1.開会挨拶 司会 上井博志
2.代表挨拶 岩村和彦
今日は山のトイレフォーラム第10回目となります。初めて開催したのは2000年ですから丸9年前、6月から10年目に入ります。
当初、私たちは5,6名の有志が集まって会を立ち上げたのですけど、5年ぐらいも活動したら、ある程度山のトイレ問題はかたがつくのかなと思って、気楽な気持ちで始めたのですけど、もう足かけ二桁になろうとしています。これまで会が続いてきた事自体は喜ぶべきことかも知れませんが、逆な意味で考えますと山のトイレ問題、一朝一夕には解決できない、それには勿論私たち会の努力不足とかやり方の拙さとかあるのでしょうけど、そう言う意味では、素直に喜んでいいような喜んでもいられないような複雑な気持ちです。
みなさん方から見て北海道の山はどのような状況に写っているでしょうか。私から見ますと少なくとも紙の持ち帰りにつきましては、データから見ますとほぼ50%は実践していただいているのかなと。しかし依然として羅臼岳の羅臼平だとか幌尻岳の七つ沼では、いまだにゴミとか使用した紙とか、わざと置いていったのか寝袋まであった。美瑛富士避難小屋トイレは今日のメインテーマですけど、以前、清掃した時は52の大便、150近くのティッシュを回収してきたのですが、やはりまだまだ私たちが目指す山の環境にはほど遠いと思っています。
美瑛富士避難小屋トイレは突き詰めて考えると100%というのはありえない訳でして、そう言った面では完全を求めてもしょうがないのですけど、それでもある程度、もう少し目処をそろそろつけたいなと言う感じはしています。
私も会を立ち上げた当初は40代で元気バリバリだったのですけど、すでに10年近く経っていますので、体力、気力ともに10年前からは衰えてきています。このままで解決されないで山のトイレを考える会が永遠に続くと考えると、殆どの会員が絶望的な体や精神の状態になりそうなので、今回10回目を迎えるわけですけど、何とか20回などと言うフォーラムを迎えることなく目処がつければいいなと。
今日、午前中に総会を開催させていただきました。規約の改正とか一部役員の変更とかさせていただきました。いずれにしても全員が、山のトイレを考える会は、全くの趣味と申しますか、仕事以外でやっている世界でありまして、今日参加の皆様から見ますと、もっと迅速にできないのかとか色々なご意見はあると思いますが、手弁当でやっていますので、何とぞ至らない点がございましたらご容赦いただきたいと思います。
3.2008活動報告 黒澤 大助
※内容は資料集2~3ページを参照願います
4.美瑛富士避難小屋に似合うトイレ(案)説明 仲俣善雄
※山のトイレを考える会(案)Ver.1(説明文)・(別 図)
5.講演 北海道大学教授 船水 尚行氏
(演題)最先端技術としてのドライトイレ(水を使わないトイレ)
※内容は資料集13~15ページを参照願います。
6.デスカッション
(コーディネーター) 山のトイレを考える会 岩村和彦
(岩村)
鳥取県の大山で昨年から新たな取組みをしている。その旗振り役をしてきた鳥取県の柳楽さんから、その内容を紹介してもらいます
(鳥取県:柳楽)
鳥取県の米子市からまいりました。鳥取県の職員でして、国立公園大山の施設管理、国立公園の許可の管理などの仕事をしている。大山の頂上にトイレがあるが、その担当もしている。山頂の避難小屋にH13年に補助金で整備をした浄化槽付きのトイレがある。電気は無く太陽光の発電と風力発電を使って浄化槽を動かしている。トイレの水は循環式で処理した水を水洗に使っている。昔はポットン便所2基だった。現在は3基あり、1基はポットン便所そのまま、2基を水洗化した。ポットン便所は浄化槽に掻き出すシステムにしてある。設置してから7年も経つと残渣と言うか汚泥が残る。またバッテリーも寿命がきていて交換する時期にきている。当初はバッテリー交換と汚泥の引き抜きにヘリを使って下ろす案もあったが、環境に影響を与えるのではないか、特に野生動植物に配慮した時に、できることなら人力でできないかと。検討した結果人力で下ろす「キャリーダウン」に取り組むことにした。ボランティアの皆さんに声をかけて、昨年の9月28日に実施した。
