労者山岳連盟 理事長 山本裕之

 当連盟では今まで開発に対する自然保護活動が中心であったが、近年オーバーユースによる保護にも目を向けている。今日のようなフォーラムでの意見等を参考にしながら問題解決に取り組んでいきたい。


6. 閉会宣言 鎌塚 敬子


ー参加者156名 かんぱ金 51,400円ー

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