「キャリーダウン」のほかに9月1日、立ち小便をしない、野糞をしないことも含め、トイレマナーを向上させる「マナーアップキャンペーン」を実施した。この時に「大山のトイレマナー五ヶ条」を設定した。特に頂上のトイレはなるべく使わないよう理解を求めている。大山の登山口トイレで用を足して欲しいと。大山は日帰りできる山で携帯トイレの利用も呼びかけた。
「キャリーダウン」は全国まで広報できなかったですけど、新聞やテレビ等に取り上げていただき、全国からボランティアで451人の参加があった。トータルすると1.2トンの汚泥を担ぎ下ろした。山頂まで2時間半ぐらいで登って、私たちの用意した汚泥の入った2㍑のボトルを1人1本ザックに入れて担ぎ下ろす作業です。当初500人応募して250人ぐらいの参加で1人2本と考えていたが、多く集まってくれたので一人1本で物足りない人もいてウンコの取り合いになった。今日、ボトルを持ってきているのですが、できるだけ多くの人に運んで貰いたい、密閉式で口が広いものを捜した。実際には、一回漁業用のタンクに貯め沈殿させ、ボトルに漏斗を使って詰めると言った工程です。詰めた後、消毒をしてビニール袋にくるみザックの中に入れて運ぶと言った取組みでした。実際にやってみた感想ですけど、みなさんに達成感と言うか一体感のある取組みであったと評価していただいたし、こういう機会がないと、子供と一緒に大山登山はできなかったと言う人もいて、大変喜んでもらえた。今年も実施する予定です。
(仲俣)
山頂トイレは具体的にどんな仕組みのトイレですか。
(柳楽)
浄化槽式のトイレで、水は雨水と尿を処理したものを循環させている。
(仲俣)
今回運んだのは汚泥だけですか
(柳楽)
汚泥と水分です
(仲俣)
山頂トイレのメンテナンスはどうやって
(柳楽)
毎年、浄化槽の業者にお願いして点検だとか清掃はしている
(岩村)
メンテナンスのコストはどのくらいかかっているのですか
(柳楽)
約220万円。山頂に売店があるので、民間の人に週1回程度の清掃をして貰っているのと、専門家による浄化槽の点検整備。発電機があるので電気関係の点検整備。水を循環させている管を冬期に外す作業等がある。
(蜂谷)
ヘリコプターだとどのくらいの費用がかかるのですか
(柳楽)
350万円ぐらいかかる
(船水)
大腸菌群数はどれくらいか分かりますか。循環している水は触れますか?消毒薬は日常的に使っていないですよね。ジア塩素酸とか。「水に触れると危ないですよ」とトイレの中に表示が必要です。もう一つは循環式だけど雨水と尿がどんどん入ってくるので、量が増えた分、捨てていることになる。どの位の量を捨てているのか、これから見るといい。洗浄水は黄色いでしょう。
(岩村)
さきほど仲俣が説明した17ページの美瑛富士避難小屋トイレ(案)で、船水先生の話を聞いていると尿の土壌処理が気になる。土壌処理ではリンとか窒素とかの処理はどうなんですかね。
(仲俣)
私も正確なことはよく分かっていないのですけど、リンは土壌に附着するが、窒素は硝酸性窒素に変わるだけで、基本的に処理できないようだ。
(岩村)
そうすると、17ページの絵では、土壌処理後は「清水で地中に自然浸透」と書いている。環境的に問題ないと考えていいか。
(仲俣)
処理する尿に対する土壌処理の体積等によって変わると思うが、実際に私もよく分からない。
(岩村)
山岳トイレには、様々な処理方式のトイレがあるが、山のトイレを考える会としては、美瑛富士の山岳環境、とにかく管理人がいない、幌尻山荘や黒岳のバイオトイレを見ても、発電などとかいろいろな事をやると、なかなかメンテが大変だと言うことで、とりあえず会として案を出させていただいた。
(仲俣)
実際に環境省補助で土壌処理方式トイレを設置して、循環させない方式でそのまま処理水を地中に浸透させているトイレは全国で何箇所かある。それは、固液分離をしないで土壌処理している所と固液分離して尿だけ土壌処理している所がある。ただ、土壌処理した後の水質データを私たちはよく分かっていない。
(蜂谷)
リンや窒素は取り出して活用することはできないのか
(船水)
今の世の中だとリンと窒素は肥料として一番価値がある。畑があれば一番いい。山では問題がある。
(蜂谷)
リンや窒素を凝縮して取り出すことはできないか
(船水)
尿からリンの化合物を取り出すことはできるが、山のトイレでは難しい。尿を下界まで運んですることは可能だが、山のトイレでそれだけ取り出す事はそんなに単純ではない。土壌処理では最初はリンが吸着するが、だんだん吸着しなくなる。リンを土が吸着するには限界があるので、何年かに1回は土を取り替えなければならない。ですからその辺の見込みをつけたらいいと思う。この方式を採用する場合は、1シーズン何人使いそうだから、どの位の大きさにするのか、それは何年に1回取り替えるのかと言うのを明確にしてからやるといいと思う。窒素は残念ですけど取れません。山でないですけど、道東の地域の地下水が汚染されていますのは全部窒素です。家畜の糞尿とか肥料で地下水の窒素成分がどんどん上がっている。残念ながら窒素に関しては土壌の中で硝酸窒素に形が変わるだけで、あるレベルを超えると飲んではいけないと言う基準が決まっている。山ではどうかと言うと別だと思うのですけど。それについては垂れ流しをするんだと覚悟の上でやりましょうと。ですから17ページの絵に「清水」と書くのは止めた方がいいと思います。綺麗と言う意味は、場所によって違う。完全な技術は無くて、担ぎ下ろすことが難しいとすると、そこである程度の覚悟して、若しくは正直に書いて実施すると。どちらにしても何年かに1回土壌を交換する前提で考えることが必要。
(女性の参加者)
山では生態系の維持で問題なのかも知れませんが、植物で吸収させると言うのはどうですか
(船水)
植物に吸収させたら、それを刈り取る必要がある。私たちが出す窒素とリンの処理には、残念ですけど相当面積を広くする必要がある。山の植物は基本的には栄養状態が悪い所で耐えてある形になったグループの方が多いですから、それとは違うものを用意しなければならない。町の中で刈り取りを前提にする場合はいいかも知れない。
(泉田)
あそこは特別保護区ですから土壌を入れ替えるのは不可能ですよね。町の土を持っていくことはできない。
(北海道環境事務所:藤森)
美瑛富士避難小屋トイレに土壌処理を採用する場合、適した面積が確保できるのか。土壌処理でも周辺に漏れない方式もあるのではないか。植物浄化の関係では、美瑛富士避難小屋周辺に自生している植物以外を持ってくるのは問題。
(岩村)
会として悩ましいのは、理想をどこまで追い求めるのかなと言う部分だと思う。どこからどこまで許されて、これ以上はやっぱり我慢しょう、止めようよ。でもここまでは、毎日何百人も行って大量にする訳ないのだから何とか許して貰えないのかなと。
2006年に環境省と北海道庁に26、768筆の署名を提出したのですけど、なかなか色々な問題もあり、一体どこの所で折り合いをつけるか。極論ですけど、一切止めて、完全に携帯トイレだけにするという考え方もある。それをやるやらないは別にして…。それから今、当会で考えた案、まぁ、こういう形だったら最小限、そんなに甚大な植生の被害は与えないで、なおかつ登山者が快適なキャンプができるではないかと提示させていただいた。
(厚別区:山口)
私も仕事柄調べたことがあるのですが、尿は現地処理でなく、持ち出した方がよいと思います。段階的に全体のシステムをどう構築するかと言うことなので、すぐに完璧なものはできないので、こう言うやり方もありかなと思う。それから、二つあるのですが、大便のカートリッジをヘリで搬出するのですが、その後の処理が問題になると思います。一度希釈してバキュームカーで吸い上げて最終処理場へ持っていくのですが、含水率の低いカパカパな状態では後の処理が困ると聞いている。逆に言うとカートリッジが乾燥した糞が満杯になった状態では希釈できないことが想定される。そこはよく考えた方がいいと思います。だからと言ってこれを否定する訳ではありません。使い方の問題です。
もう一つ、システムの設計の話なのですが、何らかの理由で、このトイレがうまく機能しなかった場合にどうするか、危機管理と言うかバックアップシステムを考えておいた方がいいと思います。要するにちゃんと機械は動くと言っても、圧力関係では安全弁がありますし、ドレインタイプもありますし、機械産業であれば必ずバックアップシステムがある。これを付けちゃった、これだけに頼っちゃった、何かトラブルあった、どうするべぇ、と言う話になることもある。結論として私は携帯トイレを美瑛トイレのバックアップシステムとして使えるのではないかと。提示された案は、多分、日本で考えられているいろいろなシステムで疑わしいものを排除すれば、私もこれに行き着くと思う。
(岩村)
とりあえず、色々な想定をした時に、極力電気とかメカニック的な部分を排して、なおかつ極力シンプルでと考えた時にこの案になった。
(北海道市民環境ネットワーク:倉持)
北大の山スキー部では、現役が山小屋を二つ管理している。一つはパラダイスヒュッテ、もう一つは無意根小屋です。今、無意根小屋がそろそろ80周年を迎えるので、記念にトイレはどうかと言う話が持ち上がっている。パラダイスヒュッテは実は土壌浄化方式を使っている。合併浄化方式で台所の汚水も糞尿も全部、土壌浄化で処理している。土壌浄化法の考え方は重力で地下に浸透させるのではなくて、地下には浸透しないように不透水膜をトレンチに巻いています。上にかけた土で地上の方に浸透させ、汚水を土壌菌に食べさせると言う考えだそうです。
パラダイスヒュッテは13年経ちました。土壌浄化法だけでは、建築基準法上で難しいので、実はその前に合併浄化槽を挟んでいる。合併浄化槽までは20ppmの汚水が出てくるが、さらに土壌浄化し、全部地中に浸透させている。公共水域には一切汚水を出さない方法をとっている。ただ、パラダイスでうまくいったのは、地下室があり真冬でも+6℃で、凍結の心配がない。無意根小屋の場合はそうはいかないので、土壌浄化法を採用するのは難しいかなと。土壌浄化法でうまくいっているのは安平町に追分こうよう小学校という廃校がある。そこも土壌浄化法でトイレの処理をしている。パラダイスはそこを参考にした。美瑛富士避難小屋トイレに土壌処理を採用するとしたら、やはりリンの処理。パラダイスは、地中に40mのトレンチを廻している。その上に笹がびっしり生えている。笹が全部吸収してくれていると思う。美瑛の場合はどの程度必要か分からないのですが、例えば温室方式にして、吸収してくれる植物を植え、刈り取って下界に下ろすと言う方法が考えられるのかなと。
(船水)
土壌処理は綺麗にはなっているけど、完璧にはなっていない。土壌処理をして経年的に何年も使っても、酷いことになっていかない理由は雨と雪です。雨や雪で希釈しているのが、長く保っている秘訣。絶対に消えてなくなることはない。どこかに捨てていることになる。砂漠で土壌処理をすると、どんどん貯まっていく。塩も含めて。人間は1gか2gの塩を出している。日本で見えないのは、雨が降って流してくれるから。パラダイスは沢もあり、結局下流へ捨てている。それでうまくいっている。それが悪いとは思っていない。
(倉持)
要するに、どの程度流せるかと言う許容量の問題だと思う。
(船水)
そうですね。パラダイスの場合は土壌処理装置の上にも雨が降り、上から雨水が入り外へ流れている。それでうまくバランスをとっている。ですから美瑛の所にも沢筋があって沢に捨てられるなら、どのぐらい雨の時に捨てようかと。土壌処理の可能性についてもそのような見方もある。
(北区:中井)
私が若い時に経験したことがある「凍結融解法」という尿の処理方法がある。1回凍らせて水とリン等の物質に分離させる方法。美瑛の山ではマイナス20℃にはなるので、一度凍結させて、分離して濃縮して下界に下ろす方法もありうるのかなと思った。汚泥も1回凍らせて水と固形物に分離させる方法もある。
(船水)
理屈として可能性があるかも知れない。水の方から凍ってきて、氷だけを先に分離させると濃縮できるかも知れません。ただ、それにどのぐらい混ざるのか。寒い時に美瑛の小屋でやらなければならない。尿は2~3週間貯めておくと沈殿が起きる。色が赤茶けた色に変わってくる。必要なものだけ沈んでくれればいいのですが、そう単純ではないが、可能性はないとは言えない
(中井)
山の中であれば、凍らせて水分だけ取って、濃縮したものを下界に下ろす。薄くして四方八方から凍結する方法をとれば、面積は必要と思うが、自然界の温度を利用したもので、できればいいのかなと閃いた。そのほか天日乾燥がある
(船水)
日本は雨が多いので、天日乾燥はなかなか難しい。塩を作ると同じですが、なにか手助けをしないと現実的に難しい。
(岩村)
当会が作った案で、特に土壌処理の水の部分はもっと研究してく必要があるのかなと思いますが、先の環境省との意見交換でも言ったのですけど、何とかトイレの目処をそろそろ付けていきたいなと。理想を追っていったら10年、20年、30年といつなるか分かりません。どこかの段階で、枝葉末節の部分はあるかも知れないけど、何とか3年以内には目処をつけたいと、個人的には思っています。いつまでも、どうだこうだと議論していてもしょうがないなと。今日出席しています自治体、国の皆様には是非ご協力していただいきたいと願っています。
昨年の黒岳バイオトイレの状況を上川支庁の大道さんからお話いただけたらと思います。
(上川支庁:大道)
資料の59ページに20年度の運用状況について載せました。運用開始からなかなかうまくいっていないと過去のフォーラムでも報告しています。年に5~6回、オガクズを全部交換しています。そして結果的に掻き出したオガクズは年1回ヘリで下ろしていますが、これらにかかる費用も年数百万円となっている。当初、バイオトイレを導入する中で維持経費は安くできることで採用したのですけど、結果として毎年数百万円のお金がかかっています。バイオの機能が生かされていない。その原因は尿の量がかなり多いこと。それでどうするかなのですが、今のトイレを改良して固液分離にする。分けた後の尿の処理方法について船水先生、愛甲先生にアドバイスを受けながら検討している最中です。山岳にバイオトイレを導入したのは、北海道では黒岳が最初。黒岳である程度成功していかないと、2例目、3例目の山岳トイレを作る場合、やはり問題がでてくるのかなと。幌尻山荘の失敗例も聞いていますので、これ以上、美瑛も失敗にならない様、いい例を作っていきたいと考えている。近いうちに結論を出してやってみたいなと思う。
(岩村)
幌尻山荘の話がでましたが、48ページに日高山脈ファンクラブの高橋さんから詳細な報告を掲載しています。また、幌尻山荘のトイレを作ったメーカーの話が106ページから掲載しています。端的に言うと、事前に想定した本来作るべき数が作れなくて、オーバーユース状態になっている。幌尻山荘のトイレについて、平取町から来ている本田さんお話していただきますか
(平取町:本田)
昨年4月に役場に採用されたばかりで、幌尻山荘のトイレがどのような経緯で作られたか詳しく分からないのですが、昨年7月の幌尻山荘フォーラムと排泄物担ぎ下ろしに参加しました。バイオトイレがうまく稼動していない時に点灯するパトライトが点いていても利用する登山者もいて、登山者のマナーが欠けているのではないかと個人的に思いました。水力発電装置が山荘の下に設置されているのですが、来年度、これを移設する予算もつけましたので、振動音がなくなり、山荘の環境が少しよくなるかなと思います。山荘は完全予約制で4月1日から予約受付開始する。今までは午前中の受付だけでしたが、4月、できたら5月も1日中、予約を受け付ける方向で調整しています。確定しましたら町のホームページに掲載します。
(岩村)
1日に受付を延ばすのは、午前中だと不便だからと言うことですか
(本田)
電話が繋がらないと役場の方に電話がかかってくることが多い。6月、7月になると殆ど予約が埋まってしまうので、4月に受付時間を延ばす方向で話を進めている。
(黒澤)
7月の幌尻山荘フォーラムに私も参加したのですが、登山者の話では、電話をかけても全然通じない。やっと繋がったと思ったら、9月まで予約がいっぱいですよと言う状況のようです。ツアー会社が真っ先に予約を取ってしまうので、その辺をなんとかして欲しいとの意見がでていた。抽選にするとか、平等に小屋を活用するようにして欲しいとの意見がでていたが、その辺について何か対策はとられましたか。
(本田)
今年はもう、始まってしまうので、来年に前もってツアーに人数制限を設けて、一般の方より前に予約を受け付ける方向で話を進めている。
(岩村)
枠を決めると言うことですね。それ以上は受付ないで、個人用に確保しておくと。
(本田)
確定ではないが、そう言う方向で検討している。
(岩村)
次に携帯トイレの話ですが、日本の登山の中ではモデルになってきているのかなと思うのですけど、利尻山の取組み状況について、住吉さんからお話願えますか
(利尻富士町:住吉)
利尻島には利尻町と利尻富士町があるのですが、登山道維持管理連絡協議会を作っている。山のトイレを初め、登山道のあり方だとか、色々な啓発をしています。資料は29ページです。30ページに携帯トイレ回収率の表があります。H19年は回収率38%と前年より下がっていますが、回収数のカウントの不備もあって、そうなっています。H20年は67%で、実際は右肩上がりになっています。携帯トイレを導入したのも、糞尿による被害が多くなってきて、バイオトイレの導入も検討したのですが、予算もなく、とりあえず携帯トイレを配布して、いくらかでも未然に防ごうと無料配布したのが始まりです。バイオトイレも検討していく中で、結果的に携帯トイレが普及してしまった。利尻ルールも作った。「携帯トイレを使う」「ストックにキャップをする」「植物の上には踏み込まない」の3点を重点啓発項目としている
(岩村)
H20年に回収率が約7割と向上していますが、何か施策でもしたのですか
(住吉)
回収ボックスの周知徹底や宿泊宿の方にお願いして、登山者に周知していただいた結果かなと思います。
(岩村)
利尻山は年間1万人ぐらいの登山者ですが、同じような人数の登山者が訪れる知床は「知床登山マナー」を作って携帯トイレを推奨していますが、それについて愛甲さん簡単に説明をお願いします。
(愛甲)
知床については、ウトロの自然保護官の高橋さんが42ページにレポートを書いてくださっています。H20年度から羅臼岳で携帯トイレの使用を、斜里町、羅臼町、北海道、環境省、林野庁で役割分担を決めて呼びかけています。ここも利尻と似ている所があって、二つの町に跨って登山口が2箇所。硫黄山の方にも縦走するルートがあるのですが、実際下りても物理的に縦走できないようになっていまして、殆どの人が日帰り登山をしているので、ちょっと携帯トイレを呼びかけてみましょうかとなった。利尻と同じで本当はトイレを作りたいのだけど、信用できるトイレは無いよねと言うことで、とりあえず携帯トイレをやってみようとなりました。北大生の住川君が利尻と知床でアンケート調査したのですが、携帯トイレを推進していることを知っている登山者は、利尻は95%、知床は66%だった。また、自分で持ってきた人は、利尻73%、知床は38%だった。利尻は8年間も呼びかけているので、そう言うデータになったと思います。ただ、羅臼岳は両登山口に回収ボックスは設置したのですが、まだブースも無い状況でこれからどのような方向に行くか分かりませんけど、今年の調査結果を見ながら関係機関で検討していただいています。
(岩村)
当会では毎年9月第1週の日曜日に山のトイレデーを開催していますが、2006年に私が羅臼岳を担当した。羅臼平で使用済みティッシュを約80回収した。羅臼平の岩陰やハイマツの影にティッシュが散乱していた。その後、私はそこに行っていないのですが、推して知るべしの状況でないかと思います。美瑛富士でも2005年に17名で行って、その時はティッシュのほかに目につくウンコも回収してきた。その後も愛甲さんが毎年行って回収しているのですが、少しずつは減ってはいるのでしょうけど相変わらず散乱しているのが実態です。
(愛甲)
先ほどから美瑛富士と黒岳の話を聞いていて、私たちがこれからしなければならないことを話たいと思います。
利尻と羅臼はカウンターで毎年登山者数を把握していますが、大雪山ははっきりしたデータが無い。全く無い訳でなくて129ページに上川町の佐藤さんが毎年、森林管理署の入山届けから集計をしてくださっていているのがあります。ただ、これは登山口毎に取り方がバラバラで、有人のところも無人のところもあり、全く信用できない数である場合もある。黒岳もバイオトイレを作る前に、実際どれだけの人が黒岳のトイレを使っているかデータもあまり無かった。それで慌てて調査をして大体これぐらだろうとやってみたら、実は、前の汚いトイレは我慢していた人がいたらしく、新しくトイレを作ったら、利用者数がどんと増えてしまった。推計値自体も期間が限られていてデータも甘かったこともありますが、200人を大幅に上回った。幌尻山荘は小屋の宿泊者数は把握できていたのですが、予算の関係で、3基設置すべき所が1基になってしまった。また、土壌処理や乾燥させる条件を考えると現場の気象条件もかなり細かく調べておかないと、どんなトイレにするとよいか、どんな規模のトイレが必要か分からないことになる。
そう言う点からいくと山の上とか山の状況のデータは本当に貧困というか、哀れだなと思っている。日本で一番大きい国立公園、北海道が世界にも誇るような世界遺産に一度は話があったような国立公園で一体何人の人が登山をしているか正確に把握できていないし、野営指定地もありますが、美瑛富士も最近私が調査して資料にもデータがありますが、大雑把です。避難小屋に一体何人の人が泊まってそこの野営地で何人の人が泊まったのかも正確なデータが分からないので、どのくらいの規模のトイレを作ればいいのか、まだよく分からない。だから何か前に進めるには、誰がやるかという問題はあるにしろ、キチントそういうデータを取って検討できる材料だけは、揃えていかなければならないのかなと思いますし、その様な体制を行政の方でも考えていただきたいと思う。
(岩村)
最後に、山のトイレマナー袋を無償提供していただいている(株)ムッシュの鈴木さんから一言お願いします。
(ムッシュ:鈴木)
私の会社は登山トレッキングウェアのメーカーなのですが、2004年ぐらいから通信販売の売上の一部を何らかの形で山岳環境改善に役立てようと「M2c2プロジェクト」を発足しました。
それで最初は利尻に回収ボックスを寄贈させていただき、次に北海道の山のトイレを考える会と一緒に山のトイレマナー袋を製作、全国から要望がきまして無償配布しているところです。
2年ぶりにフォーラムに参加したのですけど、一昨年も美瑛富士避難小屋トイレ(案)が提示されたのですが、今回、いろいろなアイデアが出て、さらに進化しているなと。いいトイレが出来てしまえば出来てしまうほど、この深刻さが、みなさんには伝わりにくいのだろうなと。これだけ熱い議論がされていると言うのが、一般ツアーでは、いいトイレができた、快適だったで終わってしまう事が多いと思いますね。ですからこれだけ10年近くも議論続けて集大成のようなトイレが出来た場合、なぜこのトイレが必要だったか、どのような経緯で作られたかを伝える必要性があると思います。単純にチラシであったり、看板であったりでいいのかと言うのはあると思いますが、トイレと同時にそれをいかに伝えていくかが大事だと思います。
マナー袋を昨年1年間で1万5千セット作りまして、半数は山のトイレを考える会に寄贈させてもらっていますが、それと同数を私の会社から本州や九州などから要望があり、送付しています。私ども宣伝した訳でなく、多分、北海道からの発信でいろいろな口コミで広がっているのかと思っています。マナー袋を作るだけでなく、通信販売の会員さんや全国の小売店さんにチラシを配布して周知ができたらと考えています。
(岩村)
結論はでないフォーラムだったのですけど、一つ皆様にお願いしたいのは、今まで会では、山のトイレを使った時の紙の持ち帰りはあえて呼びかけてはいなかったのですけど、山のトイレの汲取り期間を延ばすことから、とにかく山に入ってトイレだろうが、どこだろうが、とにかく使った紙は持ち帰ることを呼びかけています。山のトイレは紙の量が膨大ですから、3年に1回の汲取りが5年に延びることもありえます。今日山岳会関係の人がたくさんいらっしゃっていますので、是非、会の方でも浸透させて欲しいと思っています。1日でも早く美瑛富士避難小屋にトイレが設置できること、また、私も含めさんざん山を楽しんでいますけど、北海道の山が、みなさんの子供とか孫のあとあとの世代まで楽しめる北海道の山であって欲しいと願っています。
7.閉会挨拶 副代表 上井博志
どうも長い間ありがとうございました。これだけ回を重ねて、いろいろやっていくと、年々、新たな問題点がでてきたり、新たな考え方、新たな技術がでてきて、進歩はしていくのですが、今日、私が一番ありがたかったのは、上川支庁の大道さんから黒岳バイオトイレ改良について数年後には期待してもよさそうな一言があったことです。山のトイレを考える会も20周年を迎える前に何とか解散できるのではないかと期待している次第です。
(記録:仲俣)
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